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数珠は小嶋証人の必須アイテム
1月17日に行われた衆院国土交通委員会の証人喚問で、耐震強度偽装問題の主役の1人である、ヒューザーの小嶋進社長はちょっと風変わりな「小道具」を手にして、証人席に座りました。
仏式の葬式で、祭壇の前で手を合わせるときに使う数珠です。証人喚問に数珠とは、何とも場違いな取り合わせだなと思いましたが、次の瞬間に、小嶋氏とこの小道具を持つように勧めた小嶋氏の背後にいる知恵者(物理的に背後にいる補佐人である弁護士ではないでしょう)の意図に気付きました。
証人喚問ほど、人間に極度の緊張を強いる場はないでしょう。証人はまず何らかの刑事罰の嫌疑をかけられています。国会という最も公的な場で、国会議員から質問攻めにされます。偽りの答弁をすれば、偽証罪に問われる可能性があります。
そして何より緊張を強いるのは、TVで生中継されることです。証人は答弁内容だけではなく、声の質や表情、立ち振る舞いや何気ない仕草まで、国民の目にさらされます。
かつて、ロッキード事件の証人喚問では、証人席で宣誓書に署名する際、ペンを持つ手が震えて(実際は体全体が震えていたのでしょう)、なかなか自分の名前を書けなかった、大会社の幹部がいました。
人間は、内面の変化や動揺を押し殺そうとしても、内面の変化や動揺が声の質や表情、立ち振る舞いや何気ない仕草に、無意識のうちに表れてしまうものです。
それでも、声の質や表情、対振る舞いといった大きな動きは、訓練によって意識的に内面の変化や動揺を意識的に抑え込むことができます。しかし、細かい動きである仕草、得に手や指の動きは、意識的に抑え込むことがより難しくなります。
耐震強度偽装問題で小嶋氏とともに主役の1人である、総研の内河健所長が昨年12月、衆院国土交通委員会で証人喚問されました。内河氏は、内面の変化や動揺を見透かされまいと、懸命に「演技」を続けていました。
質問に対して、いちいち大げさに首を振ってうなずいていました。答弁の際も、よどみなく大きな声で答えていました。相当程度、想定問答を重ねた上で証人喚問に臨んだのでしょう。
しかし、内河氏の「演技」は、ある瞬間に崩れてしまいました。民主党の馬渕澄夫議員が、総研のチーフコンサルタントである四ケ所猛氏が書いた、いわゆる「四ケ所メモ」を手にして、答弁の矛盾点を追及したときでした。
内河氏の内面の変化や動揺は、表情や声の変化など大きな動きは抑え込んでいましたが、小さな動きである指先の動きの変化として表れました。小刻みに椅子の肘当て部分をたたく指先の動きがはっきりと大きく変化しました。
この証人喚問もNHKが生中継していましたが、優秀なカメラマンとディレクターが、内河氏の内面の変化と動揺を的確に映像にとらえていました。内河氏の小さな変化を見ていた多くの国民は、内河氏が嘘を言っていると、この瞬間に確信したのではないでしょうか。
小嶋氏の小道具である数珠に話を戻します。小嶋氏は証人席でずっと数珠を手にしていました。握り締めているだけではなく、チベット仏教の僧侶が祈りの際に行うように、指先で数珠の玉のひとつひとつを送り込む動作を繰り返していました。
小嶋氏と小嶋氏の背後にいる知恵者は、小嶋氏が数珠を持つことによって、内面の変化や動揺を覆い隠そうとしたのです。
昨年12月の参考人招致の際、同席した参考人が自分の意に沿わない答弁をしたとき、その参考人をあからさまに恫喝するほど気性の激しい小嶋氏が、借りてきた猫のようにおとなしく証人席に座り続け、答弁拒否を繰り返すためには、あの数珠はなくてはならない必須アイテムだったのです。(2006年1月23日記)
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