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歩くスキーと「正しい歩き方」
ここ5、6年ほど「歩くスキー」を楽しんでいます。用具はノルディック・スキーとほとんど同じものですが、競技スポーツではありませんから、トリノ五輪の選手のように、極寒の中で汗水や鼻水をたらして走るものではありません。
雪の積もった高原の軽い起伏のある林の中や湿原の上を、時には氷結した湖の上を、ゆったりとスキーを滑らせながら歩き回るものです。
今シーズンは、それまでスキーとは縁のなかった初心者数人と同行する機会がありました。若いころにエッジのあるアルペン・スキーをした人もいました。歩くスキーには、スキー自体を軽くするためにエッジはついていません。
そんな人たちと同行して、ある「発見」をしました。筋肉隆々の体力に自信のあるスポーツ経験者は、意外なことに、歩くスキーにはすぐにはなじめないようです。逆に、体力に自信のない、それほどスポーツ好きではない人の方が、このスキーにすぐになじんでしまいました。
もっともなじめなかったのは陸上競技で実業団に所属していた、元国体選手の中年の女性でした。この人はいまでも毎週のように山に登り、暇があればアスレチックジムに通っています。若いころは、エッジのあるアルペン・スキーをしたことがあると言っていました。
この人は平坦な雪の上で、スキーを履いて立つことができませんでした。歩くスキーにはエッジがありませんから、バランスを取ろうとして足裏のどこかに重心をかけすぎると、逆にバランスを崩してしまいます。
この人は3、4時間の行程のうちに、百回以上は転んでいまいた。しかし、さぐがにスポーツ・ウーマンでした。何度転んでも投げ出したりはしませんでした。懲りずに2度目に同行した際は、転ぶ回数は一桁減っていました。それでも、エッジのない、つまりひっかかりの取れないスキーの上に立つこと自体が、相当に神経を使う行為であるようでした。
この人は極めて姿勢のいい人です。歩き方にも一家言をもつ人です。この人の立ち方、歩き方の基本はこうです。背筋を伸ばし、あごを引いて、膝を伸ばして立ち、大またでつま先から着地してかかとでけり出して、両手を大きく振って歩く、というものです。
ウオーキングの専門家たちが始動する「正しい姿勢」「正しい立ち方」「正しい歩き方」を実践しているような人です。
この人の立ち方、歩き方が、歩くスキーの上で立ち、歩くという動作には合わなかったのでしょう。
逆に、体力に自信のない、スポーツ経験もない、転んでばかりいた人とは逆に「姿勢の良くない」若い女性は、ほとんど転ぶこともなく3、4時間の雪の上での行程を楽しんでいました。
ウーキングの専門家たちが提唱する「正しい姿勢」「正しい立ち方」「正しい歩き方」は、エッジのない、つまり足裏にとつかかりがない歩くスキーの上では通用しないのだと思いました。(2006年03月21日)
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