成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 アレン・アイバーソンに再会した日

 彼の足さばきを見ているだけで、ため息が出てくる。人間は、これだけ変幻自在のステップを踏んだり、自ら前進する強烈な加速度を瞬時に静止状態に持ち込んだり、あるいは空足を踏むようにして相手をすり抜けたりすることができるものだろうか。

 彼が「のった」状態でプレーするときは、誰一人として彼を止められない。ファウルしようとしても、彼はその時すでに、相手をすり抜けている。そんな時の彼と戦うということは、「空気」を相手に戦うようなものである。

 彼は、アレン・アイバーソン。バスケットボールのファンなら、誰でも知っている、NBAのスーパースターである。エイズにおかされたマジック・ジョンソン、「エアー」と賞賛されたマイケル・ジョーダンが引退した時代に、コービー・ブライアントとともに現れたNBAの新星だった。

 その当時(いまもそうなのだが)、2メートルを超える大男たちが派手なダンクシュートを決める。そんなシーンがNBAの売りものだった。そんな時代に、170センチ程度しかないアイバーソンが、大男たちの間をすり抜けてレイアップシュートを連発する。彼の登場は、NBAにおけるひとつの「革命」でもあった。

 先ごろ、実に久しぶりに、アイバーソンのプレーを見る機会があった。NHK・BSの録画中継だった。長く在籍していたフィラデルフィア・セブンティーシクサーズからデンバー・ナゲッツに移籍したアイバーソンの対戦相手はダラス・マーベリックスだった。ゲームは敵地のダラスで開催された。

 そのゲームは、アイバーソンの一人舞台になった。シュートは思うように決まる。ノールックのパスは当たり前。崩れ落ちる寸前の体勢から、いや崩れ落ちる寸前と思わせる体勢からシュートとパスを繰り出す。

 相手選手は彼に触ることさえ出来ない。NBAの終盤では、圧倒的に強烈な相手選手は意図的なファウルでとめる事が常套手段だが、このゲームでは、相手選手はアイバーソンに意図的ファウルさえできなのである。相手選手だけではない。彼の僚友であるNBAのスター、カーメロ・アンソニーも、このゲームでは「脇役」「引き立て役」を担わされていた。

 首筋にある漢字の「忠」の刺青は若いころと同じである。しかし、彼の表情は、革命的な登場をした時代とは大きく変わっていた。相手を刺し殺すような表情ではなく、穏やか表情をいている。

 精悍な顔立ちは変わらないが、少しだけ顔に肉がついている。肉付きのよさは顔だけではない。上半身の筋肉は大きくなっていた。しかし、変わらないものがある。下半身である。しなやかで柔らかでしかも強靭な下半身は昔のままである。

 NBAでアイバーソンを見る機会があれば、彼の上半身の華麗な変化ではなく、それを支える彼の下半身の動きを注意深く見るべきである。アイバーソンの足さばきこそ必見である。(2007年12月12日記)

 ライアン・ギグスに再会した日

 あの、突貫小僧のようだった、ライアン・ギグスがテクニシャンに変身していたとは、とても信じられなかった。

 筆者がギグスを「発見」したのは、フランス人のエリック・カントナがイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(M・U)の、文字通りの王様として君臨していたころだから、もう7、8年ほど年前のことである。

 当時のギグスは、「ようだ」ではなく、まさに突貫小僧そのものだった。こんなプレーが強く印象に残っている。中盤のサイドでカントナが相手選手2、3人を引き連れて、ボールをコントロールしている。圧倒的な体幹の強さと信じられないような繊細なテクニックで、高速クロスを反対サイドのスペースに放り込む。

 誰もいないはずのスペースに、とてつもなく反応が速く、かつ足の速い選手が飛び込んでくる。カントナの放ったクロスを1トラップか、ダイレクトでゴールに蹴り込む。時にはダイブしたままヘッドでゴールに突き刺す。そんな選手が、若き日のギグスだった。

 NHKがBSで今秋からプレミアリーグのゲームを再び放送し始めた。ある日、M・U対フラムのゲームを見ていていると、FWのウェイン・ルーニー、カルロス・テベスの後ろに、クリスティアーノ・ロナウドとの並びで、どこか見覚えのある選手がプレーしていた。

 それが、あのギグスだった。頭髪はだいぶ後退していて、子どもっぽい顔立ちは骨っぽい頑強な風貌に変わっていた。しかし、その選手は、あの突貫小僧そのものだったギグスに違いなかった。

 年を経たギグスがM・Uの中盤をコントロールしている。いま最も旬な選手であるルーニーやC・ロナウドを操っている。長く付き合いの途絶えていた旧友に再会したような気分になった。

 ギグスはそのキャリアにおいて、本人とはまったく関係ない事情によって、「不幸」な選手である。若き時代に、あのカントナのパートナーとしてM・Uでプレーした選手で、しかも現在でも、M・Uの中心選手として、ルーニーやC・ロナウドを操っている選手が、何故に不幸なのか。

 ギグスの、クラブ所属選手としてのキャリアには、何ひとつといって不幸はない。彼の不幸は、これだけのキャリアの選手としてW杯に縁がないということである。彼は英国人ではあるが、イングランド人ではない。彼はウエールズなのである。

 彼の出身がイングランドならば、イングランド代表の中心選手として、何度もW杯に出場していたことだろう。しかし、英国の中でも「弱小地域」のウエールズ代表では、W杯出場の機会は巡ってこない。

 それでも、ギグスにはイングランドに「帰化」する考えなど毛頭ないだろう。イングランドでプレーするウエールズ人の誇り、いやもっと言えば、「ケルトの誇り」が、ギグスを強く支えているに違いない。(2007年12月11日記)

 興毅会見、TBSが生中継できるはずがない―新聞寸評

 スポーツ新聞は、こんな「ヨタ記事」を臆面もなく書いて載せるから、低俗だとか軽薄だとか、世間から馬鹿にされるのである。

 下記の、日刊スポーツの記事は、亀田興毅選手の謝罪会見(10月26日)を、TBSが「生中継できなかった」、「謝罪会見は(他局に)遅れを取ったことになる」と書いているが、とんだお門違いである。

 亀田親子のTV向けの過激なパフォーマンスをそそのかしてきた、少なくとも容認してきたTBSが、興毅の謝罪会見を生中継できるはずがなかったからである。

 □TBS、興毅会見を生中継できず(見出し)

 プロボクシング亀田兄弟の試合を独占中継してきたTBSは26日、長男興毅(20)が開いた謝罪会見を生中継できなかった。会見は午前9時に都内の協栄ジムで始まった。その時間にワイドショーを放送する日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日は冒頭から生中継。しかし、TBSは同時間は生活情報番組「はなまるマーケット」を放送。会見はニュースコーナーで数分取り上げただけだった。

 番組編成上の都合とはいえ、亀田兄弟が大阪に拠点を置いていた当時から追い続け、独占放送してきた同局が、謝罪会見は後れを取ったことになる。これまでの関係を考えれば、同局が情報番組を放送する午前11時以降に会見を開くよう依頼することもできたはず。しかし、同局関係者は「会見は協栄ジムと亀田家の話し合いで行われたもので、TBSは口を挟む立場にない。それに、周囲から言われるほど結び付きが強いわけでもない」と説明した。

 二男大毅(18)が反則を連発した内藤大助(33)との世界タイトル戦など同局の「亀田びいき」の放送内容は批判を浴びている。以後、反則問題も積極的に報じているが、独占中継の継続も含めて亀田家との距離の取り方には慎重になっている。(日刊スポーツ)

 ■TBSが恐れていた質問

 TBSが恐れていた質問は、会見(一問一答)の中ごろに出てきた。以下は、産経新聞に載った一問一答形式の記事の一部である。

  ――過激なパフォーマンスは自分で? テレビ局の演出が関係していたのか

 興毅「正直、テレビ局とかはまったく関係ないです。自分らの意見で『こうしたら盛り上がるかな』とオレらなりに頑張ってきたつもりです」(産経)

 亀田親子の過激なパフォーマンスには、テレビ局(TBS)の関与があったのでは、という質問である。

 興毅選手がこの質問に、「関係ない」と関与を否定したことで、TBS関係者はホッと胸をなでおろしたはずである。

 この日の会見は、いつもの会見とは違って、TBSの制御下で行われたものではない。TBSにとっては、弟の大毅選手の世界戦以降、亀田親子へのコントロールは機能しなくなっていた。

 そんな状況下で行われた会見を、TBSが生中継などできるはずがない。

 仮に、亀田親子をさんざんもちあげていた、みのもんたの「朝ズバッ!」の中で生中継したとする。みのの顔が小さく映る画面の中で、興毅選手が『TBSの演出に乗った。みのさんからもアドバイスを受けた』などと答えたとする。みのだけでなくTBS全社がパニック状態に陥ったに違いない。

 亀田親子のパフォーマンスが、TBSの関与、あるいは容認なしに繰り返されていたと考える人は、ほとんどいないだろう。そんな状況下で興毅選手の会見を生中継する「蛮勇」など、TBSがもちえるはずはなかったのである。(2007年10月30日記)

 独創的すぎるプレーは評価されない

 野球では、こんなプレーはよくあることである。

 一塁走者が盗塁を試みる。投手はそれを察知してクイックで速球を投げる。捕手は素早い動作で二塁ベース上に絶好球を送球する。ベースカバーに入った遊撃手は、ベース上で腰を落として捕球する。あとは、ベースに突っ込んでくる、思惑がはずれた走者の足か手にタッチするだけである。

 そんな場面で、盗塁を試みた走者はどうするか。タッチアウトを覚悟してベースに強行突入するか、ほんのわずかの可能性を期待して、ベースの左右どちらかに回りこむ。ほとんどすべての野球選手にとっては、その2つしか選択の余地はない。

 ところがである。こんな絶体絶命の場面で、そのどちらでもないプレーを選択した選手がいる。その選手は二塁ベース直前で急ブレーキをかけ、タッチに来る遊撃手のグラブが足に触れる寸前で急停止する。そのまま、倒れこむことなく外野方向に体を回転させ、センター方向から足でベースを踏み込む。

 しかし、二塁の塁審はこのプレーを評価しない。塁審は迷うことなくアウトを宣告する。自らのプレーを評価されなかった選手は猛然と抗議する。その側で、タッチをはずされたはずの遊撃手は、涼しい顔をしている。

 このプレーにはもうひとつの要素がある。遊撃手の動きである。捕球したグラブでタッチに入った遊撃手は、タッチの瞬間にグラブを高々と跳ね上げ、アウトをアピールいている。遊撃手はタッチの動作を流していない。タッチに入り、走者の足にグラブが当たる瞬間(実際は走者が急ストップしたため当たっていない)、グラブを跳ね返している。
 
 遊撃手としては、タッチが成立していれば、当然の動作である。しかし、この場面では、タッチは成立いていない。それでも、遊撃手はタッチが成立したとして、グラブを高々と掲げて、タッチアウトを塁審に強烈にアピールする。

 盗塁を試みた走者が二塁ベース直前で急ストップするなど、野球の常識では考えられない。しかし、この走者はタッチアウトを予測して二塁寸前でスピードを緩めて、タッチに入るグラブを避けて回り込むことを選択した。タッチに入った遊撃手の予測ははずれた。突っ込んでくるはずの走者が突っ込んでこない。しかし、変則的な意味での追いタッチはしない。空タッチでも、タッチしたとアピールする。この遊撃手は相当に役者である。

 筆者が模写した場面は、時間にすれば100分の数秒の世界である。なおかつ、筆者にこんな模写ができたのは、高性能のTV・スロー再生を見たからである。

 この場面は、9月5日(日本時間では6日)にヤンキースタジアムで行われた、ヤンキース対マリナーズ戦の3回表のプレーだった。盗塁を試みた選手はイチロー、遊撃手はデレク・ジーター、捕手はホセ・モリーナだった。凡庸な塁審の名前は知らない。

 イチローの独創的すぎるプレーが、審判の常識によって覆されることはよくあることである。以前、三塁走者だったイチローが本塁に突っ込む場面があった。既に捕球を完了した捕手はベース前で腰を低くして身構える。この場面でも、他の選手なら玉砕覚悟で捕手に体当たりするか、ベースの左右に回りこむしか選択できない。

 しかし、イチローの選択は違っていた。捕手の頭上に跳び上がったのである。予測のはずれた捕手は、イチローのプレーに対応できない。しかし、主審の判定はアウトであった。この場面でも、イチローの独創的すぎるプレーは、審判によって評価されることはなかった。(2007年10月2日記)

 土日は『休業』の巨人戦日程

 いったい誰がこんな馬鹿げた日程を組んだんだ。馬鹿げた日程とは、プロ野球セ・リーグの日程である。リーグ戦最終盤の土日に当たる9月29、30日である。29日は、優勝争いを展開する巨人、中日とも試合がなかった。30日は、中日の試合はあったものの、巨人の試合は組み込まれていなかった。

 プロ野球は興行である。試合にお客さんを呼んで『ナンボ』の世界である。リーグ戦最終版の土日、優勝争いをする球団の試合は、最も注目され、最もお客さんを呼べる試合である。TV生中継などメディアへの露出も大いに期待できる。しかし、肝心の試合がない。こんな馬鹿げた日程を組むプロスポーツは、世界中を探しても日本のプロ野球くらいだろう。

 試合日程を組み込まなかった30日、巨人は東京ドームで紅白戦を含む実践練習をしたと、スポーツ紙は伝えている。何とも贅沢な紅白戦である。東京ドームの使用料金がどれくらいかは知らないが、相当に高額だろう。試合を組み込めば、優勝争いをしている球団の試合である。いくら巨人人気が落ち目とはいっても、東京ドームをほぼ満席にするくらいのお客さんは入っただろう。まったくもって、興行の常識とはかけ離れた試合日程である。

 7月のプロ野球オーナー会議では、オーナーたちからこんな意見が出た。『NHKはMLBばかり放送している。もっとプロ野球を放送べきだ』―云々というものである。プロ野球のオーナーたちは、NHKに文句を言う前に、リーグ戦最終盤の土日に、優勝争いをする球団の試合が組まれていないという事実を、きちんと受け止めるべきである。

 巨人の試合がなかった9月30日は、スポーツ界にとって、『特異日』であった。年に1回、日本で開催される自動車レースの最高峰・F1は、日本GPが冨士スピードウエイで開催され、雨中のレースで新人のルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)が4勝目を挙げ、年間王者に大手をかけた。
 
 日本のゴルフでは、日本女子オープンで21歳の諸見里しのぶが初優勝を飾った。男子ゴルフでは『はにかみ王子』こと石川遼が出場した東海クラシックの最終日でもあった。海外では、ベルリンマラソンでハイレ・ゲブレセラシエ(エチオピア)が2時間4分26秒をマークし、世界記録を更新した。

 こうした特異日に、プロ野球のセ・リーグは、優勝争いを展開する球団の試合を組み込まない。まるで、スポーツ界のビックイベントを避けたかのようである。プロ野球の日程は、いったい誰がどんな根拠をもとに組み込むのだろう。(2007年10月1日記)

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