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WBC日本代表人気を読み違えた日本テレビ
3月5日に開幕するWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)東京ラウンド(第1ラウンド)を前に、WBC日本代表人気が、おおいに盛り上がっています。先日まで行われた宮崎合宿には、それこそ北海道から沖縄まで、日本全国の野球ファンが集まりました。読売巨人軍との練習試合では、球場は超満員になり、周辺は入場できなかった多くのファンであふれました。
イチロー、松坂大輔、ダルビッシュ有といった、プロ野球とMLBで活躍する日本人スター選手が集まり、MLBのスター選手がそろう米国やドミニカなどの強豪国と世界一を争う大会を前にした合宿と練習試合という状況設定ですから、これが盛り上がらないはずはありません。
しかし、WBC日本代表人気を予測出来なかった組織があります。日本テレビです。兄弟会社ともいえる読売新聞社が東京ラウンドを主催するにもかかわらず、日本テレビはWBCの放映権を取得しませんでした。東京ラウンドの放映権を得たのはテレビ朝日です。米国で行われる第2ラウンド、準決勝、決勝の放映権はTBSが取得しました。
宮崎合宿と巨人軍との練習試合での盛り上がりから見ても、WBC、なかでで日本時間のゴールデンタイムに放送できる東京ラウンドは、相当高い視聴率が期待できます。
サッカー日本代表が以前ほどの視聴率を稼げなくなったいまでは、WBCは、スポーツ・イベントとしては最高のキラーコンテンツとなるでしょう。
日本テレビは何故、WBC、なかでも東京ラウンドの放映権を取得しなかったのでしょうか。彼らが大いなる読み違いをしていたからでしょう。
日本テレビには、戦後半世紀にもわたって続けてきた、巨大な成功体験があります。読売新聞と日本テレビは、二人三脚でこの成功体験を共有してきました。読売巨人軍人気によって、読売新聞は部数と広告を増やし、日本テレビは、巨人軍主催ゲームを独占的に放送することによって、視聴率と広告を伸ばしてきました。
両者の成功体験は、プロ野球再編(球団数削減)問題と、それに反発する選手会のストライキという事態が起きるまで続いてきました。プロ野球を構成するセ・パ12球団は、巨人軍人気に依存して存続している。巨人軍に「おんぶにだっこ」される状態で、他の11球団は存続している。
そうした成功体験、いわば「神話」のようなものが、プロ野球再編問題と選手会のストライキによって、崩壊したのです。この問題の起きた後、巨人軍の試合は、巨人軍の主催であろうとなかろうと、視聴率を稼げなくなってきました。
長年の成功体験から、日本テレビはこう考えたのでしょう。視聴率が稼げなくなったのは、巨人軍人気が落ちてきたこともあるが、プロ野球人気自体が凋落してきたのだと。そうした判断から、日本テレビは巨人戦の中継を減らし続けてきました。そして、今年は巨人戦の生中継を大幅に削減するという、大なたをふるいました。
しかし、彼らの判断は間違っています。以前のプロ野球人気は、イコール巨人人気でした。巨人あってのプロ野球でした。しかし、いまはそうではありません。
九州エリアでは福岡ではソフトバンク・ホークスが、阪神エリアでは阪神タイガースが、名古屋エリアでは中日ドラゴンズが、仙台を中心にした東北エリアでは東北楽天イーグルスが大きな人気をもっています。北海道エリアでは日本ハムファイターズが圧倒的な人気を誇っています。巨人軍も東京エリアでの人気は健在です。全国放送の視聴率は稼げなくなってきまたが、東京ドームに閑古鳥が鳴いているわけではないのです。
野球人気が大きく落ち込んだということではないのです。それぞれのエリアをフランチャイズする球団は、それぞれのエリアで人気を確保しています。巨人軍にしても、かつての圧倒的な「全国区人気」の復帰はないでしょうが、圧倒的な人口、経済規模を誇る東京・首都圏エリアではなお健在といえるでしょう。
こうした動きは、プロ野球にとって、むしろ健全な方向だと言えるでしょう。しかし、日本テレビは、こうしたまっとうな変化を読み間違えてしまいました。
かつての巨人軍人気は、どう考えても異常でした。プロ野球シーズンの全期間において、巨人軍の試合だけが全試合、生中継される。そんな時代が半世紀も続いてきたこと自体が異常なのです。
いまは、そうした国民的な「つきもの」がようやく落ちた時代なのです。日本テレビの大きな読み違いは、そうした状況をのみこめない、かつての成功体験にどっぷりつかった組織が犯した、象徴的な判断ミスと言えるでしょう。(2009年2月25日記)
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