成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 ■正力松太郎までさかのぼらないと  数太

週刊文春の記事に加えて、長島氏の突然の登場に世の中沸いていますが、 本当の筋を抑えていないのではないでしょうか。 きっと。別の方向に流れてしまうでしょう。

行き着くことろ、正力松太郎までさかのぼらないと日本のプロ野球の裏はつかめないと思います。 そして、読売新聞の歴史を紐解く必要が あろうかと思います。

なぜ、内務官僚だった正力が民間にくだり、さらに読売に入り それとともに職業野球をはじめたのか。そのときから亡くなるまで、政財界にどのようにして網の目を張ったのか。 この辺から紐解かなければ、問題の根本がわからないままなし崩しになり、日本の野球界は衰退の一途をたどると思われます。

行き着くところ、日本の今置かれている状況そのものです。 メディアでは、楽天、ライブドアの動きが注目されていますが 本当の問題の解決が行われるかを見ておきましょう。

 ■パ・リーグ無視のNHK  南 茂樹

一連のプロ野球への苦言、ごもっとです。ただ、ひとつだけ言わせて下さい。NHKの姿勢です。「皆様のNHK」「視聴率にとらわれない番組づくり」と言いながら、長年、パ・リーグ中継を殆どして来なかったのは何故でしょう。首位と2位の攻防戦だけでも、通年で放送すべきだったのではないでしょうか。しなかった事を記憶に留めておくべきではないしょうか。BSで我々日本人が、大リーグの魅力を発見したのは事実です。じゃあ、BSでパ・リーグ中継をやっても良かったのではないでしょうか。時間がかぶる訳ではなし。パ・リーグに魅力が無い訳ではなし。ここらが釈然としません。

 ■連続最下位球団のオーナーに能力と気力は?  村上 彰夫

勝つ気のないチーム作りをして、連続ぶっちぎりの最下位を独走する、そんな球団のオーナーに他球団を吸収合併する能力と気力があるのでしょうか。今回の合併の経緯は分らないことだらけですが、球界関係者が本気で将来像を描けていないことだけは事実としか考えられません。オリックスが優勝争いに加われるようなチーム作りをしていれば、パリーグだって、人を呼べるような試合が増えているはずです。

巨人のような意図の見えないチーム作りは、野球を知らない昔からの巨人ファンにはアッピール出来ても、大事にしなければいけない本当の野球好きにはそっぽを向かれるわけですから、巨人戦だけを生甲斐にしようとしても、最早そんなよき時代は過去のものかも知れません。日本のマスコミはどうして世論をリードするようなべき論を語れないのでしょうか。

前回のコラム(4)「『長嶋ジャパン』五輪出場資格は?」では、全日本アマチュア野球連盟(以下全アマ連盟)をアマ野球側の統括団体として扱ったが、実態は違う。しかし、JOCが全アマ連盟をアマ野球側の統括団体として承認し、加盟団体としている上で、五輪への代表派遣を認めている事実、そして統括団体として扱わなければ、話があまりにもややこしくなり、読者の理解を得られにくいことから、そうした。

 全アマ連盟は、実のところアマ野球側の統括団体ではない。JOCの加盟団体審査基準を満たしていない。全アマ連盟はJOCの正加盟団体だが、正加盟団体になる要件(1)法人格を取得している(2)国内唯一の統括団体である(3)IOC(国際オリンピック委員会)承認の国際競技連盟に加盟し、当該スポーツが五輪憲章に記載されているスポーツである―の3項目のうち、(1)(2)の項目について要件を満たしていない。

 朝日新聞社刊「知恵蔵2004」の野球の項目の中で、スポーツライターの武田薫氏は全アマ連盟についてこう説明している。

「日本のアマチュア野球界はこれまで、学生野球と社会人野球の足並みが揃っていなかった。(略)ところが、社会人野球界が標ぼうした国際化が時流に乗り、オリンピックの正式種目化へと進展して状況が変化。組織を一本化し日本オリンピック委員会(JOC)に加盟申請するために、屋上屋を架したのが1990年6月に発足した全日本アマチュア野球連盟。法人格はなく、実質的には日本野球連盟と日本学生野球協会が構成する組織で、事務所は社会人の事務局が兼ねている。(以下略)」

 社会人野球を統括する日本野球連盟とともに全アマ連盟を組織する日本学生野球協会は、「全アマチュア連盟設立の経過」と題する文書の中でこう書いている。「全日本アマチュア野球連盟の性格は、規約第2条に日本学生野球協会及び日本野球連盟の運営に関してその自主性を尊重し、指導、監督的立場にないと明記されています。」

 全アマ連盟は、五輪出場のために学生、社会人野球界が「屋上屋」を架した、独自の事務局ももたず、ほとんど実態のない組織で、「法人格」もない。さらに学生、社会人野球界の「指導、監督的立場にない」組織である。法人格もなく、統括団体でもない、明らかにJOCの加盟団体の審査基準を満たしていない組織が、何故、JOCの正加盟団体として承認されているのか。

 そうした疑問に対する答えはたった1つしかない。野球が長い期間にわたって日本のスポーツ界における特別な存在、つまり「特権階級」であったからである。圧倒的な国民的人気を誇ってきた野球界は陸上、水泳、サッカーなど「その他大勢の競技」とは別格の存在だから、他の競技に合わせる必要はないと考え、本来なら野球界を指導、監督すべきJOCなど上部団体も、その他の競技界も、野球界の「特権」を黙認してきたからである。

 野球界の立場は、冷戦後に唯一の超大国になった米国に似ている。ソ連崩壊後は米国の一人勝ちの世界になった。米国の強大な軍事力、経済力、科学技術力、ハリウッドなどの文化力が米国以外の世界を圧倒した。そして「9・11」以降、米国は国際法や国連決議などのルールではなく、米国だけのルールで行動し始めた。それが「先制攻撃論」であり、その結果がイラク戦争である。

 そうした米国の考え、行動を米国民が支持し、他国政府のほとんどが支持せざるを得なくなった。米国民の多数は、世界を「上位にある米国」と「下位にある米国以外の世界」に区別しているようだ。野球界もこれと似た考えをもち、行動していた。日本のスポーツ界には野球に対抗すべき「反抗勢力」は存在しなかった。

 日本のスポーツ界において、野球がいかに別格で特別な存在であるかは、高校スポーツを例に取ればよく分かる。高校スポーツは、野球以外のすべての競技については、高体連(全国高等学校体育連盟)が統括している。しかし、野球(硬式)だけは高野連(全国高等学校野球連盟)が統括団体である。

高体連と高野連はまったくの別組織で、上下関係もない。高校スポーツは8月(夏休み)にピークを迎える。高体連は野球以外のすべての競技を開催する総合大会「インターハイ」を開催する。ほぼ同じ時期に高野連は阪神甲子園球場で「全国高校野球選手権大会」(夏の甲子園大会)を開く。

 インターハイと「夏の甲子園大会」とどちらの比重、つまり国民的な関心と人気が高いかは明らかである。甲子園大会はNHKが全試合を生中継する。関西地域では民放TV局も放送する。全国紙、地方紙とも本大会ばかりでなく各都道府県の地方大会から大きく紙面を割いて扱う。

 一方のインターハイは、NHKが開会式と主要競技の優勝戦などを放送するだけである。しかも開会式以外は教育テレビで放送される。新聞では、全国紙の扱いは小さく、地方紙が地元の選手、チームを取り上げるだけである。高校野球は他のすべての競技を合わせたものより関心度、注目度、人気度ともにはるかに大きい。それが高校スポーツの実態である。

 しかし、現実は動き出している。都市対抗大会を頂点とする社会人野球にはかつて隆盛はなくなった。社会の構造変化と企業を取り巻く環境の変化から、社会人野球チームは減り続けている。大学野球も以前ほどの人気はなくなってきた。社会人野球チームが減少すれば、大学生の行き場も狭まる。唯一、いまでも隆盛を誇る高校野球も、社会人チームの減少傾向により、大学生と同じ立場になる。プロ野球にしても、今回の球界再編騒動では、選手会とそれを後押しする世論の圧力によって、球界の「縮小計画」は土壇場でいったん阻止されただけである。

 国内スポーツも野球だけが人気スポーツという時代は過ぎた。サッカー・Jリーグは日韓共催W杯開催を踏み台に、W杯・五輪代表人気との相乗効果で注目度が高まってきた。それ以上に、国際競技の環境が変化してきた。イチローや松井秀喜の活躍によりメジャーリーグベースボールがより身近なものになってきた。中田英寿らがプレーする欧州サッカーリーグへの関心も高まってきた。

 さらに、主要な国際スポーツ大会は毎年開催される時代になった。偶数年には2年ごとに夏季五輪、W杯サッカーと冬季五輪が開催される。その間の奇数年にも2年ごとに陸上、水泳、体操など競技ごとの世界選手権が開催される。

 もはや、野球だけが特別な存在、「特権階級」ではなくなった。そのことをプロ・アマも含めた野球界は認識すべきであり、JOCなど上部団体や他の競技団体も野球だけを特別視すべきではない。しかし、彼らはそうしたまっとうなことを考え、それを行動に移すことができるだろうか。(2004年9月30日記)

 アテネ五輪に出場した団体競技の日本代表で、野球ほど人気と関心が高かったものはない。全員プロ選手で編成した五輪代表チームは、野球では初めてだった。プロの出場が認められたシドニー五輪では、代表チームはアマ(社会人、大学生)とプロの混成チームだった。

 長嶋茂雄監督は五輪前に病気で倒れたが、監督交代はなく、代表チームは長嶋監督不在の「長嶋ジャパン」として本番に臨んだ。目標の金メダルには届かず、銅メダルに終わったが、TVは全試合を生中継し、新聞も連日のように大きく紙面を割いた。

 ところで、長嶋ジャパンこと、野球の日本代表チームは、五輪出場資格があったのだろうか。メディアはそんな疑問には一言も答えてはくれない。「アプリオリ」的に出場資格はあるという前提で報道していた。

 はたしてそうだろうか。所属する競技団体の分裂のため五輪出場が危ぶまれ、最終的にはJOC(日本オリンピック委員会)の「超法規的措置」によって出場を認められた、テコンドーの岡本依子選手(シドニー五輪銅メダリスト)のケースを振り返ってみると、どうしても先の疑問が頭の中をよぎってしまう。

 五輪出場までの手順は、簡単にいえばこうである。JOC加盟の競技団体がある。各団体に所属する選手(チーム)が予選を勝ち抜いた場合、あるいは標準記録を突破した場合、各団体はJOCにエントリーを申請する。JOCはこれを受けて出場を承認する。

 JOCは、加盟団体はその競技における国内唯一の統括団体であることを条件にしている。ある競技で複数の競技団体を認めてしまえば、複数の団体からそれぞれ違った出場エントリーが申請され、選考が混乱してしまうからである。

 岡本選手は予選を突破したが、競技団体が分裂したままだったため、JOCは、競技団体が分裂騒動を解消し、国内唯一の統括団体に統一しなければ、岡本選手を五輪には派遣できないとの方針だった。しかし、JOCはその後、所轄大臣である文部科学相らの圧力を受けて方針を転換した。

 五輪憲章の細則にある、国内に競技団体が存在しない場合は「個人参加」を認めるという例外規定を適用して、岡本選手の派遣を認めた。競技団体の分裂状態を競技団体が存在しないと無理やり解釈した訳である。JOCは五輪派遣の大原則を曲げたことになる。

 分裂どころか国内唯一の統括団体が存在しない場合はどうなるのか。通常ならばJOCに加盟できないし、五輪の出場権も得られない。しかし、野球には国内唯一の統括団体は存在しない。アマ側は全日本アマチュア野球連盟(社会人野球を統括する日本野球連盟と学生野球を統括する日本学生野球協会で組織、以下全アマ連盟)があり、全アマ連盟がJOCの加盟団体になっている。しかし、プロ側の日本野球機構は全アマ連盟とはまったく関係をもたないし、JOCの加盟団体でもない。

 アテネ五輪に出場した長嶋ジャパンは、アマ側だけの統括団体である全アマ連盟を「身元引受人」にして、JOCとはまったく関係のない日本野球機構に所属するプロ選手で編成された、極めて特異な日本代表チームである。しかし、岡本選手の派遣には大原則を適用しようとしたJOCだが、プロ選手で編成された野球代表には何の異論もはさまなかった。

 それどころか長嶋氏をJOCの「エグゼクティブアドバイザー」に就けるなど、積極的に野球の代表チームを後押しした。主要メディアも同じ立場である。野球だけは、特異な日本代表が何の疑問ももたれずにアテネに出場した。

 野球はロス五輪(1984年)から公開競技になり、バルセロナ五輪(1992年)で正式競技に採用された。そしてシドニー五輪(2000年)からプロの出場が認められた。五輪の野球ははアトランタ五輪(1996年)までは、アマだけが出場していた。だから、アトランタ五輪までは、アマ側だけの統括団体でも問題はなかった。全アマ連盟自体が、五輪公式競技に採用される際、五輪参加のため統括団体が必要になり、社会人、学生野球団体が結成した組織である。

 アマ・プロの混成チームを派遣したシドニー五輪からは、野球界は本来ならばアマ・プロ合同の統括団体を設立し、その団体がJOCに加盟する必要があった。しかし、野球界からはそうした動きはなかった。JOCも参加要件を満たすよう、野球界働きかけることはなかった。
 
 なぜ野球だけがこうも特別扱いされるのか。それは、野球だけは、日本のスポーツ界において、何ごとにおいても特別扱いされるのが当然の「特権階級」だったからである。

 【注】全アマ連盟は厳密に言えば、アマ野球界の統括団体とは言い切れない組織です。JOCの加盟団体の要件を満たした団体とも言い切れません。しかし、JOCが全アマ連盟を統括団体と認めた上で、野球の日本代表を五輪に派遣している事実から、今回のコラムでは全アマ連盟を統括団体として扱いました。その辺の事情についても、次回のコラムで書き込むことにします。(2004年9月28日記)

 プロ野球は国内に限定された「鎖国スポーツ」である。W杯や五輪に出場して、そこで勝つことを最高の目標とする他の競技とは違って、プロ野球は国際大会を目標に掲げたことはない。

 プロ野球の「憲法」である野球協約は、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)優勝チームとの「世界一決定戦」実現をうたっているが、絵空事にすぎない。目標実現のために理論武装も外交努力も、何もしていないからである。

 2、3年に1度程度、MLB選抜チームやMLBの単独チームが来日し、プロ野球選抜チームや単独チームと試合をするが、あれは真剣勝負の場ではない。親善試合、エキシビションの類のものである。

 球界再編、1リーグ化をめぐって、オーナー会議などで韓国、台湾との東アジア優勝決定シリーズや東アジアリーグ構想が浮上した。しかし、これも1リーグ化に伴うマイナス面を補うための「方便」である。オーナー会議の中でこれまでそんな構想が論議されたことはない。韓国や台湾のリーグ側と構想を話し合ったこともない。

 今年、MLB側から提案された野球のW杯開催についても、まともに取り合ってはいない。プロ野球は国際競技としての野球には関心がない。国際競技化することによる市場拡大にも興味がない。

 野球の国際化に関心のないプロ野球は、選手の海外進出、具体的にはMLB入りも阻止してきた。野球に限らず、競技者(アスリート)がより高いレベル、最高レベルの競技環境を求めるのは、いわば本能である。球界は、選手の本能を長い間、封じ込めてきた。

 プロ野球選手の海外進出の先駆者は野茂英雄である。近鉄を退団した野茂は1995年、MLB・ドジャースに入団した。ワールド・シリーズまで中止となったMLB長期ストが行われた翌年だった。野茂はその年、リーグの新人王と奪三振王を獲得し、鮮烈なデビューを飾った。

 野茂は追われるように日本を離れた。近鉄に複数年契約を求めた契約交渉が決裂し、任意引退選手となってMLB入りした野茂に対して、球界とそれに関わる人たち、野球解説者やマスメディアは、まるで連携したかのように「罵詈雑言」を浴びせかけた。

 しかし、彼らの対応は、野茂のMLBでの活躍によって、手のひらを返すように激変した。野茂の人格攻撃までした解説者やマスメディアは、その年のうちに野茂の「賞賛者」に変身した。その辺の事情を今も記憶している心ある野球ファンは多いに違いない。

 野茂の成功は、後進に大きく道を開いた。佐々木主浩、イチロー、松井秀喜、松井稼頭央らスターたちが続々とMLB入りした。今年、MLB最多安打257本の更新を狙うイチローはMLBのスーパースターになった。プロ野球からMLBへの流れはもう誰も止められない。

 野茂の成功は、プロ野球とは違うMLB文化を日本にもたらした。日本最大のTV局であるNHKが、当時普及し始めたばかりのBS放送の「目玉コンテンツ」として野茂を位置付けたからである。NHKがその年、野茂の登板した全試合をBSで放送したことで、MLB人気に火が付いた。

 NHKはMLBを積極的に日本に紹介しようと狙ったわけではない。「目玉コンテンツ」である野茂、そしてその後の佐々木、イチロー、松井秀らを露出させることによって、BS放送を普及させようとしただけである。NHKは今年、いまや彼らの「秘蔵っ子」になった松井稼、イチローに、正午と夜7時の定時ニュースで、「きょうの松井稼」「きょうのイチロー」枠を設けるほど肩入れしているが、MLBの試合結果などには興味はない。

 しかし、BS放送を通して日本でも多くのMLBファンが生まれた。そして、MLBファンはプロ野球との違いに気付きだした。内野に芝生があることによる内野守備の面白さ。プレーの質の高さはもちろんだが、選手が観客席に飛び込んでしまうほどのフェンスの低さ。内野スタンドとフィールドを隔てるネットなどない一体感。MLB最古の球場であるボストン・フェンウェイパークの左翼にそびえる「グリーンモンスター」。2番目に古いシカゴ・リグレーフィールドの外野フェンスを覆うツタ。強制的にではなく、自然発生的に生まれる声援とブーイング―。プロ野球にはない野球の楽しさを発見した。

 今年のオールスター戦前日に行われたホームラン・ダービーには象徴的な「演出」があった。ダービー前のセレモニーでは、最多本塁打記録をもつハンク・アーロンはじめ500本塁打以上の記録保持者が勢ぞろいした。そして、ダービー本番中の外野には、強打者たちの打球をキャッチしようとする、ユニホームを着てグラブをもつ小学生たちがいる。MLBは100年もの歴史と未来を担う子どもたちに支えられていることを端的に示す演出だった。プロ野球にはないものである。

 江戸時代末期、浦賀沖にやって来た4隻の蒸気船は、徳川300年の太平の眠りを覚まさせた。「黒船」である。野茂やイチロー、松井秀を「看板商品」として、NHK・BS放送に乗ってやってきたMLBも、プロ野球にとっては「黒船」になった。しかし、「黒船」来襲にも眠りから覚めない人たちがいた。プロ野球の球団オーナーら球団経営者たちである。

 彼らはこう考えていたのだろう。長嶋茂雄氏が引退あいさつで使った言葉、「読売巨人軍は永遠に不滅です」になぞらえて言えばこうなる。「プロ野球は他のスポーツとは別格の国民的人気スポーツである。何もしなくても、何も変えなくても、プロ野球人気にかげりなど起きようもない。プロ野球人気は永遠に不滅であり続ける」。彼らは、彼らの足元が音をたてて崩れ始めたことに気付こうともしなかった。(2004年9月24日記) 

 日本最大の娯楽産業であるプロ野球ほど外部に対して閉ざされた世界はない。外部とのかかわりを拒否する「閉鎖系」システムは、球界を構成する選手、球団、機構、すべてに及んでいる。こうした「閉鎖系」システムを、外部に対して開かれた「開放系」システムに変革しない限り、球界再生への道はない。

 日本独自のスポーツ文化である大相撲を除けば、日本の人気プロスポーツは、プロ野球のほかサッカー・Jリーグ、男女のゴルフツアーがある。ゴルフのオープン・トーナメントにはプロに交じってアマも出場する。女子ツアーでは昨年、当時高校生だった宮里藍が優勝した。プロとアマは同一の条件とルールのもとでプレーする。その違いは、アマは賞金を受け取らないことだけである。

 Jリーグでは、ホームタウンやキャンプで、Jリーグ球団と地元やキャンプ地の高校生チームが練習試合を行う。天皇杯では、日本のトップリーグであるJ1チームから高校生チーム(高校生世代のクラブチーム)まで同一のトーナメントを戦う。

 高校生や大学生がJリーグのゲームに出場することができる。東京ヴェルディの森本貴幸は中学生でJ1の試合に出場した。プロとアマの違いは、プロ登録しているかどうか、プレーすることによって報酬を得るかどうかだけである。

 アマスポーツであるバレーボール、バスケットボール、ラグビーのトップリーグでは、チームはまだアマのままだが、チームと契約したプロがいる。アマからプロに移行する過渡期にある競技では、プレーすることによって報酬を得るプロが存在している。ラグビー日本代表の大畑大介、女子バレーボール・五輪代表のセッター、竹下佳江は所属チームとプロ契約を交わしている。

 スポーツの最高の舞台である五輪にアマの概念は存在しない。いまからちょうど30年前(1974年)、IOCは五輪憲章から「アマ規定」を削除したからである。それ以降、五輪にプロの出場が可能になった。アテネ五輪に出場した世界各国の有力選手のほとんどはプロである。

 野球では、サッカーのように、高校生や大学生、社会人がプロとともに練習することはない。アマ球団がプロ球団と試合することもない。アマとプロの間に分厚い壁があるからである。

 プロ(球団)と高校生(高校チーム)の接触は禁じられている。プロは母校のグラウンドに足を踏み入れることさえできない。禁止されている「直接指導」に該当すると指摘される恐れがあるからである。ドラフトで指名される高校生は、それ以前に退部届を出す。高野連が部員の「身分」のままでのプロとの接触を禁止しているためである。プロ入りするその高校で最も優れた能力をもつ高校生は、卒業する3月まで部員ではいられない。彼らは「中途退部者」扱いになる。

 アマを強引にプロ球団が引き抜いたことから起きた「柳川事件」(1961年)により、プロ・アマの関係が断絶するという歴史があったにせよ、「柳川事件」は40年以上前の出来事である。プロ・アマ球界ともこうした異常な関係を抜本的に改善する努力を怠ってきた。

 近鉄とオリックスの合併問題に端を発した、もっと正確に言えば今年1月の近鉄の球団命名権売却問題に端を発した球界再編問題では、球団の赤字経営やその原因の1つとなったドラフト制度の改悪に焦点が当たっている。しかし、それらは「二次的」問題である。時代遅れのプロ・アマ対立をいまも引きずる、アマ球界を含めた球界全体の時代遅れのシステムにこそ根源的な問題がある。(2004年9月21日記)

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