■生き方・死に方

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”哲学者・梅原猛さんを偲んで”・「止まらない汽車に乗って」

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『果てしない欲望の先にあるものは?幸せ?』

欲望という無限のエネルギーを素に、『止まらない車』を運転している。それが現在の私達?

 近代ヨーロッパを支配した原理、『歴史は進歩する』。と。

 目覚しい技術革新のおかげで、私たちのまわりにある物質は、日々豊かになり、私たちの乗る飛行機や

鉄道は加速度的に速くなりました。また、近年、インターネットの発達により、世界中の情報が舜治に世

界中を飛び回り、私たちは時間という大きな壁を簡単に越えることが出来るようになりました。明治維新

以来、『日本人は進歩の先には必ず、ばら色の世界がある』と信じてきました。時代を振り返って

みて、果たして、それは、真実だったでしょうか?大きな疑問を抱くのは私だけでしょうか?

以下、紹介する文は、37年前に発刊された、先日、他界した 哲学者・梅原猛さんの作品集からのエッセーです。
 
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「止まらない汽車」に乗って

 テレビを見たら、「止まらない汽車に乗って」という歌を歌っていた。あなたと二人で汽車に乗っ

たら、その汽車は止まらない、どうしたらよいのかというような歌である。(中略)私は、これを聴いて

ふと思った。人類は、今、止まらない汽車に、だんだん加速度がついて、ものすごい勢いで驀進する汽車

に、乗っている乗客ではないか。人間は約三百年前、近代文明という汽車をこしらえた。その汽車を走ら

せ、それに人間が乗ったのは産業革命以来であろう。

 しかもその驀進する汽車は、ますます速くなり、今や、その汽車を止めるすべはない。しかもその驀進

する汽車は、どこえ行くのかよくわからない。もちろん最初は、人間は汽車の行方を知っていた。しか

し、汽車はブレーキが故障したのである。というより、そんな速い汽車に、ブレーキがついてゆけないの

である。かくて、近代文明という汽車は、いずこへゆくや、全くわからないのである。落語でいうよう

に、行方は汽車に訊いてくれというわけである。

 「止まらない汽車」、しかも、時々刻々に速度が増している汽車に乗っている客の不安、そういう不安

の中に、現在われわれはいる。しかしそういうわれわれが、その不安の正体について、正確に知っている

わけではない。多くの人は、まだ、古い時間表に信頼をおいている。この汽車の行く先は、桃色の科学技

術社会であると、十六世紀の思想家は考えた。こういうピンクの切符が、最近もまた未来論という名で発

表されたが、私はじっさいにその切符は通用しないのではないかと考える。「止まらない汽車」の行方は

誰も知ることが出来ない。(中略)かくして、戦後二十五年の、日本の産業のものすごい復興、発展ぶ

り。その復興、発展の程度だけ、日本の国土は汚れ、公害は発生した。たとえば、自動車。自動車は、日

本人にとって贅沢品の典型であった。(中略)しかし、車の氾濫は、多くの交通事故と、排気ガス公害を

引き起こす。交通事故の死者は、戦争の死傷者より大であるという。一年に何万という人が、車で生命を

落としている。車が悪い、自動車産業が悪いと人はいうが、しかし、どうして人はこんなに車に乗りたが

るのであろうか。われられの心の中には「止まらない汽車」があるのであろうか。その汽車は、もうわれ

われに車に乗らないことを不可能にさせている。われわれは、出来るだけ速い車に乗ろうとしている。そ

の速さへの欲求は、近代人の根本にある、どうにもならない業のようなものであろうか。

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進歩へ信仰は、破壊への信仰を生む。そして、加速度的に進歩する現代社会において、欲望というエネルギーをもとに、『止まらない車』を運転している私たち。

『止まらない車』が止まるのは?精神が壊れた時?肉体が壊れた時?それとも、死ぬ時?

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