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ユヌス氏「貧困は平和への脅威」 ノーベル平和賞授賞式
2006年12月10日21時48分
06年のノーベル平和賞授賞式が10日、オスロの市庁舎であり、共同受賞した、貧困に苦しむ女性の自立を支えるバングラデシュの金融機関「グラミン(農村)銀行」とその創始者であるムハマド・ユヌス氏(66)にメダルと賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られた。同氏は受賞演説で「貧困は平和への脅威だ」と語り、対テロ戦争に走る世界の指導者に警告を発した。
ユヌス氏は演説で「世界の指導者の関心が貧困との闘いからテロとの戦いへと移行した」と指摘した。「貧しい人々の生活改善に資金を投入する方が、銃に使うよりも賢明な戦略だ」として、イラク戦争に巨費を投じる米国などの姿勢を批判した。
経済学者であるユヌス氏は74年、バングラデシュを襲った大飢饉(ききん)を目の当たりにし、農村の特に家計を切り盛りする女性に力点を置いた無担保少額融資「マイクロクレジット」を考案。「貧者の銀行」と呼ばれるグラミン銀行から融資を受ける人は同国で約700万人にのぼり、他の途上国でも草の根からの開発の手法として広がっている。
ユヌス氏は演説で、貧困層への融資のような社会性の強い事業を「ソーシャル・ビジネス(社会的事業)」と表現。利益の最大化を求めた従来の営利企業でもなく、寄付に頼る非営利組織でもない。貧困など社会問題の解決という目的を最優先する新たなタイプの事業と位置づけた。
「ソーシャル・ビジネスは、世界の人口の60%を占める貧しい人々の暮らしを変え、貧困からの脱却を手助けすることができる」
ユヌス氏は、ソーシャル・ビジネスを展開する企業でつくる証券市場の創設を提案。「貧困のない世界をつくることはできる。なぜなら、貧困は貧しい人々によってつくられたものではないからだ」。授賞式には、グラミン銀行から融資を受けて自立したバングラデシュの農村の女性らも招かれた。
ノーベル賞委員会のダンボルト・ミョス委員長は同日の演説で、「西洋はユヌス氏とバングラデシュとイスラム世界から多くのものを学んだ」と語り、今年の平和賞には米9・11テロで深まった西洋とイスラム世界との隔たりを狭めたいとの願いが込められていることを明らかにした。
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