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「イリヤのクリスマス」
カルディアの街ではクリスマスが近付いていたため広場にある巨大なモミの木にたくさんの飾りが施されクリスマスツリーが完成していた。フェイトとシルフィードはいつも通りにクリスマスの聖夜祭に向けて騒ぐ気満々だったが、イリヤはクリスマスパーティーをやったことがなかった。
奴隷として今まで過ごしていたイリヤは、貴族の下働きとしてクリスマスの料理の下ごしらえをしたり飾りつけとしたりはしていたが出される食事はいつもと変わらずクリスマスの夜も狭い部屋から星を眺めていることしか出来なかった。
「クリスマスっていったらチキンだよな♪しかも、甘辛いタレのやつ♪」
フェイトがウキウキしながらシルフィードとリオンと一緒にクリスマスに関して計画を練っていると、シルフィードはウイスキーやワインなどの酒も忘れるなよと念を押していく。
「・・・本編ではクリスマスに入る前にあたしたち街を出なかったっけ?」
レンが無表情で裏話をすると、フェイトたちはギクッとしてしまう。
「おいおいレン、なに言ってんだ?番外編はなにやったっていいんだよ!!」とシルフィード、
「そんなことはないと思うけど(汗)」とリオン、
「それよりクリスマスだぞ!!あと、21日しかないし急いで取り掛かろうぜ♪」
フェイトが号令をかけると、シルフィードたちもおーっ!!と言って早速買出しやクリスマスに向けての準備を始める。イリヤはクリスマスはそんなに楽しいのかな?と首をかしげていたが、シルフィードがイリヤの様子に気付く。
「どうした?お姫様♪浮かない顔してんな」
シルフィードの声にイリヤはクリスマスはなにをやるの?と訪ねる。シルフィードは酒を飲んでのバカ騒ぎだと答えると、イリヤは苦笑いを浮かべてしまった。
「シルフィードはお酒が大好きだもんね(苦笑)」とイリヤ、
「当然♪けどな、イリヤ♪クリスマスの祭りってのは大好きな奴の笑顔を見れる日でもあるんだぜ。気の合う仲間や好きな奴と聖夜を祝うのは格別なもんだ♪フェイトだってイリヤと過ごせるからあんなにはしゃいでるんだ、そんなしかめっ面してたらフェイトが心配するぞ」
シルフィードはイリヤの頭を乱暴に撫で回すと、イリヤはきょとんとしながらもすぐに笑顔になってシルフィードにお礼を言う。自分の知らない世界がまだまだいっぱいあることを知ったイリヤは、フェイトたちと一緒にクリスマスの準備をした。
そして、フェイトたちは温泉の近くの森に大きなテーブルと椅子を作り上げて簡単なパーティー会場を作った。ここならバカ騒ぎしてもすぐに温泉に飛び込める位置にあった。
クリスマスイブ当日にフェイトとシルフィードは正装をすると、シルフィードが一足先に会場に行って鍋にビーフシチューを作っていた。フェイトはリアと一緒に来るイリヤを待っていると、イリヤは黒のワンピースに青いリボンでツインテールにしていると少し恥ずかしそうにフェイトの前に出てくる。
「こないだ買ったイリヤちゃんの服なんだけど可愛いでしょ♪」とリア、
「ど、どうかな?変じゃない?」
イリヤは上目遣いでフェイトに服のことを聞いてみると、フェイトは笑顔になってイリヤの頭を撫でていく。
「全然変じゃないって♪見惚れるくらい可愛いよ♪」
フェイトは顔を赤くしてイリヤを褒めると、イリヤも顔を赤くしてしまった。リアはやれやれと笑いながらシルフィードが待っている会場へと三人で向かった。そこにはシルフィード料理長が作り上げた料理の数々がテーブルに所狭しと並べられていた。
定番のローストチキンは森の中にいる王家御用達の食材シャトーカイザーを使った物だったため、フェイトたちはおーっと喜ぶ。そして、フライドポテトやチーズクラッカーなどの軽食はもちろんのことミートソーススパゲッティーやピラフを手馴れた手つきで作っていった。
リオンとレン、シリウスも合流すると、フェイトたちは飲み物を持ってフェイトの乾杯の挨拶をするとグラスを互いに当てていく。フェイトのミルクにウイスキーを入れて細工したシルフィードはニヤリと笑うと、早速フェイトは顔を真っ赤にしてしまう。
「フェイト顔真っ赤だよ」とイリヤ、
「ちょっとミルクがなんか酒くさいわよ」とリア、
「おっと、フェイトのグラスにちゃっかりウイスキーを入れちまったな」
シルフィードがゲラゲラと笑うと、イリヤが本気でフェイトを心配する。
「フェイト大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ♪イリヤが三人に見えるだけ♪いつの間に分身を覚えたんだ?」
フェイトは笑顔でそう答えるので、
「(あっ!大変だ)」
と全員思ってしまう。シリウスもリオンに酒を進められて、今夜くらいはと思ってスピリタス(アルコール度90%)を一気に飲み干してしまうと一気に酔っ払ってしまった。
「いやーっ♪こんなに楽しい気分は久しぶりです♪」
シリウスはがぶがぶとウイスキーを飲んでいくと、フェイトもゴクゴクとワインを飲んではローストチキンを食べていく。
「だよな♪シリウスもリオンと飲めて嬉しいだろ?」とフェイト、
「もう天にも昇る想いです♪」
シリウスは酔っ払っているため本音を本人の前で言ってしまうと、
「嬉しいこと言ってくれるねー♪」
とリオンはシリウスと肩を組んでいく。フェイトとシリウスは完全にデキ上がってしまうと、シリウスが鍋の中にあるビーフシチューに気付く。
「これ、リオンさんが作ったんですか?」とシリウス、
「違うよ、シルフィードが作ったんでしょ?」とリオン、
「女の子が作る鍋は甘露だけど、男が作る鍋は炊き出しだと思う!!」とフェイト、
「おっ!フェイトさん、いいこと言いますね♪」とシリウス、
「鼻から食わせるぞ、こらっ!!」
シルフィードが酒乱二人に言うと、リアがイリヤとリオンにこうしてみてと耳打ちする。イリヤとリオンが鍋に向かって、
「おいしくなぁーれ☆」
と投げキッスをすると、フェイトもシリウスも目の色を変えて食器を片手に持つ。
「おかわりください!!」
とほぼ同時に言い放つ。
「いいコンビだな、お前ら。リオン、シリウスの腹芸が見たい♪抑えろ」
とシルフィードがつっこむと、リオンは了解と言ってシリウスに馬乗りになってしまう。シリウスはいきなりのことで驚くが、リオンと密着することによって一気に酔いが醒めてしまった。
「ちょっと、リオンさん・・・そこ触んないで下さいよ」
「大人しくするの!!」
リオンがシリウスのシャツを脱がすと、喜々として見ていたフェイトとシルフィードはケラケラと笑っていた。
「頑なだなシリウスは♪あれはおいしいだろ?」とフェイト、
「いや、あいつの場合は天然だろ?」
とシルフィードがつっこんでいく。すると、シルフィードはフェイトにイリヤに渡す物があるんだろ?と言って促すとフェイトは悪いと一言いってからイリヤと一緒にモミの木へと向かった。
「フェイト、この先になにがあるの?」
イリヤは真っ暗な森の中を歩いているので不安になると、フェイトは光の魔法で大きいモミの木をライトアップする。無数に飾りつけをしていたので、光に反射してモミの木は輝き始めるとイリヤはフェイトのサプライズに自然と笑顔になっていた。
「今年のクリスマス、イリヤと過ごせて嬉しかったよ♪これ、気に入ってくれるといいんだけど」
フェイトはポケットからネックレスを取り出してイリヤの胸元にかけていく。イリヤはあまりの嬉しさに少しだけ涙ぐんでしまうと、フェイトはそのまま後ろからギュッとイリヤを抱きしめた。二人の鼓動だけがドンドンと速くなっていく。
「ありがとう、フェイト・・・本当に嬉しいよ」
「そっか♪俺もイリヤの笑顔が見れてすっごく嬉しい♪大好きだよ、イリヤ」
顔を真っ赤にするイリヤはフェイトの胸に自分の顔を沈める。顔を上げると、イリヤはすばやくフェイトにキスをする。
「あたしも・・・フェイトが大好き」
イリヤは満面の笑顔をフェイトに見せると、フェイトも嬉しくなってもう一度だけイリヤにキスをしてからライトアップされたモミの木を二人で手を繋ぎながら眺めていた。
これが、イリヤの初めて笑顔で過ごしたクリスマスだった。
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