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駅前旅館
「先輩、それメタボリックすよ!、気をつけたほうがいいっすよ?!」
後輩の川田に言われて、少しばかりせり出てきた腹をさすりながら
オレは言った、「今日は、随分飲んだよなぁ〜。終電間に合うか?」
「僕んとこは大丈夫すけど先輩んとこはあぶないっすよ、」
「急ぐぞっ!おっとぉ!あぁ〜〜〜」
階段を2,3段下りたところで、かかとが何かに引っかかり、下まで・・・・落ちた。
「先輩、先輩大丈夫ですか?・・・せんぱ・・い、せ・・ん・・ぱい」
川田が叫んでいる。
野次馬が、何か言っている。
「なんだよ!見るなよ、 おまわりまで来やがって・・・いいよいいよ、救急車呼ばなくて
立てるよ、ほらっ」
「大丈夫だよ、・・・っいてぇ〜 頭打ったみたいだ、
ああ〜終電間に合わねえからオレ、ビジネス泊まるわ・・・じゃーな!」
手を振って川田と別れ歩き出した。
角を曲がると、いつものビジネスホテルが見当たらない、
「相当酔ってるな、あっ、こんな所に、旅館?・・・まあいいかここで、
経費でおとしてもらいまひょ!」
ガラガラ、格子戸を開けると玉砂利に敷石、足元は暗くてよく見えないが、
本格的な日本旅館だ、仮にも永田町に程近いビジネス街の駅前に
こんな、風情のいい旅館があったとは知らなかったな〜とか思いながら、
玄関の戸を開けようと、手を掛けるが早いか、戸はひとりでにスーッと開いた。
おっとっと!(自動ドアか!?)
「いらっしゃいませ、#X*@P様でございますね・・・承っております。」きつねが言った。
違う、きつねのような顔をした番頭だ。
白ワイシャツに蝶ネクタイ(横しまの)に、名入りの半纏を着ている。
[旅館 O・X・*]・・・いくら目を凝らしても読めない・・・
「長い間、お待ちしておりました。」
よく聞き取れないが、まあいいか、「そう、一部屋たのむ!」酔っ払いの悪い所で
気が大きくなっているのと、眠いのでいいかげんに返事をした。
「かしこまりました、こちらでございます。」
階段をあがろうとすると、奥から、着物姿のたぬきが出てきた・・・
・・・違う、狸に似ている女将だった。
着物の柄は、満月にススキがあしらってある。
帯は、お太鼓の真ん中に、茶釜だ・・・。
中身がたぬきで調度いいや、そう思ったらおかしくなって笑いがこみあげてきた。
笑っちゃ悪いな・・・こらえていると、見透かしたようにたぬき
いや、女将は言った。
「お客様、わたくしのことを、狸に似ているとお思いですね」
ギョッとして、かぶりを振った。
案内されて、部屋に着く。
次の間、床の間、トイレに内風呂、おまけに専用の露天風呂つきの超豪華な部屋だ。
「あのオレは、もっと狭くていいんで、安いへや・・」言いかけたが、
こんな豪華な部屋に泊まるのは、どこぞの成金か、政治家くらいだろう。
間違えたのはあっちだ、何とか言う奴が着たら、
「間違えました」って言えばいいや。どうせ寝るだけだし。
愛想のいいたぬき・・・いや女将は、番頭に目配せをする と、
番頭は、厨房にむかって声をかけた、「お着きだよ、支度を・・・」
あれよあれよと言う間に、豪華な料理が揃えられた。
芸者? 三味線に笛、太鼓・・・・。
大吟醸「*;、p@$%」よ−く見ても、目をこすっても読めない。
しっかり頂いた、「こんな旨い酒は飲んだ事が無い」
料理は見たこともない超豪華・・・「女房にも息子にも食わしてやりたいねぇ。そうそう
川田も連れてくればよかったな〜!」
飲めや、歌えの大宴会 いいかげんになった頃、階下が騒がしくなった。
「それは、本当でございますか?」きつねが叫んだ。
階段をどたどたと上って来たかと思うと女将に向かって叫んだ。
「その方は、#X*@P様ではございません。」
女将は目をまん丸にして、「な、なんですって・・・じゃあこの人は・・・・」
「オレは・・た・なは・・いち・ろぉほーですが・・・・」ろれつが回らない。
「このおかたは、おそらく、本物のにん・げ・・・・・・・」
そこまでは、確かに聞こえた、番頭の声だった・・・?
がらがら、どたどた、格子戸の外へほうり出されたらしい。
「いて〜なぁ〜。頭打ったよ、腰もいて〜!!」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・
「・・・ん・ぱい、せ・んぱい、先輩、大丈夫すかぁー??」
「あぁ、川田、なにしてんのおまえ・・??あん・・・ここはどこだ??」
「ぜ・んバイ、階段から落じで頭打って、運ばれたんすよぉ!
・・・意識が無くて・・・良かった・・・死んだかと思いまじだよ、
奥さんこっちに向かってますから・・」泣き声だ。
「おれさ〜、どんくらい意識無かったわけ?」
時計を見ながら、川田が言った、「1時間はたってないと思いまずよ」
「〜〜〜しかし夢にしてはリアルだったな〜。」
1週間後、旅館があった場所をさがした・・・。
旅館なんてあるはずがない・・・夢だったんだから・・・。
歩き始めた。
オレを呼ぶ声がする、ビルとビルの間・・・ほんの20cmくらいの
隙間から番頭が手招きしている
「田中様・お忘れものでございます」・・・毛むくじゃらの手が何かを、にぎっている
小さな金の玉をよこすと、
「これはあなた様の”寿命玉”でございます、こんな大きな寿命玉はみたことがございません。
お大事になさいませ・・・あの夜は手違いがございまして、危うく田中様の”寿命玉”を
頂いてしまうところでございました。・・・・それでは」
番頭は、振り向くと大きなしっぽを振りながら去っていった。
ビルとビルの隙間に顔を突っ込んで、番頭の後姿を探した。
ずーっとずーっと奥の方、 広い広いすすき野原の真ん中に旅館がある。
「旅館 狐や狸」
おいおい、ウソだろう・・・いくら永田町が近いからって、しゃれがきついぜ。
金の玉は、大事にいまってある、ないしょのところに。
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