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AIJ投資顧問:企業年金2千億円消失…123社分の大半
AIJ投資顧問の業務停止命令について報道陣の質問に答える自見庄三郎金融担当相(左から2人目)=国会内で2012年2月24日午前9時45分、竹内幹撮影
企業年金を中心に約2000億円の資産を運用する投資顧問会社「AIJ投資顧問」(東京都中央区、浅川和彦社長)が、高利回りで収益を上げているなどと顧客に虚偽の情報を伝えていたとして、金融庁は24日、金融商品取引法違反(投資家の利益に反する事実)の疑いで同社に1カ月の業務停止命令と業務改善命令を出した。証券取引等監視委員会が同社を検査したところ、残高は約200億円しかなく、大半は消失。預託された企業年金は大幅な含み損を抱えるとみられる。
◇金融庁が業務停止命令
同日午前、自見庄三郎金融担当相が記者会見し、「金額は不明だが、顧客資産を毀損(きそん)していたとみられ、投資家保護の観点から命令を出した」と話した。
関係者によると、同社は1989年設立で、資本金2億3000万円。昨年3月末時点で123の企業から預かった2100億円を投資運用していた。そのうちほとんどが企業年金(122件)で、年金1870億円を管理。顧客の大半は建設業、電気工事業などの中小企業による総合型の厚生年金基金だった。
同社は金融派生商品の運用により「市場の変動に左右されずに安定収益が上がる」「リスクを減らし絶対的な収益を目指す」などとうたい、運用実績も好調なように見せかけていたという。
しかし、監視委が今年1月下旬から検査したところ、大半は消失し残高は1割未満にまで落ち込んでいた。業績が不調にもかかわらず、集めた資金を配当に回していた疑いがあるという。監視委の検査で会社側も虚偽の説明があったことを認めているという。
このため金融庁は、残った資金を保全するため早急に業務停止命令を出すことを決定。実態の解明まで資産を引き出すことは不可能になる見込みだ。年金の消失が確定すれば、顧客の厚生年金加入者は深刻な打撃を受ける可能性もある。【川名壮志、田所柳子】
◇企業年金の運用◇
企業年金は、国民年金などに上乗せして、企業が任意に設ける年金。大企業なら1社単独、中小企業なら地域・業種が集まって作る年金基金で管理されており、実際の運用は、投資顧問業者などに依頼して行うことが多い。投資顧問業者の事務的なミスなどで損失が出た場合は賠償を求めることができるが、運用の失敗による損失の穴埋めは、金融商品取引法で禁じられている。企業は従業員に、将来年金を支払うことを約束して掛け金を集めているため、損失が出た場合は、企業が不足分を追加拠出することを迫られる場合もある。企業の財務に余裕がなければ年金基金を解散することもできるが、将来受け取る年金が減る可能性もある。
毎日新聞 2012年2月24日 11時04分(最終更新 2月24日 13時09分)
<AIJ投資顧問>どれだけ影響あるか…委託企業に戸惑い
毎日新聞 2月24日(金)13時41分配信
AIJ投資顧問が金融庁から業務停止命令を受けた24日、同社に年金資金の運用を委託している企業は事実関係の確認に追われ、広報担当者の応対にも困惑の色がにじんだ。一方、東京都中央区のAIJ投資顧問本社前では朝から殺到した報道陣に弁護士が対応し、「検査を受けており、今話せることはない」と語った。
産業用ロボット大手の安川電機(北九州市八幡西区)では、林田歩・東京管理部広報・IRグループ長が取材に「運用委託は事実だが、どれだけ影響があるのか正確には分からず、(業務停止命令の騒ぎに)びっくりしている」と話した。ただ、「AIJ投資顧問への運用委託は企業年金全体の2%未満」で、「運用上の影響は軽微ではないか」と見通しを語った。
また、運用を委託していたとされる半導体試験装置メーカーのアドバンテスト(東京都千代田区)は、広報・IR課員が「こちらでも事実関係を確認中。会社として確認でき次第、追って何らかの形で対応したい」と話したが、「いつどういう形で何を伝えられるのか。まったく決まっていない」と困惑した様子だった。運用委託の実態については「すべて調査中でノーコメント」と話した。
地下鉄日本橋駅近くのオフィス街の一角にあるAIJ投資顧問本社前には朝早くから、約20人の報道陣が詰めかけた。同社は11階建てビルの8階に入居し、入り口が木製のドアになっており、中の様子を見ることはできない。出入りする社員は記者らの問いかけにも無言のままだった。【太田誠一、町田結子】
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