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タタ財閥は、自動車、鉄鋼、電力、IT、薬品、ホテル、食品など7業種約100社、従業員36万人以上のインド最大のコングロマリットです。
創業は1868年(日本の明治維新)で現在のトップは6代目です。昨年12月にラタン・タタ氏が75歳を迎えたのを機にサイラス・ミストリ氏(44歳)にバトンタッチしました。
タタと言えば、数年前に世界最安値の自動車「ナノ」(約20万円)を発売したことで知られています。また、ジャガー・ランドロバーを約2300億、鉄鋼会社英蘭コーラスを約1兆4000億円で買収したことでも話題となりました。
先代のラタン・タタ氏は、この20年余りで売上を20倍以上伸ばし、海外での売上率を60%以上にし、国際企業として世界の舞台に踊り出ました。
日本との関係は深く明治時代につくも商会(三菱商事の前身)が初代ジャムシェドジー・タタの要請で外洋航路を創設。岩崎だけでなく渋沢栄一らとも親交があり、明治天皇から勲4等瑞宝章を授与されています。5代目ラタン・タタ氏は、昨年4月平成天皇から旭日大綬章をイギリス元首相メージャー氏らとともに受けました。
インドのGDPの5.3%以上をタタ・グループが売りあげているのですが、タタ財閥の総帥は、持株会社タタ・サンズの会長ということになります。このタタ・サンズの最高幹部はボードメンバーと呼ばれる5人によって運営されています。ほんの5年前までは9人いましたが、現在はサイラス・ミストリ会長を含む5人です。
歴代のトップは千年以上前にイランからインドに来たゾロアスター教徒の末裔です。ゾロアスター教徒は、インドに約6万、イランに3万、パキスタン、欧米、豪州など世界でも17万人ほどしかいません。信者が現在もいる宗教としては世界最古です。
6代目選びの時は、日産のゴーン氏はじめ世界の名だたる辣腕経営者が候補に挙がりましたが、最終的にはサイラス・ミストリ氏が選ばれました。ボードメンバーからゾロアスター教徒が3年前に1人、一昨年1人、そしてラタン・タタ氏と消えましたが、サイラス・ミストリ氏もゾロアスター教徒で、トップがゾロアスター教徒という伝統は守られました。
タタという名前は、18代前に非常に短気な人がいて「タタ」とい渾名を付けられたことに始まっているようです。タタはグジュラート語で「短気」という意味です。
今度のサイラス・ミストリ氏は、3代目に続き2人目のタタ家以外からのトップ就任です。サイラス氏の国籍はアイルランド(母親がアイルランド人)で、父親のパロンジー・ミストリ氏はタタ・サンズの筆頭株主(約18.4%)です。両親は数年前にアイルランドに移住しています。
サイラス氏のお姉さんは、ラタン・タタ氏の異母兄弟ノエル・タタ氏の奥さんですからゾロアスター教徒であるとともにタタ家の親戚でもあります。
現在、デリー・ムンバイ間約1500キロをタタ財閥と三菱重工が中心となり、大動脈構想が進行中です。道路、鉄道、港湾、空港、商工業施設、住宅など日本のエコ技術を生かして構想が進められています。最近、ハイデラバード・ムンバイ約500キロに日本の新幹線の技術が採用されることになりシン首相がサインをしたばかりです。
インドは12億5千万人の中国に次いで世界第2位の人口です。少子高齢化の日本と異なり、若年層の人口も多く成長が期待されます。世界の人口は一昨年10月に70億人を突破しましたが、インドと中国人で25億人以上になり、3人に1人以上は中国人かインド人ということになります。
インドに進出している企業はスズキを筆頭に数多くなりますが、まだ中国への進出企業の200分の1以下と言うのが現状です。チャイナリスクを避けて、台湾、ベトナム、インドネシア、タイ、カンボジアに進出の矛先を変更している企業も多いようですが、これからは世界最大の自由主義国インドへの進出が本格的になる時代だと思います。
先代のラタン・タタ氏はコーネル大で建築、ハーバードで経営を学んでいますが、6代目のサイラス氏はロンドンで土木工学を学んだ専門家です。インフラの遅れたインドを飛躍的に整備する潜在能力に期待したいものです。
賄賂の横行するインド社会にあってタタ・グループはきわめて清廉潔白な企業です。日本の企業が付き合っていく上での問題点は、スピード感し尽きると思います。中国や韓国の企業はトップの交流や判断を受けて数週間後には仕事が動くのですが、日本企業の場合は「社内で検討」する期間が長く、タタ・グループとしては痺れをきらせてしまう場面も多々あったようです。なにせ「タタ」とは「短気」の意味ですから。ちなみにヒンディー語では幼児言葉で「バイバイ(さようなら)」の意味です。
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