弁護士会では、弁護士が知識を深め、社会に問題を知ってもらえるよう、
いろんな委員会がいろんなシンポジウムやフォーラムを開催しています。
2月24日には、熊本で土師守さん(神戸児童連続殺傷事件の被害者の父)をお招きし、被害者の支援について考えるフォーラムをしました。
土師さんは全国で講演に引っ張りだこで、お断りされることもあるそうなのですが、熊本は神戸と同じ震災被災地なのでと、今回お引き受けいただけたとのことです。
私はこのフォーラムで、土師さんの講演に先立って、基調報告を行いました。基調報告の準備には、横浜の天野先生にいろいろと協力していただきました。お礼を申し上げます。
土師さんは、被害後からずっと付き添ってくれた警察の方に、今もすごく感謝をされていました。
その警察官が、被害者支援のための特別な知識や経験をもっていたわけではないようですが、被害直後の土師さんご家族に親身になって寄り添い、信頼を勝ち得たようです。
被害者のための知識や経験をもっていても、心が寄り添っていないと、そんな知識や経験は無用の長物でしょう。何の非もなく被害に遭って人生のどん底にいる被害者やご遺族に、ただ単に、法的な知識を伝えるのが弁護士の仕事ではない。少しでも安心してもらい、気持ちを軽くしてもらう。それが長い目で見て被害者の幸せにつながると思います。
私が活動するとき、何のために被害者の代理人を名乗るのか、考えさせられたフォーラムでした。
3月3日には、東京の子どもシェルター「社会福祉法人カリヨン子どもセンター」の理事長の坪井節子先生をお招きして、子どもの自殺をテーマにシンポを開催しました。
冒頭、詩人の岩崎航さんのメッセージが流れました。岩崎さんが死のうと思ったこと、生きながらえて今、感じていること。
岩崎さんが「夢も希望もないよ」とふとお母さんに話した時、「お母さん悲しいな」ってお母さんが言ったこと。本当の言葉を話して、本当の答えが返ってくる、「受け止めてもらえた」「そのままを聞いてもらえた」という体験は、人を力づける。岩崎さんのそんな指摘は、弱い子ども、そして被害者の方と話すときも共通するように思います。
坪井節子先生は、東京で子ども達に寄り添い、シェルターを立ち上げられました。公演は、講談(青山先生は「落語」だと言われてました)でも聞いているような惹き込まれる話で、途中、涙が止まらなくなる場面も・・・。
そんな坪井先生でも子ども達の話を「おろおろしながら聞く」ことしかできないこともあるとか。ただ、「おろおろ」しながらも、坪井先生が自然と口をついて出た言葉、それが子ども達の心を震わせてきたようです。自然に思ったこと、それが岩崎さんの「本当の答え」になるし、それが絶望にいる子ども達を救う(こともある)のでしょう。
坪井先生に別れ際、「(子どもから)話を聞くことはできますが、伝えることが難しくて・・・」とこぼしたら、「無理に伝えなくていい」「心の底から言葉が出てきたときに伝えればいい」とアドバイス。
その子の立ち直りを思いながらも、気負いすぎず、ムリして言葉を紡ぐ必要はないとつたえていただきました。
シンポが2週間連続で続きましたが、ハッとすることの多い刺激的な週末でした。