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これはとてもよかったです♪個人的には期待以上で今年観た邦画の中でもかなり上位になりそうです。(^^ゞ

太宰作品は若い頃に「走れメロス」に始まり、有名どころの「人間失格」や「斜陽」「晩年」などは読みましたが、単純な私にはあまりに暗くて理解できず、それ以上読みたいと思う気持ちになれませんでした。^^;

来年「人間失格」が映画化されるというので、そろそろ読み返してみようかと思っていたら、この作品が先に公開になったので、「ヴィヨンの妻」も読んでみました。あの短編をとても上手く映画としてまとめてあったと思います。とにかく脚本がいいですね。

太宰の世界観には詳しくないので、あまり深いところはわからないのですが、まず思ったのは時代が大きく影響しているのは確かでしょうね。どの文学作品もそれぞれの時代に書かれたからこそ、その時代を反映した思想や人間性が描かれているというのは、先日記事にした村上春樹の「ノルウェイの森」でも感じたのですが、今から65年近くも前の敗戦直後の日本に暮らす人々は、その混乱の社会が個人個人にも影響を与え、迷いの時代だったのかもしれません。

しかし逆に今も昔も変わらない部分として、男性の弱さとエゴと甘え、そして女性の芯の強さと母性などはたとえ50年以上昔の話でも大いに共感できる部分もありました。^^;それはいいとか悪いとかではなく、人間同士のぶつかり合いのようなものでしょうね。特に夫婦というのは他人にはわからない目に見えない不思議な絆があると思います。

現代ならこの大谷のような夫なら妻はまず我慢などできず、即離婚でしょう。小説を読んだ時もあまりに身勝手な放蕩亭主ぶりに笑ってしまいました。(^O^;その放蕩ぶりは、小説や映画の最初の方で妻の佐知が夫の泥棒を訴えてきた店主夫妻の言葉に思わず笑ってしまうのに表れていますよね。良くも悪くも昔の芸術家は豪快だったんだな〜と思ってしまいます。(^^ゞ

そんな夫なのに、文句をいうことなく、落ち着き払った態度で自分が借金を何とかするという妻の強さは何なのでしょう。そう思ってスクリーンに目が釘付けになっていると・・・なるほど、佐知がなぜそこまで大谷を愛せるかのかという理由もきちんと描かれていました。

彼女はどんなに夫が放蕩三昧であろうとも、根本的な夫の人間性は疑っていなかったわけですね。夫婦って信じるということが基本ですから、この大谷夫妻の場合はそこに強さがあったのだと思います。

「死にたい」とずっと願い、愛人と心中までしても死にきれない大谷は、ある意味かっこ悪い男性です。(^O^;でもそのかっこ悪さもひっくるめて愛するのが妻なのでしょうね〜(ちょっとわかる気も・・・(笑))

この映画の魅力は主人公のみならず、登場人物一人一人の人物描写が優れていることにもありますね。それぞれの心情がとてもよく伝わってきました。もちろんそれはキャストの芸達者さに寄るところもあるのですが、基本的には脚本なんでしょうね〜

そして演出も、ちょっとした描写が印象に残ります。例えば、家に帰ってきた大谷を黙って迎え入れた佐知が大谷を抱くシーンですが、片方の肩だけをはだけた佐知の後ろ姿の色香の素晴らしい事!下手なベッドシーンなど及びもしない官能的なシーンでした。後半で夫の弁護を頼んだ佐知が、釈放後にその弁護人辻のところへ訪ねて行くシーンも、行きと帰りでは微妙に佐知の着物の着方が違います。そのシーンはなくても、何があったかがわかるんですね。

佐知の官能的な描写以外でも、飲み屋の椿屋の店主夫妻が佐知と彼女を取り巻く人々とのやりとりを店の奥で仕事をしながら黙って聴いている姿や、大谷と秋子の心中シーンなどもドキドキさせられる印象深い撮り方でした。

最も心に残るのはやっぱりラストシーンでしょうか。”生きていさえすればいい”と言う佐知がそっと大谷の手に触れ、映像(↑の画像)がモノクロに変わってストップモーションになるラストの余韻は素晴らしかったです。続くエンドロールの音楽もとてもよく合ってましたね。【生きる】ということが大変でありながらも戦争をくぐりぬけてきた人たちだからこその言葉なのかもしれないと思ったのですがどうなのでしょう。。。

キャストは先ほども書いたように、何しろベテラン揃いなのでどの役も嵌っていたし皆素晴らしかったけれど、松たか子は本当に上手くなりましたね。彼女が主役になるわけですが、子どもが出来ると往々にして夫は二の次になりがちな女性が多い中(^O^;佐知の夫に対する想いが過剰でなく淡々とした表情の中に深く感じることができ、元来の品のよさが手伝って、凛とした佐知という人をよく表していたと思います。松さんは先月はミュージカルの舞台で活躍していたし、多彩な女優さんになりましたよね。今後の活躍が益々楽しみになりました。(^^ゞ

もちろん浅野さんを始めとする↓の解説にあるキャストは本当に素晴らしかったです。映画は贅沢ですよね〜これだけの主役を張れる人ばかりを一同に観られるんですから。そうそう、浅野さんの義太夫、いいお声でした♪
(ブッキーファンとしてはこの映画で描かれる岡田はブッキーにピッタリでしたね〜原作のそれらしき人物はイマイチだったのでホッとしました(笑))

太宰と言うと、暗いイメージばかりが先行していたのですが、この映画はクスっと笑えるシーンも多く、どうしようもない放蕩モノのダンナの話なのに、なぜか理不尽さや悲惨さを感じるより、それぞれの登場人物に悪者はいないせいもあってか、後味も悪くありませんでした。ただ大谷の将来はまたすぐに暗雲が立ち込めるであろうことを示唆するものはありましたが。。。

そんな明と暗のバランスがよく、個人的には好きな作品です。

これを機にまた少し太宰作品も読んでみようかな。比較的短編が多いので、読みやすいのもいいですね。なかなかきっかけがないとこの時代の文学作品は読めないので、チャンスかもしれません。(^^ゞ

出演:松たか子、浅野忠信、室井滋、伊武雅刀、広末涼子、妻夫木聡、堤真一

監督: 根岸吉太郎
原作: 太宰治
脚本: 田中陽造

上映時間:114分
公開情報:劇場公開(東宝)
初公開年月:2009/10/10
ジャンル :ドラマ
映倫:PG12

《コピー》
太宰治 生誕100年
ある夫婦をめぐる「愛」の物語

【解説】
 太宰治の同名短編を松たか子と浅野忠信主演で映画化。放蕩者の小説家と、そんなダメ夫をしなやかな逞しさで包み込んでしまう妻が織りなす心の機微と愛の形を繊細に描き出す。第33回モントリオール世界映画祭でみごと監督賞を受賞した。
 戦後間もない混乱期の東京。小説家の大谷(浅野忠信)は才能に恵まれながらも、私生活では酒を飲み歩き、借金を重ね、おまけに浮気を繰り返す自堕落な男。放蕩を尽くしては健気な妻・佐知(松たか子)を困らせてばかりの日々。ある日、行きつけの飲み屋“椿屋”から大金を奪って逃げ出してしまった大谷。あやうく警察沙汰になりかけるが、佐知が働いて借金を返すことでどうにか収まる。こうして椿屋で働くようになった佐知だったが、その評判はすぐに広まり佐知目当ての客で賑わい出す。そんな佐知の前に、彼女を慕う真面目な青年・岡田(妻夫木聡)や昔佐知が想いを寄せていた弁護士・辻(堤真一)が現われ、にわかに心揺らめく佐知だった。いっぽう大谷は、そんな佐知の姿に嫉妬を募らせ、ついに馴染みのバーの女・秋子(広末涼子)と姿を消してしまい…。(allcinemaより)

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★たんたんさん、佐知は魅力的な女性ですよね〜そして松さんは見事にその佐知を演じきってました。
うふふ、男性なら確かにプロポーズしたくなるキャラかもしれませんね(笑)。
TBありがとうございました♪

2009/10/18(日) 午前 9:44 choro

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★Swanさん、現代だったら絶対に離婚ですよね。^^;
しかし佐知は大谷より一枚上手というのがよくわかるので、観ていても納得できる感じがします。男性のエゴを感じると同時にそれ以上の弱さを感じられるのが女性には魅力としてうつるのかも。
TBありがとうございました♪

2009/10/18(日) 午前 9:49 choro

何ともいえない”間”がところどころにあり...
セリフ少ない中での演技も光っていましたね。
佐知のような女性は現代には少なくなってきたというか..周りにはいないような気がします。様々な人たちとの関わり合いがあったとしても佐知の愛に「ブレ」はなかった..作品を観ているる中でスクリ−ンの中の佐知に惹かれていく自分がいたような気がします。
とても良かった作品でしたね。
TBさせていただきますね。☆

2009/10/21(水) 午前 0:24 [ 拓海 ]

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本日映画見ました。Choroさんの感想に全く同感です。ラストが憎い。エンドロールで変な歌が聞こえてこないのも嬉しかった。やっぱり、映画の余韻のような音楽が最適ですね。
さて、ひとつお聞きしたいのですが、昔、原作は読んだんですが、よく覚えていません。なぜヴィヨンの妻って言うんですか?
ヴィヨンって、大谷のことなんですか?走れメロスのメロスは分かりますが、ヴィヨンは良く分からなくて。笑われるようなアホな質問で申し訳ありません。

2009/10/21(水) 午後 9:16 [ しろざけ ]

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★TAKUMIさん、そうですね〜とても静かな情感を感じる映画ですよね。
佐知のような女性は今は少ないでしょうね。男性も女性も我慢することはできなくなっていますから。^^;
いい映画でしたよね。TBありがとうございました♪

2009/10/22(木) 午後 9:08 choro

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★しろざけさん、はじめまして♪
ラストからエンドロールにかけては大切ですよね。これはとても余韻のあるラストでよかったですね〜
ヴィヨンって小説内では大谷が「フランソワ・ヴィヨン」という論文を雑誌に発表するということが書かれていますが、このヴィヨンという人は15世紀のフランスの詩人だそうで、高い学歴を持ちながら犯罪を犯したり、入獄、放浪の人生を送った人のようです。そんなヴィヨンを大谷に重ねて書かれているみたいですが、太宰はこの人の詩に惹かれていたとパンフの解説にありました。具体的には小説でも映画でも説明がないので細かいところまではわかりにくいですよね。^^;

2009/10/22(木) 午後 9:15 choro

私もラストシーンが好きですね。出来た妻で、ダメダメ亭主の大谷には、本当にもったいなかったです(笑)でも、二人の間にある「絆」は、想像以上のものでした。弁護士のもとへ行ったとき/帰り、着方が違っていましたね〜。口紅を塗る/捨てるの描写も、また美しく見えてしまいました。TBさせてくださいね。

2009/10/26(月) 午後 10:02 [ - ]

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これはただ表面的に見ると、ダメダメ夫にしか見えませんが
決してそうではないのですよね。
なるほど
<根本的な夫の人間性は疑っていなかったわけですね
まさにこの一言でしょうね。
そんな彼に尽くすことが幸福だったのです。
そして働いて自立するということも学んでいきました。
TBさせてくださいね。

2009/10/29(木) 午後 4:03 car*ou*he*ak

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★SHIMAさん、いいラストでしたよね〜この二人の絆は他人にはわからないものなのでしょうね。凄い夫婦だな〜と思います。
口紅の描き方も見事でしたね。とても印象に残るシーンでした。
TBありがとうございました〜♪

2009/10/30(金) 午後 9:01 choro

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★カルちゃん、そうですね〜尽くす幸せ・・現代の女性にはほぼ無縁とも思えるようなことですが、それが美徳とされる時代でもあり、又本人も幸せだったのでしょうね。
あ〜なるほど、確かに自立することも彼女は学びましたよね。だからこそ余計に自分をしっかりと持つことができたのかもしれません。
TBありがとうございました〜♪

2009/10/30(金) 午後 9:03 choro

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二人の夫婦感って凄いなと思いました。
時代もあるんだろうけど、夫婦ってこういうのものなのかなと感じました。
女性はたくましく、男は滑稽だという感じは今でもある意味変わらないかも。
TBさせてください。

2009/12/21(月) 午前 10:44 かず

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★かずさん、ですよね〜時代とは言え、今では絶対にいないような夫婦でしたね。^^;
でも、人間的な強さはこの時代の方があったのかもしれません。やはり我慢強いというのもあるし、芯が通っていると言うか・・・
TBありがとうございました〜♪

2009/12/24(木) 午後 9:40 choro

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まず、監督がベテランだし、演技に定評のある松たか子と浅野忠信だしね。

2010/5/4(火) 午前 10:49 mossan

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★もっさんさん、キャストもよかったですね〜
松さんは本当に上手くなりましたよね!
TBありがとうございました♪

2010/5/10(月) 午後 8:55 choro

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配役から脚本から演出から、どれをとっても素晴らしい作品でしたね〜。
そそ、明と暗のバランスがよかったですよね。 質のよい日本映画、堪能できましたです。
TB、お願いします。^^

2010/9/17(金) 午後 11:25 サムソン

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★サムソンさん、これはいい映画でしたね〜
そそ、日本映画としてのよさがいろいろな面で出ていた作品だと思います。(^^ゞ
TBありがとうございました〜♪

2010/9/18(土) 午前 7:43 choro

一度コメしてましたね↑ 結局wowow鑑賞となりました。
ダメな夫に尽くす妻、というより、類は友を呼んだ、そんな感想を持ちました。似た者夫婦だった気が…(^^ゞ
戦後と言う時代をよく表していたんだと、記事を読みながら思いました。
TBさせてくださいね☆

2010/12/18(土) 午後 10:35 なぎ

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★なぎさん、2度目のコメ、ありがとうございます〜♪(^^)
今じゃ考えられない夫婦関係ですよね。この時代の人って何だか凄いな〜なんて思っちゃいます。^^;
時代ですよね。良くも悪くも・・・
TBありがとうございました♪

2010/12/21(火) 午後 8:56 choro

松たか子はいい女優さんになりましたねぇ〜♪
浅野忠信も、台詞が聞き取りづらい難はありましたが、母性本能をくすぐる演技でした!
それに、衣装、美術、照明などスタッフ部門はいい仕事しましたね(^_-)-☆

2011/3/23(水) 午後 8:56 やっくん

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★やっくんさん、ホントに松さんはいい女優になりましたよね。
浅野さんはこの役には合ってましたね。セリフは今度何かで観る時よく聴いてみます。^^;
TBありがとうございました♪

2011/4/2(土) 午後 8:55 choro

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