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「プレシャス」(2009)

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今年のアカデミー賞では、主演、助演女優賞のみならず、作品賞にもノミネートされた本作。予告を観た時から過酷な内容だろうと思いつつも、期待していた一作です。

今から20数年前のハーレム地区でのできごとですが、まだまだエイズについても正しく理解されていなかった頃ですね。時期的にも「RENT」とちょうど同じでしょうか。本作でも中盤からエイズ問題も絡んでくるんですね。

主人公のプレシャスは16歳。本当ならまだ親の保護下にある年代です。ところが、一緒に住む母親メアリーは全く働こうとせず、生活保護をもらって、毎日ただTVを観てはゴロゴロとする生活。父親の虐待により12歳だったプレシャスの生んだ子どもも、赤ちゃんの祖母にあたる自分がみることもせずその母親(赤ん坊の曾祖母)にあずけっぱなしの状態です。

そのメアリーはなぜかプレシャスを憎んでおり、家事でこきつかうだけではなく、何かにつけて彼女に当り散らし、「教育も無駄」と言い切って全く娘の希望などを聴く耳も持ちません。しかしなぜメアリーはあのように娘を毛嫌いしているのか、実の母親なのにあそこまでひどい仕打ちができるのか。。。その疑問の答えが最後に明かされた時は衝撃と共にやりきれなさを感じました。子を持つ母親目線で観ると涙ものであると同時に、母親になりきれなかった(大人になりきれていない)女性の哀しさが伝わり、彼女の過去を想像すると負の連鎖の過酷さを感じます。愛し方がわからない人は意外と多いのかもしれませんね。

そのような母親であっても、プレシャスは一生懸命生きようと、妊娠が発覚した為に高校を退学させられても、紹介されたフリースクールに通うことを自分で決めます。そこで出会ったレイン先生が彼女のその後の人生に大きな影響を与えることになるんですね。

先日観た「エデンの東」にしても昨日感想を書いた日本の小説「告白」にしても、やはり人間は愛されたいんですよね。プレシャスは誰も自分のことを愛してくれる人はいないと嘆きますが、レイン先生やクラスメイト、そして出産した病院の看護師ジョンなど、いろいろな人とめぐり合ったことで、自分は子どもにはたっぷりと愛情を注いで守り育てたいと言う気持ちが強くなったのではないかと思います。

とにかく、こんな過酷な環境があるかと思うほどプレシャスのそれまでの生い立ちは悲惨なものですが、それでも、夢を持ち自分と自分の子どもたちの今後の人生をしっかりと生きようとするプレシャスの力強さには圧倒されるようでした。

人って、本当に苦しいことがあると、そこから逃避する為に妄想に逃げるというのも、この映画を観ているとわかるような気がしました。過酷で大変な状況になると、プレシャスは必ず妄想します。スターになった自分、皆から愛されている自分。。。。しかしシンデレラではないけれど、それは現実ではなく妄想だとわかった時のプレシャスの辛さは計り知れないものであることを余計に感じました。

でも、プレシャスが自分の過酷な人生を受け入れたことは、決して楽な道ではないことは察しがつくけれど、彼女は今後出来うる限り自分と子どもの人生を大切に自立して生きていくような希望を感じました。作品全体の内容はとても重くて辛いものだけど、そんな希望が見える作品なので、後味は悪くないんですね。
 
主演のガボレイ・シディベは新人なのに、まさにプレシャスそのものでオスカーノミネートも納得ですね。しかし、やはり助演女優賞を受賞したモニークは素晴らしい!最後のミセス・ワイスにぶつけるシーンは圧巻で受賞も納得でした。同じ母親役で前年度のオスカー助演女優賞にノミネートされた「ダウト」のヴィオラ・ディヴィスもそうでしたが、母親というのは人の親であるだけでなく一人の人間であることが辛くなってしまう様子がせつないんですよね。

イメージ 2レイン先生とソーシャルワーカーのミセス・ワイスを演じたポーラ・パットンマライア・キャリーもよかったですね〜ポーラ・パットンは「デジャヴ」でも思ったのですが、ハル・ベリーにやっぱり似てますよね。予告を初めて観た時はハル・ベリーかと思ってしまいましたから。^^;マライアもほとんどスッピンで言われないとわからないほど。静かな演技でしたが、歌手のマライアとは全く違う一面を見せてくれたように思います。

しかしこのような子どもへの虐待は決して日本でもないわけではないでしょう。私が日本の小説で衝撃を受けたのは「永遠の仔」でしたが、こういう話は読んだり観たりするのが辛いんですよね。でも、この「プレシャス」は先ほども書いたように希望が見える作品なので救われます。辛いシーンだけでなく、クスっと笑えるシーンもあったり、妄想の中の可愛くて素敵なプレシャスの姿を交互に映し出すことで、明るさも感じられる作品になっていたのがよかったですね。
 
まとまらない感想になってしまいましたが、心に残る作品であることには間違いありません。重いけれどいい映画でしたね。
 
原題:PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE
上映時間:109分
製作国:アメリカ
初公開年月:2010/04/24
ジャンル:ドラマ
映倫:R15+

監督: リー・ダニエルズ
原作: サファイア 『プッシュ』
脚本: ジェフリー・フレッチャー

出演:
ガボレイ・シディベ (プレシャス)
モニーク (メアリー)
ポーラ・パットン(ミズ・レイン)
マライア・キャリー (ミセス・ワイス)
シェリー・シェパード (コーンロウズ)
レニー・クラヴィッツ (ジョン)

【解説とストーリー】
 実際にニューヨークのハーレムでソーシャルワーカーや教師をした経験を持つ女性詩人のサファイアが、そこで出会った黒人の貧困家庭に暮らす子どもたちの実態を背景に書き上げた小説を、これがデビュー2作目のリー・ダニエルズ監督が映画化した衝撃のドラマ。1987年のハーレムを舞台に、読み書きがほとんど出来ない16歳の肥満少女、プレシャスが、両親による想像を絶する虐待に耐えながら生きる過酷な日常と、一人の女性教師との出会いがもたらす一条の希望を描き出す。主演は新人ながら本作での演技が高い評価を受けたガボレイ・シディベ。共演に、こちらもその演技が絶賛され助演女優賞を総ナメにしたモニーク。
 1987年のニューヨーク、ハーレム。16歳のプレシャスは、極度の肥満体型のうえ読み書きも出来ず孤独に堪え忍ぶ日々。“貴い”という名前とは裏腹の過酷な毎日だった。この年齢にして2度目の妊娠。どちらも彼女の父親によるレイプが原因。失業中の母親は、そんなプレシャスを容赦なく虐待し続ける。妊娠が理由で学校を停学になった彼女は、校長の勧めでフリースクールに通うことに。彼女はそこで若い女性教師レインと運命的な出会いを果たす。彼女の親身な指導のおかげで読み書きを覚え、次第に希望の光を見出し始めるプレシャスだった。(allcinemaより)

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★ひかりさん、お返事が遅れてすみません。わかります〜私も母親の過去が気になりました。
負の連鎖だろうとは思いますが、やはり彼女も愛されることが少ない人生だったのでしょうか。子どもよりパートナーを優先するというのは、普通の女性ではあまりない行動のように思いますが、難しいですね〜
この映画ではそれぞれの女性に置かれた過酷な環境が哀しかったですね。
TBありがとうございました〜♪

2010/6/1(火) 午前 11:19 choro

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★SHIMAさん、プレシャスは彼女のことを本当に考えてくれる大人に出会えたのがよかったですね。
人はやはり愛が欲しいんですよね。でも、他人のみならず親からの愛まで受けられなかったら、そんなに哀しいことはありませんもの。
辛いけれど、少しラストに光があってホッとしました。
TBありがとうございました〜♪

2010/6/1(火) 午前 11:22 choro

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僕もレイン先生のことを、ずっとハル・ベリーだと思って疑いませんでした。絶対、ハル・ベリーですよね(笑)。
どうして母親が、プレシャスをあれだけ憎むのか、その真相を知らされた時には、衝撃を受けました。母親を演じた役者さんが、とても巧いだけに、観客の受けるショックも大きかったと思います。
確かに、人は愛されたいですよね。
その前に、自分から愛すことは、できないことなんでしょうか?
ショッキングな内容でしたが、描き方のおかげで、後味は悪くないですよね。
プレシャスの背負ってしまったものは、かなり重いですが、応援したい気持ちにさせてくれました。

2010/6/8(火) 午後 10:37 出木杉のびた

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何だかんだ言っても、プレシャスは並の人より強い。母親を切り捨てられるだけの自分を持っていたのですから。あんなふうに育てられたら、誰にも愛されない不安からあんな母親でも離れられなくなりそうですもの。そこがドラマであり、希望なのかなって思いましたです。TBさせてください。

2010/6/9(水) 午後 8:02 [ einhorn2233 ]

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★のびたさん、ハル・ベリーに似てますよね〜^^;
母親ももしかして同じような境遇で育った人なのでは?と思ってしまいますね。
やはり愛することを知るには愛されないとダメなのでしょうか。
重い映画でしたが、ラストは希望が見えて後味も悪くないのは不思議でした。
TBありがとうございました♪お返事遅くなってすみません。

2010/6/24(木) 午後 11:36 choro

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★einhornさん、そうですね〜プレシャスは強いです!
確かにそんな強さを持つ彼女だからこそ希望が見えますね。
TBが上手く入っていないようなのでこちらからさせていただきました。
お返事遅くなってすみません。

2010/6/24(木) 午後 11:37 choro

ポスター・・・インパクトありますね。
モニークの演技・・・怪演で・・・オスカーも納得でした☆
トラバお願いします!

2010/6/27(日) 午後 8:42 くるみ

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きっとプレシャスは子どもと強くたくましく生きていくんだろうなと感じましたね。
もちろんいろんな壁がこれからも待ち受けているのだろうけど乗り越えられる強さがプレシャスから伝わってきました。
TBさせてください。

2010/6/28(月) 午後 11:22 かず

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★くるみさん、プレシャスの過酷さを物語るデザインのポスターですよね。
モニーク、さすがのオスカー演技でしたね。
TBありがとうございました♪

2010/6/30(水) 午後 7:35 choro

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★かずさん、あれほどまでに過酷な環境ながら、自分の子どもと前向きに生きようとするプレシャスから、逆に元気がもらえるようでしたね。
TBありがとうございます♪

2010/6/30(水) 午後 7:36 choro

将来が明るいだけではないところが
この作品のリアルなんでしょうね。
プレシャスのこれからが名前どおりに輝くようにと
ただ祈るばかりのラストでした。

2010/7/4(日) 午後 0:58 [ ほし★ママ ]

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★ほしママさん、そうですね。単純なハッピーエンドでは現実感がなくなるけれど、課題を残しつつ希望も持たせるというラストは上手くできていたと思います。
ホント、祈りたくなりますね〜♪

2010/7/5(月) 午後 2:59 choro

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ハーレムってまだこのような厳しい世界なのでしょうか?想像を絶するね。

2011/2/12(土) 午前 0:21 mossan

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★もっさんさん、本当に想像を絶する世界ですよね。
そんなひどい環境の中でも希望を失わずに生きるプレシャスにエールを送りたくなる映画でした。
TBありがとうございます。

2011/2/12(土) 午後 7:46 choro

プレシャスは理解あるクラスメイトや先生と出会えた事が救いですよね♪
もちろん彼女自身の意志の強さもあるんだとは思いますけど^^
役者さんの演技は皆さん素晴らしくて、圧倒されました(*^▽^*)

TBお返ししますね!!

2011/5/6(金) 午前 11:30 れじみ

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★れじみさん、そうですね。やはり人生はどんな人と出会うかでずいぶん大きく変わると思います。
キャストの演技は熱演でしたよね。
TBありがとうございました♪

2011/5/7(土) 午後 10:12 choro

期待が大きかったせいか、思った以上の感動はありませんでした(^^ゞ
ちょっと薄味と言うか、プレシャスの人物像が伝わりにくかったというか…。
それでも母親役のモニークには圧倒されたし、アメリカの抱える大いなる病巣を知ることはできました。
人は愛されたい…。まさにその言葉に尽きると思いました。
TBさせてくださいね☆

2012/3/30(金) 午後 8:48 なぎ

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★なぎさん、あまりに過酷なストーリーなので、そちらのインパクトが強く、人物像としては伝わりにくかったかもしれませんね。
しかし愛されずに育ってしまった子どもは本当に哀しいです。アメリカは大変な問題を多々かかえていますが、規模が半端ないですね。
TBありがとうございました♪

2012/4/5(木) 午後 11:21 choro

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覚悟を決めて見たんですけど、酷い話でしたね〜。
でもこういう話は他にもたくさんあるんでしょうね〜。
日本でも虐待の話は絶えないし(-_-;)
それでも希望がもてるラストが良かったです。
演技もみんな良かったですね。
TBさせてくださいね。

2012/11/4(日) 午後 4:36 木蓮

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★もくれんさん、本当に酷い話ですよね。
あまりの悲惨な境遇には驚くばかりですが、それでも負けずに生きていこうとする主人公には誰もがエールを送りたくなるでしょう。
重いけれど心に残る作品でした。

2012/11/16(金) 午後 10:14 choro

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