choroねえさんの「シネマ・ノート」

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「悪人」(2010)

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妻夫木君が、「天地人」の後に全く直江兼次とは違うキャラクターを演じると知った時から楽しみにしていた作品です。

原作も素晴らしかったけれど、脚本に原作者の吉田さんが監督と共に名を連ねている事もあってか、映画も作品のテーマをよりよく伝えていたと思います。個人的には原作でわかりにくかった部分も映像化されたことによって納得できたこともあるし、もちろん原作にあって映画ではカットされていた部分もありましたが、とてもバランスよく纏まっていましたよね。

この題名の「悪人」とは全ての人間が持つ負の部分なのでしょうね。もちろん殺人を犯すことは取り返しのつかない最悪の悪ですが、原作の感想にも書いたように、直接手を下さなくても人って必ず他人を傷つけたり迷惑をかけたりしているわけで、いかにそれを小さくおさえて生きていくかというところに人間性が絡んでくるのだと思います。

しかし、この作品全体は暗くて重いんだけど、実はそんな人間のの部分だけでなく、ほんのわずかながらの部分も映画では小説以上に感じる事ができました。困難なことに立ち向かう力とか、相手を思いやる心とか・・・当たり前のことのようでいて、なかなかそれを実行するのは勇気の要ることばかりですが。

ほとんどの登場人物は皆自分のせいでことがこうなった・・・と悔やみます。誰もが悪人であり、また善き心を持った人間なんですね。人間は心から悔いた時必ず赦されると私は思っているのですが、「謝って済む問題じゃない」という事件も多いので、とても難しいことですね。だからこそ人は葛藤し続けるのでしょう。

主人公の祐一は映画ではその生い立ちや母親との関係がわかりにくいのですが、原作を読む限りやはり不幸な青年ということになるでしょうか。母親が「謝らせてお金をせびりに来る」というセリフの裏にある祐一の気持ちが原作のように描かれていないのは残念でした。
まだ若いのに人生を半ば諦めているような人間は確かにいると思います。祐一はあまりに不器用過ぎました。正直すぎたので、佳乃のことばが許せなかったのでしょうね。そこで一線を越えてしまったわけですが、あまりにせつない半生です。でも彼の人生はここからスタートするとも考えられるのではないでしょうか?この作品はまだ決着がついていないと思うし、それを想像する猶予を持たせているところがいいですよね。

ブッキーはファンの欲目を差し引いても(笑)よかったですね〜本当に今までにはやったことのないキャラクターだったと思いますが、いつもの爽やかオーラは全く出さず、終始暗い!これ以上ないほどの暗いオーラはこちらまで気持ちが沈みそうです。ちょっとTVドラマの「白夜行」の時の山田君を思い出しました。^^;この役を演じている時はかなり辛かったというのはわかりますね。俳優さんは犯罪者役などを演じている時はかなり精神的にきついというのはよく聴きますが、この役もそうですよね。まして素の自分とは全く違う場合、いくら役者とは言え自分自身を消すのは大変なことなんだと思います。

だからこそと言えるのか、ラストシーンの唯一潤んだ瞳ながら軽く微笑む祐一の顔は印象的でした。彼はもしかしたらあのほんのひと時を支えに今後生きられるかもしれないと思ったほどです。
ブッキー頑張りましたね〜拍手!(笑)

深津絵里の演じた光代のような女性も多いように思います。よく半径2キロ以内から出ない人生とか言うけれど、同じ国道沿いから全く行動エリアを拡げずに大人になってしまった光代の閉塞感は計り知れません。それは地理的なものだけでなく、彼女の心の中も小さな枠の中から飛び出ることが出来ずに来てしまったわけで、光代にとっては出会い系サイトも祐一との逃避行も、全てがその殻を破る一大決心だったことでしょう。ラスト、淡々と元の職場で働く光代は何を思って毎日を送っているのか。。。彼女に関してもいろいろなその後が想像できるラストでした。

深津ちゃん、やっぱり素晴らしかった〜控えめだけど、時には大胆に行動できるのも女性の方が得意かもしれませんが、とにかくキャラにピッタリで、光代はもう深津ちゃん以外には考えられませんね。一度保護された後、駐在所を抜け出してひたすら灯台に向う光代の強さは、普段の地味な光代からは想像できないような力を感じましたが、こういうシーンも彼女だからこそより伝わったような気がします。モントリオールでの受賞は納得ですね。

満島ひかりの演じた佳乃は普通の女性なら誰もが絶対になりたくないキャラですよね。実際、満島さんも自分とは全く違うことに戸惑いを感じながら役作りに苦労したようですね。しかしこの佳乃、小説ではイヤな女で自業自得みたいな印象のままで終わってしまったのですが、映画では最後に光を感じさせてくれました。父親が殺害現場に訪れて娘の幻影を見るところです。あの満島ひかりの演技(表情)は秀逸でしたね〜父親はあの佳乃の表情を見れたことで、一つ踏ん切りがついたのではと思えるシーンでした。

一番人間的に共感できないというか、悪い言葉で言えば人間のクズのように描かれていた増尾圭吾は救いようのないバカな青年ですが、なぜ彼がそうなったかが映画だと少しわかりにくいですね。そうなるには必ず理由があるのでそこは原作で確認ということでしょうか(笑)。しかし演じた岡田君、彼は「告白」に続いてイメージの悪いキャラをよくぞ演じました!あまりに整いすぎているのでイメージを脱却したかったのかな?とにかく若手イケメン俳優のTOPにいるような彼が、早々にこのような負の要素の強いキャラを演じたことは、本人にとって大きな力となるでしょうね。

祐一の祖母役の樹木希林や、佳乃の父親役の柄本明の存在感はいつもどおり申し分ないし、他のキャストもさすがに豪華版で見応えがありました。
 
美しい五島列島の景色や久石さんの音楽が、より作品を重厚にしつつ、また映画作品としての完成度を高めていたように思います。監督をはじめ、スタッフ、キャストが一丸となって作り上げたのがよく伝わってきました。

この作品がいろいろな意味で心に残るのは、やはり人間そのものを描いているからでしょうね。「悪人とは?」というより「人間とは?」という問いを後々まで響かせている作品でした。
 
上映時間:139分
公開情報:劇場公開(東宝)
初公開年月:2010/09/11
ジャンル:ミステリー/ドラマ
映倫:PG12

《コピー》
なぜ、殺したのか。
なぜ、愛したのか。

ひとつの殺人事件。引き裂かれた家族。誰が本当の“悪人”なのか?

監督: 李相日
原作: 吉田修一
脚本: 吉田修一 、李相日
音楽: 久石譲
主題歌: 福原美穂 『Your Story』

出演:
妻夫木聡 (清水祐一)
深津絵里 (馬込光代)
岡田将生 (増尾圭吾)
満島ひかり (石橋佳乃)
塩見三省 (佐野刑事)
池内万作 (久保刑事)
光石研 (矢島憲夫)
余貴美子 (清水依子)
井川比佐志 (清水勝治)
松尾スズキ (堤下)
山田キヌヲ (馬込珠代)
韓英恵 (谷元沙里)
中村絢香 (安達眞子)
宮崎美子 (石橋里子)
永山絢斗 (鶴田公紀)
樹木希林 (清水房江)
柄本明 (石橋佳男)

【解説とストーリー】
 芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーを「涙そうそう」の妻夫木聡と「博士の愛した数式」の深津絵里主演で映画化したヒューマン・ミステリー・ドラマ。長崎の漁村で孤独な人生を送り、ふとしたことから殺人者となってしまった不器用な青年と、そんな男と孤独の中で出会い許されぬ愛に溺れた女が繰り広げる出口のない逃避行の顛末を、事件によって運命を狂わされた被害者、加害者それぞれを取り巻く人々の人間模様とともに綴る。共演は満島ひかり、岡田将生、樹木希林、柄本明。監督は「フラガール」の李相日。
 長崎のさびれた漁村に生まれ、自分勝手な母に代わり、引き取られた祖父母に育てられた青年、清水祐一。現在は、土木作業員として働き、年老いた祖父母を面倒見るだけの孤独な日々を送っていた。そんなある日、出会い系サイトで知り合った福岡の保険外交員・石橋佳乃を殺害してしまった祐一。ところが、捜査線上に浮上してきたのは福岡の裕福なイケメン大学生・増尾圭吾だった。苦悩と恐怖を押し隠し、いつもと変わらぬ生活を送る祐一のもとに、一通のメールが届く。それは、かつて出会い系サイトを通じてメールのやり取りをしたことのある佐賀の女性・馬込光代からのものだった。紳士服量販店に勤め、アパートで妹と2人暮らしの彼女もまた、孤独に押しつぶされそうな毎日を送っていた。そして、話し相手を求めて祐一に久々のメールを送った光代。やがて、初めて直接会うことを約束した2人だったが…。(allcinemaより)

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★WANTEDさん、深津さんの受賞で盛り上がっていますが、これは観て損はない作品だと思います。
スタッフ・キャスト共に思い入れの強さが伝わる映画でした。

2010/9/16(木) 午後 9:14 choro 返信する

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★ほしママさん、そうですね。ブッキーの演技で私もそれはカバーできていたかなとも思いました。ただ、母親との関係はちょっと映画だけでは解かりにくいですよね。^^;
あの亡霊の満島さんの表情は素晴らしいですよね。あのシーンによって、憎しみの塊だった父親が少しずつ変わりだすわけですから、セリフはないのにとても重要な演技だったと思います。
原作を読んでいても楽しめる映画でしたよね。
TBありがとうございました♪

2010/9/16(木) 午後 9:28 choro 返信する

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あはは、ブッキーって?と最初思いました。ガッキーなら知っていますが。岡田将生は、バカ青年の役ですね。「告白」もそうでしたが。
満島ひかりも、いやな役ですが、確かに雨の亡霊シーンは光っていました。「愛のむきだし」同様、演技に磨きがかかってこれから期待ですね。

さまざまな俳優を見ているだけでも、一見の価値ある映画でした。TBお返しします。

2010/9/16(木) 午後 10:03 fpd 返信する

原作を読んでいらしてもこの感想ってやはり素晴らしい作品ってことですね。
悪人とは?ではなく人間とは?まさにそうでしたよね。
役者さんほんと皆さん素晴らしかったですね。
予告で妻夫木君の爽やかさと悪人が一致してなかったのですが映画をみてこういう事なんだ〜って理解できました。
孤独をこんなに描いた作品は胸に心にズシンと重くのしかかりました。原作ぜひ読みたいです.
私は告白は2度観たいとは思いませんでしたが、これはみたいって思える作品だったことが告白との違いのような気がしました。
TBお願いいたします。

2010/9/16(木) 午後 11:14 ひかり 返信する

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満島ひかりが出てるのですか。またまた高音で叫ぶのかな。見たい。
ブッキー(妻夫木聡)?実は子供店長が金髪にしてるのでは・・・

2010/9/17(金) 午前 0:13 [ esu**i123 ] 返信する

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★fpdさん、すみません。^^;我が家では妻夫木君はずっとブッキーなもんで・・・(笑)
岡田君もかっこいいのに、「告白」に続いてこの役は頑張ったな〜と思います。
満島さんも可愛いのに敵役をよくやりますよね。やっぱり上手い女優さんですね。
本当にキャストが見応えありました。
TBありがとうございます〜♪

2010/9/17(金) 午後 8:36 choro 返信する

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★ひかりさん、同じく「告白」は2度見たいとは思いませんでしたが、これは再見してもいいなと思いました。(^^ゞ
現代人を上手く描いた作品ですよね。誰もが思い当たるような。。
とても心に残る作品でした。
TBありがとうございます〜♪

2010/9/17(金) 午後 8:38 choro 返信する

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★esu**iさん、満島さんが叫ぶところ、ちょっとだけありましたよ〜(笑)
あはは、子ども店長って。。。(^O^;
しかしやっぱりブッキーは普通の黒髪の方がいいわ〜(笑)

2010/9/17(金) 午後 8:39 choro 返信する

観ている人が妻夫木君に共感できると感動するのでしょうが、やはり殺してはいけませんよね。満足度を上げるためには、もう少し生い立ちをはっきりさせるべきだったでしょうね。

2010/9/19(日) 午後 9:53 麺達郎 返信する

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★麺達郎さん、そうです。もちろん殺人は最大の罪ですからそれだけは犯してはいけませんよね。でも、彼の気持ちもわからなくはないだけにやるせない気持ちになります。
映画だとどうしても細かいところまでが解かりにくいが残念ですが、キャストの演技も素晴らしく、テーマはよく伝わったと思います。
TBありがとうございました♪

2010/9/19(日) 午後 10:32 choro 返信する

わー原作を読まれているChoroさんのレビューが、いい「解説」になりました。ありがとうございます。祐一も光代も、孤独や寂しさという共通点があって結ばれましたが、二人の遅かった出会いに切なくなります。TBさせてくださいね。

2010/9/20(月) 午前 1:38 [ - ] 返信する

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★SHIMAさん、そんな風に言っていただけるなんて光栄です。(*^_^*)ありがとうございます♪
しかし、重くせつないお話でしたね〜孤独な二人が本当にせつなかったです。
TBありがとうございました♪

2010/9/20(月) 午前 7:38 choro 返信する

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吉田修一自身も脚本に参加しているからか、原作の精神が映画でも生きていて嬉しかったです。特に、最後の祐一の眼の力が、祐一を単なる「不幸な若者」で終わらせなかったのはよかった。妻夫木、よくやりました。ちょっといい男過ぎますけどね(笑)
構成、キャスト、演出、音楽など、映画の要素を総動員した傑作でした。
トラバさせてくださいね。

2010/10/3(日) 午後 11:46 大三元 返信する

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★大三元さん、そうですね。原作者が脚本に参加というのは強いですよね。
妻夫木君はいつもの雰囲気を消しての熱演だったと思います。
重いけれどいい映画でした。
TBありがとうございます〜♪

2010/10/5(火) 午後 5:50 choro 返信する

Choroさん こちらへもお邪魔いたします。
なるほど!祐一と母の関係は原作を読んだ方が良さそうですね。
そして圭吾に関しても。映画で全部描く事は無理ですものね。
(今年公開作のアレでないカズオ・イシグロ作品を読んでる最中なので終わったらトライしてみます!)
映画鑑賞のみの現段階で、一番共感できたのは柄本明演じる父親です。
自分のレビューでも書いた申し訳ない表現で自業自得的な結果の女の子に感じましたが、親にとってはかけがえのない存在ですよね。
満島ひかりちゃんは嫌な子と父が愛した可愛い娘と、頑張って表現してました。
TBさせていただきます。

2011/5/6(金) 午後 0:00 風森湛 返信する

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★しずかさん、そうですね。どうしても映画だと描ききれないところがあるので、やはり原作に目を通すとより深く解かるような気がします。
おっとカズオ・イシグロの作品って何だろう?どれも読み応えがありそうですが。(^^ゞ
満島ひかりは可愛いのに癖のある役が上手いですよね。似合っちゃうところが凄い!(笑)やはりそれが達者な証拠なのでしょう。
TBありがとうございました♪

2011/5/7(土) 午後 10:43 choro 返信する

ほとんどノーメイクの深津絵里に女優魂を見ました!
妻夫木くん、柄本明、樹木希林の演技も素晴らしかったです♪
また、何より吉田修一さんの原作自体に力がありましたね。

2011/11/23(水) 午後 10:43 やっくん 返信する

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★やっくんさん、そうですね。やはり女優はこうでなくちゃ!見応えたっぷりでした。
ブッキーもよかったし、ベテランの二人は凄い存在感でした。
原作もよかったけれど、映画もよかったですね!
TBありがとうございました♪

2011/11/28(月) 午後 10:47 choro 返信する

深夜にお邪魔します!
先日久々にスカパーで色々と録画している映画の中からこちらの作品を鑑賞したので
今更なんですけどコメントさせて頂きました。
こういう作品は見た後にドヨーンとなって色々考えちゃいますね。なんで久々に見るのにこの作品を選んじゃったんでしょう?^^;

原作を読んでないんですけど、二人のその後は映画と同じ感じなんでしょうか?
というか最後に首を絞めたのは、光代の為を思ってですよね??光代の最後のセリフはどういう思いで発したんだろう…って気になってしかたありません。
二人の明るい未来を想像したくて心の中で勝手にその後のストーリーを作ってしまいました^^;

2012/8/19(日) 午前 2:14 ハチ 返信する

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★ハチさん、これは重いですよね。あはは、確かに久々に映画観よう〜って思われた時にはちょっと向かなかったかも。^^;
私も首を絞めたのは光代のためだと思いました。原作もよかったですよ。
それぞれのキャラクターの裏側まで感じさせるのは作品の力ですね。原作ではそれがより深く描かれていたと思います。
でも、映画もよかったですね。キャストも頑張っていて見応えがありました。

2012/8/22(水) 午後 7:43 choro 返信する

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