全体表示

[ リスト ]

イメージ 1
 
今年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品ですね。原題の意味は『復讐』。その名のとおり、復讐と赦しがテーマの作品でした。しかしそれだけに、2年前の「おくりびと」や昨年の「瞳の奥の秘密」などに比べると、より重かったでしょうか。社会的背景や家族のことを絡めながら、「人が持つ復讐心にどのように向き合っていけばよいのか」など、いろいろと考えさせられる作品でした。

監督のスサンネ・ビアは記憶に新しい「マイ・ブラザー」のオリジナル「ある愛の風景」(私は未見)や「悲しみが乾くまで」の監督なんですね。言われてみると作品の持つ特有の雰囲気など共通するところがありますね。

今回は大人の気持ちと子どもの気持ちの両側から「復讐と赦し」の心の持ちようが描かれ、このテーマは昔から小説や映画でも数多く取り上げられているにも関わらず、永遠に人間がぶつかる問題であり、感情というやっかいなモノが相手だけに簡単には結論付けられませんよね。最近の日本の小説の一つである東野圭吾の「さまよう刃」でも納得の行く答えは自分自身でも得られませんでしたから。

確かに「復讐からは何も生まれず悲劇と虚しさだけが残る」というのは理屈では皆納得していることだと思います。しかし、戦争までに至らなくとも、我々の身近で起こる理不尽な事件に自分の家族や大切な人が巻き込まれた時、果たして自分はどのような思いを持つのか、それは当事者にならないとわからないでしょう。幼い子どもの喧嘩のように自分だって相手を傷つける事があるということが解かっているような諍いなら「赦す」ことは納得できても、この映画に出てくるモンスター、ビッグマンたちのような行いを誰が赦す気持ちになれるのか。。。現代社会では法によって裁かれると言っても、その結果に納得が行かない場合も多々あるのは、人間の気持ちゆえなのでしょうね。
 
本作で描かれる2組の親子は、それぞれが問題をかかえているものの、それはどこにでもありそうな家族の心のすれ違いです。多感な年代の少年は、どうしても親が許せないこともよくあるし、また親の方も夫婦の問題や、子どもには言えない大人の心の葛藤などがあるのは決して珍しい事ではないですよね。

しかし、この映画ではその辺りの描写を、とても緊張感を持たせながら上手く描いているんですね。学校でイジメにあっていた少年エリアスと友人のクリスチャンはエリアスの父親アントンに振舞われた暴力に対し、なぜ父が見過ごしてしまうのか納得が行かないわけですが、大人には大人の考えがあり、それを父親は言葉で子ども達に納得させようとします。でも、子ども達はどうしても納得が行かず、それぞれの個人的な気持ちも重なって復讐を計画します。

この子どもたちの復讐計画が非常に作品の緊迫感を高めており、ちょっぴりサスペンス的な色合いも出しているのは、映画として上手い作りですよね〜

対するアントンがアフリカで奉仕している難民キャンプでも、理不尽な暴力が横行しており、アントンはその敵のボスを救うか否かで自分の心との葛藤を強いられることになりますが、後半のその絡みも非常に緊迫感がありました。

復讐は負の連鎖につながり、いいことは何もないと解かっていても、人間が感情の動物である限り、おそらくなくなることはないのでしょう。今も毎日世界のどこかで起こっているテロも全てが報復とかの名目で行われているわけで、何とも言葉がありません。

それでも、私たちは毎日の生活の中で、些細な憎しみをいかに納めて赦すかを考えながら生きているというのも事実ですよね。それができるのも人間ならではだと思うし、やはり「赦し」によって救われるものも大きいと思います。

アフリカの難民の無邪気で明るい表情の子ども達が冒頭でもラストでも印象深く出てきます。邦題はおそらくこの子ども達の姿と、主人公の二人の少年を見据えた上で付けられたのだと思いますが、この子ども達あっての未来なわけですから、大人は子ども達の顔を観るたびに常に立ち止まって自分たちの行動が本当にこれでよいのか、考えなくてはいけないんですよね。
そんなことを思わさせられる秀作でした。

最後にキャストについてですが、子役も含めて素晴らしいですね。クリスチャンの父親役のウルリッヒ・トムセンはハリウッド映画にも多々出演しているのでお顔は見たことがありましたが、「ある愛の風景」の主人公もこの方なんですね。これは是非観なくては。(^^ゞ

主演であるエリアスの父親アントンを演じたミカエル・パーシュブラントは初めて観ましたが、声がちょっとアラン・リックマンに似てるんですよね〜(^^) さすがにスウェーデンのベテラン俳優らしく非常に印象に残る演技でした。

 
原題:HAEVNEN
英題:IN A BETTER WORLD
上映時間 :118分
製作国 :デンマーク/スウェーデン
公開情報 :劇場公開(ロングライド)
初公開年月 :2011/08/13
ジャンル :ドラマ
映倫 :PG12

《コピー》
憎しみを越えたその先で
どんな世界を見るのだろう。

監督: スサンネ・ビア
製作: シセ・グラム・ヨルゲンセン
原案: スサンネ・ビア、 アナス・トマス・イェンセン
脚本: アナス・トマス・イェンセン
撮影: モーテン・ソーボー
音楽: ヨハン・セーデルクヴィスト

出演:
ミカエル・パーシュブラント (アントン)
トリーヌ・ディルホム (マリアン)
ウルリク・トムセン (クラウス)
ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン (クリスチャン)
マルクス・リゴード (エリアス)

【解説とストーリー】
 「ある愛の風景」「アフター・ウェディング」のスサンネ・ビア監督が、暴力と愛を巡る簡単には答えの出ないテーマに真摯に向き合い、みごと2011年のアカデミー賞外国語映画賞に輝いた感動のヒューマン・ドラマ。デンマークの郊外とアフリカの難民キャンプを舞台に、問題を抱えた2組の父子が、日々直面する理不尽な暴力を前に、復讐と赦しの狭間でぎりぎりの選択を迫られ葛藤するさまを、緊張感あふれる力強い筆致で描き出す。
 デンマークで母親と暮らす少年エリアスは、学校で執拗なイジメに遭っていた。両親は別居中で、医師である父アントンはアフリカの難民キャンプでボランティア活動に奮闘する日々。そんなある日、エリアスはイジメられているところを転校生のクリスチャンに助けられ仲良くなる。折しも一時帰国したアントンが、2人の前で暴力的な男に殴られると、無抵抗を貫いた彼に対し、クリスチャンはやり返さなければダメだと反発する。やがてアフリカへ戻ったアントンの前に、妊婦の腹を切り裂く極悪人“ビッグマン”が負傷者として運ばれてくるが…。(allcinemaより)

閉じる コメント(20)

顔アイコン

スサンネ監督のメッセージは、すごい伝わってきますよね。
でもそれを実践しようとすると、やっぱ、難しいものもあると思います。
ま、常に頭の片隅に入れておきたい感覚ではありますね。
TB、させてくださいませ。^^

2011/8/18(木) 午後 2:45 サムソン

外国語映画賞の作品とも相性がイマイチ…。
なのに毎年観ちゃうのは、質が高いからなんでしょうね♪
この作品も鑑賞が楽しみです!!

2011/8/18(木) 午後 9:47 れじみ

素晴しかったですね〜
この監督素晴しいとは思っていましたが今回はもう感嘆!しました。
私は今年NO1ですね。
こんなに難しい問題を実に上手く表現されていたと思いました。
そう邦題も良かったですね。
私も大人なは責任があるなって色んな意味で今回映画をみて思いました。TBお願いします。

2011/8/18(木) 午後 11:09 ひかり

顔アイコン

★サムソンさん、そうですね〜
映画でこのようにメッセージを表現できるのは凄いですね。
確かに実践するのって感情があることだから難しいです。
でも考えなくてはいけないことですよね。
TBありがとうございました♪

2011/8/19(金) 午後 9:42 choro

顔アイコン

★れじみさん、私は昨年の「瞳の〜」よりこちらの方がよかったです。重いけれどとてもいい映画でした。
DVDでも充分伝わる作品だと思うので、是非!

2011/8/19(金) 午後 9:43 choro

顔アイコン

★ひかりさん、最近の女性監督の活躍は半端ないですね。^^;
この映画もホントに素晴らしかったです。
ひかりさんはNO.1なのね。わかるような気も。。(^^ゞ
そそ、この難しい問題を上手く表してましたよね。
脚本がよかったですね。
大人と子どもの温度差は常に考えなくてはいけないけれど、なかなか大人になると子どもの気持ちは忘れてしまうのが残念なことです。難しいですよね〜
TBありがとうございました♪

2011/8/19(金) 午後 9:45 choro

顔アイコン

あ〜これ今一番見たい作品です。
スサンネ・ビア監督って心の奥に潜む何かを暴いてくれますよね。
海外では女流監督さんがご活躍なので、邦画界でもがんばって
ほしいです。

2011/8/21(日) 午後 9:18 car*ou*he*ak

顔アイコン

★カルちゃん、最近は女流監督の活躍が目立ちますよね〜
やはり女性ならではの視点というものが、これまでにない世界を描けるのかなと思いますが、同性としては嬉しい限りですね。(^^)
日本でも西川監督とか河瀬監督などに続いて出てきて欲しいですね!

2011/8/25(木) 午後 3:32 choro

今月の気になる作品には、入っていなかったのですが、
ヤフーの評価(☆印)が、すごいのと、本年度のアカデミー
外国語作品賞だったんだ〜と気づいて、鑑賞しました^^

とても難しいテーマだと思うのですが、緊迫感あふれるストーリー運びで、サスペンスっぽくしていて、最後まで緊張感を持って
鑑賞できました。いろいろな場面で、自分ならどうするだろうか
と考えた作品でもありました。アカデミーとGG賞のW受賞も納得の作品でした(´∀`*)

2011/8/29(月) 午後 3:07 [ pin*hyo* ]

顔アイコン

★pinkhyonさん、さすがに外国語映画賞だけあって見応えのある作品でしたね〜
大人の目線と子どもの目線の両側からアプローチされていて、いろいろと考えさせられましたが、サスペンスタッチなのも面白かったですね。

2011/8/30(火) 午後 9:30 choro

ネット上での評価が高かったので気になって見てきました。
確かに復讐はよくないとわかっていても、自分の家族が、友人が暴力の犠牲になったら自分はどうするのか、復讐せずにいられるか、当事者にならないとわからないですよね。
でもやっぱり暴力からは何も良いものは生まれないんだと当たり前ですが改めて思いました。
TBお願いします♪

2011/9/2(金) 午前 1:28 レミ

顔アイコン

★レミさん、本当に難しい問題ですよね。
人間の心って理屈ではどうしようもないこともあるし、かと言って趣くままに生きていたら争いはなくならないだろうし・・・
重いテーマだけど見応えがありましたね。
TBありがとうございました♪

2011/9/2(金) 午後 8:34 choro

顔アイコン

ようやく見ました。
やはりスサンネ・ビア監督作は素晴らしい〜
全然違う2つの場所でのことを描いていながら、ちゃんと絡めて
まとまって・・
しかし赦しというのはむずかしい問題ですね。
TBさせてくださいね。

2011/9/8(木) 午後 7:28 car*ou*he*ak

顔アイコン

★カルちゃん、描き方はさすがですよね〜
人間にとって難しい選択・・考えさせられますが、やはり大人は子どもに希望のある将来を見据えた態度でのぞまなくてはいけません。
いい映画でしたね。
TBありがとうございました♪

2011/9/9(金) 午前 10:33 choro

顔アイコン

やっと横浜で上映されたので観てきました。なるほど、確かに大人の論理が子供に通じないあたりの、コミュニケーションの断絶が、暴力の連鎖の一因になっているのですね。それでも、大人は子供に未来を託さなきゃならないから、伝える努力をしなきゃいけないというお話なのかしら。ともあれ、ヘビーな問題提起で、色々と考えさせられました。TBさせてください。

2011/11/2(水) 午後 11:30 [ einhorn2233 ]

顔アイコン

★einhornさん、この手の作品はいろいろなことを考えさせられますね。
しかし、子どもの未来は希望のあるものであって欲しいです。
重いけれど観てよかった作品でした。
TBありがとうございました♪

2011/11/5(土) 午後 10:42 choro

重いテーマなので、実は観るのを躊躇っていたんですが、観て良かったです。
大人の倫理だけでなく、子供目線の顛末には未来を感じさせる気がして、興味深く観ることができました。
TBさせてくださいね☆

2012/5/27(日) 午後 9:21 なぎ

顔アイコン

★なぎさん、そうですね〜これは重いテーマながら見応えのある作品でした。
子どもにとっては未来ができるだけ明るいものであってほしいと願うばかりですが、難しい問題ですね。
TBありがとうございました♪

2012/6/3(日) 午後 10:37 choro

アバター

最近復讐の連鎖を止めようとするテーマの映画が多いですが、その中でも身近な話になっているので入り込みやすかったです。
おっしゃるように、復讐と赦しって永遠のテーマですね。
それでも許しがあるから今日があるんですよね。
TBさせてくださいね。

2012/11/28(水) 午前 9:56 木蓮

顔アイコン

★もくれんさん、人が人である以上、感情というのはどうしようもないので、永遠のテーマになってしまうのでしょうね。
でも、赦す事、赦される事で世の中は動いているとも言えるのかも。難しいですけど。
TBありがとうございました。

2012/12/5(水) 午後 11:25 choro

開く トラックバック(7)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事