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話題の今年度オスカー作品賞受賞作ですが、やはり重いですね。そのせいか、公開3日目の日曜日に観たのですが、午前中のせいもあり思ったほど観客はいなかったような。。。^^;ただ、アメリカ人ではない私たちが観るのと、過酷なアメリカの歴史を知り尽くした本国の人が観るのとでは、おのずと受け止め方も変わってくるので仕方ない事かもしれません。

しかし、これを観てまず思ったのは、【拉致されて知らない場所で働かさせられる】という点では、奴隷とか人身売買ではないけれど、北朝鮮の日本人拉致問題と同じではないかと。。。本当に人道に反することで一口には表せない酷い出来事ですが、映画だと「アミスタッド」(これってキウェテルも出てたんですよね〜)を思い出しましたが、本作の主人公のソロモンも騙されて奴隷として売られてしまうという悲劇に見舞われ、「アミスタッド」の主人公と同じく家族とひき裂かれ、その思いを胸に12年間の奴隷生活を送ることになるんですね。

しかしこの19世紀の厳しい奴隷制度のあった時代でも、北部では自由黒人という地位があり、ソロモンのようにバイオリンニストとして白人と同じような恵まれた生活を送っていた人もいたというのは、恥ずかしながらほとんど私は知りませんでした。同じ黒人でもものすごく貧富の差が激しかったということでしょうか。エップスの家の近所に住む元奴隷だったという黒人のショー夫人のような人もいたわけだし。。。

南部の差別が厳しかったのは誰もが知るところですが、人を人とも思わぬ白人の主人たちの下で、ソロモンのように理不尽な過程で売られてきた奴隷もたくさんいたのでしょうね。それはこれまでもいろいろな小説や映画で多々描かれてきたので我々もよく知ることです。

この映画では、そんな自由黒人として普通に家庭生活を営んでいて主人公が、心無い白人の奴隷売買仲介人に騙され、わけのわからないうちに南部に売られてしまいます。本当に酷い話です。

最初にソロモンが買われたフォードは、それなりに奴隷の彼らを温かく迎え、ソロモンの能力をも買って彼の意見なども聞き入れます。しかし、このフォードの家に仕えている白人の大工、ティビッツの嫉妬心などを通じて、白人たちの格差社会をもここでは感じさせます。

その後、ティビッツからソロモンを守るという名目ながら借金のかたとしてエップスに売られたソロモンは、そこで過酷な毎日を送ることになるんですね。エップスはフォードとは違い奴隷を人間としては扱わず、自分の所有物としてしか見ない冷酷な主人でした。

このエップスが単なる敵役としてだけでなく、主人でありながら、実はものすごく弱い面を持つ白人として描かれているのは面白いです。若い奴隷の少女に手をだしているのを妻に知られ、妻からは疎んじられ、また、どれだけいじめようが立ち向かってくるソロモンに次第に恐れを抱くような気弱なエップス。彼は自分があまり頭がよくないことを認めたくないがゆえに暴力で力を示すしかなかったのでしょう。登場人物の中で一番の小心者はエップスなんですよね。

後半に出てくるカナダ人の奴隷解放論者であるバスによってソロモンは希望を掴む事ができますが、映画としてはラストがちょっとバタバタとした感じに思えました。

長さを感じることなく、ラスト近くまでソロモンが戻れるのかどうか惹きこまれて鑑賞していたのですが、彼がエップスの館を去る時のパッツィーの姿が忘れられません。同じくフォードのところに居た子どもとひき裂かれた女性も。。。

史実と異なるとしても、ソロモンが家族のもとへ帰った後、何か彼女たちに救いがあったことが示されたら後味がずいぶん違ったと思うのですが、実際問題多くの奴隷たちが不幸なまま一生を終えたにしても、このラストだと、観客は大手を振ってソロモンの帰還を喜べるという感じではないように思ったのですが・・・ちょっとビターな後味ですよね。

そんなラストの感想だったので、見終わった時は「う〜ん、作品賞は『ゼロ・グラビティ』でもよかったかも〜」なんてチラっと思ったりしましたが(笑)、やはりこれはアメリカならではの映画なのかもしれません。

でも、キャストは本当に豪華で英国人俳優がたくさん出ているし、楽しめましたよ〜
主役のキウェテル・イジョフォーはほぼ出ずっぱりで大熱演でしたね。主演男優賞候補も納得の演技でした。

同じく助演男優賞候補だったエップス役のマイケル・ファスペンダーは、二枚目だけにこういう悪役の凄みが増しますよね。この役はかなりきつかったと思いますが、先ほども書いたようにただ権力だけにすがって生きる白人男性の脆さがよく出ていてよかったです。

フォード役のカンバーバッチもやっぱり上手い!考えてみるとファスペンダーとカンバーバッチという主に英国で活躍する二人が、南部の奴隷を買う白人の主人というのも面白い顔合わせです。昔のハリウッド映画ならなかった組合わせのような・・・(笑)

若手のポール・ダノも癖のある役が合いますね。この人の出演作はどのキャラクターも強烈な印象が残っています。他にもポール・ジアマティが贅沢にほんのちょっとした役で出ているし、ブラピはいいところを持っていきましたよね〜プロデューサーとしての役得?(笑)

女性陣はやはり助演女優賞受賞のルピタ・ニョンゴは初めての映画出演とは思えぬ熱演でした。ただ、最優秀となると他のベテラン勢を押してと言うほどかなとも思いましたが、今後の活躍に期待ですね。

エップス夫人役のサラ・ポールソンが静かながら秘めたる夫への憎しみをよく出していたと思います。この夫人も家を出たくても出て行くこともできないしがらみに苦悩する白人の一人ですね。

奴隷たちの苦しみが最も大きいのは当然ですが、ここでは白人の持つ闇も描かれていたのはよかったですね。結局人間は満たされていないから誰かに当たったり、理不尽なことをしたりするわけで、人間の心の裏側というのは難しいなと思いました。

いい映画だと思いますが、個人的にはやはりラストにひっかかりがあったので、同じような黒人の奴隷を描いた作品だと、「アミスタッド」「カラーパープル」の方が(って両方共スピルバーグだわ(^O^;)印象深いかも。これって監督の個性なのかな?マックィーン監督はまだまだこれからの人だと思うのでこちらも期待したいですね。

原題:12 YEARS A SLAVE
上映時間:134分
製作国:アメリカ
公開情報:劇場公開(ギャガ)
初公開年月:2014/03/07
ジャンル:ドラマ/伝記
映倫:PG12

監督:スティーヴ・マックィーン
製作:ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ビル・ポーラッド、スティーヴ・マックィーン、アーノン・ミルチャン、アンソニー・カタガス
脚本:ジョン・リドリー
撮影:ショーン・ボビット
プロダクションデザイン:アダム・ストックハウゼン
衣装デザイン:パトリシア・ノリス
編集:ジョー・ウォーカー
音楽:ハンス・ジマー

出演:
キウェテル・イジョフォー・・・ソロモン・ノーサップ/プラット
マイケル・ファスベンダー・・・エドウィン・エップス
ベネディクト・カンバーバッチ・・・フォード
ポール・ダノ・・・ジョン・ティビッツ
ポール・ジアマッティ・・・フリーマン
ルピタ・ニョンゴ・・・パッツィー
サラ・ポールソン・・・エップス夫人
ブラッド・ピット・・・バス
アルフレ・ウッダード・・・ショー夫人
ケルシー・スコット・・・アン・ノーサップ
クヮヴェンジャネ・ウォレス・・・マーガレット・ノーサップ
タラン・キラム・・・ハミルトン
スクート・マクネイリー・・・ブラウン
ギャレット・ディラハント・・・アームスビー
ロブ・スタインバーグ・・・パーカー

【解説とストーリー】
 南北戦争前の19世紀前半に実在した黒人男性ソロモン・ノーサップの自伝を映画化した衝撃の伝記ドラマ。ニューヨークで普通の市民として自由な生活を送っていた主人公が、ある日突然何者かに誘拐され、南部の農園に売り飛ばされた末に体験する想像を絶する奴隷生活の行方を描く。主演は「キンキーブーツ」「ソルト」のキウェテル・イジョフォー、共演にマイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ブラッド・ピット。監督は「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックィーン。
 ニューヨークに暮らす音楽家のソロモン・ノーサップは生まれながらの自由黒人。妻子とともに、白人を含む多くの友人に囲まれ、幸せな日々を送っていた。だがある日、2週間の興行に参加した彼は、興行主に騙され拉致された末、奴隷市場に送られてしまう。自分は自由黒人だとどれだけ必死に訴えようが、無駄な抵抗だと悟るのに時間はいらなかった。そして名前も人間としての尊厳も奪われ、奴隷として大農園主フォードに買われていく。それでも農場では、その有能さを認められ、温厚なフォードに気に入られるソロモンだったが…。(allcinemaより)

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評判でもかなり過酷な映画みたいですね。マックイーン監督はアフリカ系の人なので、やはり他の人種の監督とは題材に対して思うところが違うのかもしれませんね。
この問題は、やはりアメリカ人には大きいでしょうし、ハリウッドの政治的な立ち位置としては未見ですが、妥当なチョイス、と云うところなのかな?と云う気がします。
ポール・ダノってほんと、印象的な人ですよね。私も総思います。
日本ではあまり集客できないかもしれないですね。でもやはり見たい映画です。

2014/3/17(月) 午後 5:17 [ miskatonic_mgs_b ]

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飛行機の中で観ました。
それほど昔の話ではないのですよね。
『大統領の執事の涙』を観た直後でしたので、余計響きました。
同じ人間なのに。。。

2014/3/17(月) 午後 10:40 紫桜

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★miskaさん、そうですね〜やはり奴隷の話なので結構辛いシーンも多かったです。
おっしゃるように、これはアメリカならではの映画でもあり、我々日本人が観るのとは感じ方が違って当然ですよね。
ポール・ダノは本当に強烈な個性の人ですね。本作でも出番は多くありませんが、印象を残します。
重い作品ですが、やはり観てよかったとは思いました。ラストに関しては仕方ないのかな?miskaさんのご感想を伺いたいです。

2014/3/24(月) 午後 5:09 choro

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★紫桜さん、19世紀というのは激動期でどこの国も大変だったんですね〜
しかし、同じ人間なのにこれは・・・と思いますよね。どこの国でも多かれ少なかれ昔はあったと思いますが、あまりに理不尽な時代でした。

2014/3/24(月) 午後 5:10 choro

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初めまして。いい作品に出会えましたね。

じゃあ、また、ちょくちょく寄せていただきます。

2014/3/24(月) 午後 9:25 after stroll

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★strollさん、はじめまして。ご来訪&コメントをありがとうございました。
見ごたえのある作品でしたね。いろいろと考えさせられました。

2014/3/27(木) 午後 5:58 choro

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やっと観る事が出来ました!
私はこの当時の現状などほとんど知らなかったので、驚く事ばかりでした。
南部では奴隷は家畜同様だったんですね。
ブラピはプロデューサーとして、やはり出る事で収益に繋げたかったのだと思います。
田舎ではアカデミー受賞作よりブラピ出演の方が多分集客力が良いです(; ・`д・´)
TBさせてくださいね。

2014/5/11(日) 午後 10:18 木蓮

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★もくれんさん、過酷な時代ですよね〜本当に人権なんて全く無視。どこの国でもあったことだけど、特にこの黒人奴隷に関してはひどいですね。
キャストも豪華でしたね。ブラピの威力はさすがかな。(笑)
TBありがとうございました。

2014/5/27(火) 午後 0:35 choro

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人種差別問題がテーマの作品は今まで意識して見て来た方なのですが、この作品はその中でも雰囲気が違うというか、凄く引き付けられました。
それはキャストはもちろんですが監督の志を感じました。
今まであまり描かれていなかった描写とかを描くのは勇気にいることだと思いますが結果的に素晴らしい作品となりましたし、オスカー受賞も納得です。
TBお願いします!

2014/5/27(火) 午後 9:54 かず

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★かずさん、確かに監督や作り手の意気込みが感じられる作品でしたね。
アメリカの歴史の一端をまた知ることができてよかったです。
TBありがとうございました。

2014/6/4(水) 午後 9:31 choro

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