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今年のオスカー作品賞受賞作という話題作ですが、今までのイニャリトゥ監督作品とはちょっと違う作風の不思議な感覚の映画ですね。

冒頭タイトルロールのドラムとアルファベットの文字の動きから惹きこまれます。とにかくこの映画、全編にわたって使われる音楽の大半がドラムスコアというのに驚きますが、その主人公の心を表すようなドラムの使い方が凄い!普通の映画音楽はメロディが心に残りますが、人生にもがき苦しむ初老の男の話には何とピッタリなのでしょう。考えてみると、リズムというのは人の心臓の鼓動が基本なので、リズムこそが最も感性に振れるのかもしれないな〜と思ったり。。。

そしてもう一つの驚きは、公開前から各解説でさんざん言われていた全編ワンカットに見える撮影法。ストーリー自体もほんの一週間くらいの出来事なのですが、室内から外に出る場面などで一瞬暗くなったりするものの、ハンディカメラでずっと登場人物を追うような撮り方は本当に面白く、キャストもスタッフも、また編集も大変だったろうなと思わさせられました。ドアを開けると過去に行くとか場所が移動するとかいうのはよくありますが、丸々ワンカットの長回しシーンは失敗できないわけですものね。せりふも長くなるし、ましてや動きのあるシーンだとかなりリハーサルを重ねないと上手く撮れないのではと思います。オスカー撮影賞は納得ですね。

そして、舞台がブロードウェイの劇場ということで、通常我々は客席側から舞台を観ることしかできないのですが、楽屋だけでなく、舞台裏、脇、天井裏など様々なバックステージが観られるのも興味深かったです。新作を発表するまでの大変な過程を描いた作品はこれまでもありましたが、その作品作りを主体とするのでなく、自らの再起を賭ける舞台の製作者であり主演に挑む主人公リーガンの心の揺れや、他の登場人物それぞれに潜む影も描かれているところに深さを感じました。

しかし、これまでのイニャリトゥ作品のようなダイレクトな重さは感じさせず、解説にあるようにシニカルなコメディになっているので見やすさはありますね。


(ここよりラストに触れるの部分は反転しますね)


それにしても、バードマンというキャラクターを上手く使ってますね〜リーガンのもう一つの自分の声としての役割や、羽のあるキャラであるがための羽ばたきは、ラスト、自分から解き放たれるということを意味しているのでしょうか?過去の栄光とようやく決別できるというか・・・ファンタジー的な話なのでラストも抽象的ですが、個人的にはそんな風に捉えてしまいました。

キャストはさすがに皆素晴らしいですね。マイケル・キートンと言うと「バットマン」もですが、どちらかというと「ビートル・ジュース」の怪演のイメージが強い私なので、今回のリーガン役もバットマンよりキートンらしさを感じました。オスカー受賞は惜しかったけれど熱演でしたね。

オスカー助演にノミネートされたマイク役のエドワード・ノートンはさすがですよね〜このマイクも自信家の嫌な奴のようで実は結構心を病んでいるように見えます。どこか孤独感を感じるのですがどうでしょう。

孤独と言えば他の登場人物もそうですよね。やはり人間って本来一人なんだけど、一人が怖いという人がほとんどなのでしょうね。リーガンの娘のサムが薬物依存症になったのも、家庭環境が原因と思われますが、それでも父親のそばを離れないことや、マイクとのことなどは、やはり彼女も一人になれない弱さを持っているわけですね。エマ・ストーン、実は本作を観た日、「マジック・イン・ムーンライト」と続けて観たので、エマ祭りでしたが(笑)全く違うキャラを観れたのは面白かったです。

初めてのブロードウェイでの成功を願うレズリー役のナオミ・ワッツも最初誰だかわからないくらい表情が暗い気がしました。怪我をした役者の代役として連れてくるマイクの恋人でありながら、どこか自信なげな女優で、いつもの華やかさはシャットアウトしたキャラクターでしたね。40代のワッツだからこそ演じられる役のようにも思いました。

劇中劇に使われるレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときわれわれの語ること』やカーヴァー自身のことを知っていると、より理解できそうですね。読んでなくて残念です。

作品としては、娯楽大作ではないので一般向けとは言い難いと思いますが、面白い映画でした。ただ、オスカーうんぬんは別として、個人的にはこの後日に観た「セッション」の方が、分かり易さもあるのかもしれませんがインパクトが強かったです。「セッション」の感想はまたあらためて。(^^)

原題:BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
上映時間:120分
製作国:アメリカ
公開情報:劇場公開(FOX)
初公開年月:2015/04/10
ジャンル:コメディ/ドラマ
映倫:PG12

≪コピー≫
もういちど輝くために、
もういちそ愛されるために、
すべてを手放し、羽ばたこう。

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
製作:アレハンドロ・G・イニャリトゥ、ジョン・レッシャー、アーノン・ミルチャン、ジェームズ・W・スコッチドープル
脚本:アレハンドロ・G・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr、アルマンド・ボー
撮影:エマニュエル・ルベツキ
プロダクションデザイン:ケヴィン・トンプソン
衣装デザイン:アルバート・ウォルスキー
編集:ダグラス・クライズ、スティーヴン・ミリオン
音楽:アントニオ・サンチェス

出演:
マイケル・キートン・・・リーガン
ザック・ガリフィナーキス・・・ジェイク
エドワード・ノートン・・・マイク
アンドレア・ライズブロー・・・ローラ
エイミー・ライアン・・・シルヴィア
エマ・ストーン・・・サム
ナオミ・ワッツ・・・レズリー
リンゼイ・ダンカン・・・タビサ

【解説とストーリー】
 「バベル」「BIUTIFUL ビューティフル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、かつてバットマン役で一世を風靡したマイケル・キートンを主演に迎え、公私ともにどん底状態の中年俳優が繰り広げる切なくも滑稽な悪戦苦闘の日々を、全編1カットという驚異の撮影スタイルで描き出すシニカル・コメディ。共演はエドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ。アカデミー賞では、みごと作品賞をはじめ最多4部門を受賞。
 かつて主演した大人気スーパーヒーロー映画「バードマン」のイメージが払拭できずに、その後は鳴かず飛ばずの俳優人生を送るリーガン。私生活でも離婚に娘サムの薬物中毒と、すっかりどん底に。そこで再起を期してレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を原作とする舞台を自ら脚色・演出・主演で製作し、ブロードウェイに打って出ることに。ところが、大ケガをした共演者の代役に起用した実力派俳優マイクの横暴に振り回され、アシスタントに付けた娘サムとの溝も深まるばかり。本番を目前にいよいよ追い詰められていくリーガンだったが…。(allcinemaより)

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そうなんですよね、なかなか勧めていいのかわからない映画でした(^_^;)
面白く観たんですけどね。
ラストはそおいう意味かもですね〜。
なるほどです。
TBさせてくださいね。

2015/4/19(日) 午後 11:03 木蓮

大好きなエドを贔屓目でつい見てしまいましたが
ツボに嵌った面白い映画でした。
イニャリトゥ監督の作品『21グラム』と『バベル』くらいしか
観た事ないのですが、シニカルな切り口は一貫してる気が・・・。
舞台に馴染みのない私もバックステージの様子に見入りました。
TBさせてください。

2015/5/21(木) 午後 3:16 風森湛

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★もくれんさん、面白い作品でしたが、解釈はいろいろとありそうですね。
しかし、厳しい世界ですよね。ほんの一握りだけが頂点に立てるのはどの世界も同じだけど、それぞれに人生があるわけで、奥深いですね〜
TBありがとうございました。

2015/5/24(日) 午後 8:31 choro

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★しずかさん、ノートンは上手いですね〜この役も本当に嵌っていてよかったです。
おっしゃるようにシニカルな切り口は一貫してますね。どの作品も強烈な印象を残しますが、やはり凄い監督なんだな〜と思います。
TBありがとうございました。

2015/5/24(日) 午後 8:33 choro

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