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♠ 神聖会議は衆議院の現行選挙制度から比例区を除くよう提言します。 毎日新聞 2009年9月15日 記者の目:総選挙 重複立候補は廃止を=佐々木雅裕 小選挙区比例代表並立制の下、政権交代をかけた衆院選は民主党が過去最多の308議席を得て圧勝した。わずかな票差も「勝てば1議席、負ければゼロ」に置き換えてしまう小選挙区のマジックは、5割弱の得票率だった同党に定数(300)の7割超の議席をもたらした。その民主党はマニフェスト(政権公約)に衆院比例定数(180)の80削減を明記している。しかし、民意の差を増幅する小選挙区の比重をこれ以上高める必要があるだろうか。選挙制度は比例代表を基本とする仕組みに変えるべきで、そのためにまず、小選挙区で落選した候補が比例代表で復活当選できる「重複立候補」を廃止する必要があると考える。 今回の民主党の比例での得票率は42%。定数に占める獲得議席(87)の割合は48%で、双方に大差はない。それが小選挙区では、47%の得票率で獲得議席は74%(221)だ。一方、郵政選挙となった前回05年衆院選(小選挙区)は、自民党が48%の得票率で73%の議席を奪い、大勝した。 今回、小選挙区で議席に結びつかなかった「死に票」(全落選者839人の総得票)は3270万票。有効投票の46%が生かされなかった格好で、「投票価値の平等」の観点からも、制度上の欠陥と言わざるを得ない。多党乱立による政治の不安定化は防がねばならないが、より民意が議席に反映される比例代表を軸とする制度に移行すべきだ。 ただそれには、比例代表制の本旨をゆがめている、重複立候補制度の廃止が前提でなければならない。 今回は「重複」により、97人が小選挙区で落選しながら比例復活で救われた。比例代表当選者の2人に1人だ。小選挙区当選者と復活当選者の「議員が2人いる」小選挙区は91区に及ぶ。2人が復活し「議員3人」の小選挙区も3区(茨城7区、埼玉8区、京都1区)。プロ野球のクライマックスシリーズさながら、小選挙区2位の候補が落選し、3位が復活したのも4区ある(東京15区、神奈川12区、大阪13区、岡山3区)。 石川、福井県では県内3小選挙区すべてで復活当選者が出て、県選出議員は6人となった。一方で岩手、宮城、新潟、山梨、長野、滋賀、高知、沖縄の8県は復活ゼロ。復活組が「比例ブロック代表」としての活動に重点を置くとは考えにくい。結果として石川、福井県は、両県より圧倒的に多くの有権者を抱える新潟県(6小選挙区で選出議員6人)と同数の代表を衆院に送り込むことができた。重複立候補制度は、1票の価値に県間格差を生んでしまう。 重複は無所属候補らには認められていない。いわば強者の論理で設けられた救済制度だ。元々小選挙区制に難色を示す勢力への説得材料として導入された色合いが濃く、明確な理念は見当たらない。 完全失業率5・7%(7月)という過去最悪の雇用情勢での衆院選は、失業に備えた安全網拡充も争点となった。だが、重複立候補という網で守られた候補者たちがいかに安全網の整備を訴えようとも、失業した人や失職間際の人たちにはむなしく響いたのではないか。また小選挙区当選者と復活当選者では、議員の間に格差、格付けも生じている。格差是正を訴える議員自らが「格差社会」に身を置くというのも皮肉な話だ。 今回の復活当選者は、自民党46人に対し、民主党43人。05年は逆に、民主党59人、自民党48人だった。つまり、小選挙区の帰結とは反する結果になっている。民主党はマニフェストに、「政権交代が実現しやすい選挙制度とする」とも記した。比例定数80削減の意図を「勝ち負けのメリハリがつきやすい制度への変更」と読み取るならば、重複立候補は民主党の志向に逆行する制度ということになる。 この他にも比例代表を巡っては、小選挙区での民主党圧勝で比例近畿ブロックでは同党候補が2人足らず、自民、公明両党に1議席ずつ割り振られる事態も起きた。前回も同様の事例があったが、民主党に投じたはずの1票が、結果的に自民党や公明党を救済したというのでは、納得できない有権者も多いだろう。 現行制度での選挙も5回を重ね、見直すべき点は明確になっている。これを機に、1票の格差を効果的に是正しうる比例代表を基本にした制度へと改めるべきだ。たたき台としては、小林良彰・慶大教授が提案する、選挙区(各都道府県)ごとの得票に応じて各選挙区に議席を配分する「定数自動決定式比例代表制」などがある。各政党は選挙区ごとに、順位を付けない候補者名簿を提出し、有権者は候補者名か政党名を記入し、投票する案だ。いずれにせよ、新政権には小手先の変更でなく、民意をゆがめない新たな制度の実現を求めたい。(政治部) |
選挙制度改革
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