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古い画像を整理していたら、一枚の写真が出てきた。
かつて連れ添った愛犬ヒー子の姿だ。
今月の24日が彼女の命日になっている。
長崎に赴任してすぐに、彼女は我が家にやって来た。
当時は、戦後しばらくして建てられた古い住宅に住んでいた。
初夏のある日、玄関を開け放しておいたら、いつのまにか1尾の子犬がアガリ框の上で寝ていたのだ。
それがヒー子との出合いだった。
人の気持ちの良く解る犬だった。
夫婦ゲンカが始まると、最初は狸寝入りを決め込むのは毎度の事。
しかし、いよいよ本格化すると立ち上がって胃液を吐いて抗議した。
気が小さく、犬同士のケンカなど一度もしなかった。
仔猫に「フーッ!!」と凄まれると尻尾を下げて道を譲った。
ただ、一度私がまだ眼も開いていない仔猫を2尾拾ってきた時は、親代わりになって賢明に育てた。
寒くない様に添い寝して、尻を舐めて排便させた。
離れた所に行ってしまうと、首をくわえて連れ戻した。
おかげで2尾は、立派に育った。
ペットホテルに預けると、ひどく消耗してパサパサになるので、旅行にはいつも連れて行った。
フェリーに乗って五島列島・福江島の海も泳いだし、飛行機や夜行の列車で東京にも何回も行った。
長崎で14年暮らし、甲府にやって来てからも元気にしていたが、さすがに最晩年は、かなり惚けた。
別れは唐突にやって来た。
ある夜いつもの様に、フローリングに横たわって意味無く足をパタパタやっていた。
暫くして治まったので、我々も床に着いた。
夜中に目が覚めて見に行くと、豆電球の薄明かりの下、静かに寝ているシルエットが見えた。
(何か様子が違う…)
確かめるのが怖くて、闇の中でタバコを1本吸って気持ちを落ち着かせた。
意を決して、恐々触れて見ると…
彼女は、誰にも見取られずに一人で静かに旅立った。
19年と7ヶ月。
犬としては長命の方だろう。
まだ、元気だったので20歳まで。と願ってはいたが、それはこちら側の勝手な思いである。
あれから6年。他の犬は、飼う気がおこらない。
ヒーは、小さな骨壷に納まってリビングルームのチェストの上でじっとしている。
きっと、我々があの世に逝った時は、笑った様な顔をして千切れる様に尾っぽを振って迎えてくれるに違いない。
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