|
そこで次のように独断的に創作しました。
嶼子は雄略二十二年,すなわち5世紀末,筒川から宇宙旅行へ出発しました。行き先はおうし座方向のある星です。F型G型主系列星の周りに惑星はたくさんあり,その中には表面温度が100℃以下で,液体の水があり,生命が発生し高度に進化した生物を持つ惑星がきっとあるでしょう(私たちが知らないだけで)。そこからはプレアデスもヒアデスもよく見えます。往復の手段は超高速の亀型宇宙船です。出発の契機や到着先の様子は前記の通りですから繰り返しません。帰還は300年後ですが彼の中の時間経過はわずか3年,明らかに相対論的効果です。まさにウラシマ効果を体験したのです。
彼はこの不思議な体験を筒川の人々に話しましたが,誰も信じてくれないどころか,狂人扱いにされてしまいました。ますます滅入っているところに,その地の豪族である日下部(くさかべ)が,その話を買おうとやってきました。
かつてワシより10代くらい前,先祖の一人に海へ出たまま行方不明になった者がいると聞いているが,彼がそうかもしれん,たとえ違ってもこの話を伊預部馬養連のところへ持ちこめば,面白おかしく書いてくれるだろう,どうせ馬養はあることないことを飛鳥の都の公家たちに吹聴しているのだから,こういうネタには喜んで飛びついてくるはず。今,天下の実力者である藤原不比等は特に歴史好きで,役人学者を集めて『日本書紀』というすごい歴史書を書かせているのだから,筒川の知名度を上げ,日下部の名を後世に残す絶好の機会じゃ。あの嶼子という男を他の豪族に取られぬよう用心せねばならんなぁ。
そしてそのとおりになりました。いや日下部首と伊預部馬養連が脚色したかもしれませんが,それ以上の邪推は無理なようです。
|