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症例4 70歳代、男性。
主訴:朝方の動悸、夜中の息苦しさ、
1年半くらい前から、朝方動悸を感じるようになった由にて受診。
前回のホルターEKGでは、異常ないため、頻脈、期外収縮を押さえるためβブロッカー処方。(異型狭心症というものがあり、日本人に比較的多いといわれる。普通の労作時狭心症と異なり、安静にしていても朝方の冠動脈の攣縮により起こり、この場合、一般に使用される心筋の酸素需要量を押さえて狭心症発作を予防するβブロッカー剤は冠動脈を収縮させるため禁忌)
2ヶ月後に再び、同様の症状にて再診されたため、メインテート服用中のホルターEKGをチェック。息苦しくて目覚めるという1~2°am頃に STの低下を認めた(心臓の血流量の低下あるいは低酸素血症であるが、異型狭心症ならST は上昇する))ため、SASを疑い、夜間SpO2 チェックを行う。
身長:168.7 cm,体重:69.8 kg.BP:130/70mmHg
飲酒:1合、喫煙:なし。
夜間SpO2 で同時刻のSpO2の低下を認めるため、簡易PSG(終夜睡眠ポリグラフ:Polysomnography:スターダスト)施行し、一晩の睡眠中に閉塞性無呼吸120回、1時間あたりの無呼吸・低呼吸指数 ( AHI ) は 41.8。平均 SpO2値は 97 % で、無呼吸・低呼吸に伴う最低 SpO2値は 85 % を認めた。
上位病院紹介し、CPAP(持続陽圧呼吸:Continuous Positive Airway Pressure)のタイトレーション(適正圧の決定)後、CPAP導入となり、以後、狭心症発作はみていない。
Holter EKG でも、ST の低下は見られなくなっている。
*SAS(睡眠時無呼吸症候群:Sleep Apnea Syndrome)とは。
米国のGuilleminant(ギルミナー氏)による"SAS"の定義「一晩の睡眠中(6〜7時間)に10秒以上の無呼吸(apnea)が30回以上もしくは、1時間当たり5回以上(AI≧5)起こり、 それによって臨床症状(居眠り等)を呈する状態のこと。 」が用いられるが、実際の臨床で、SASの判定には、無呼吸に低呼吸(hypopnea)を加味した無呼吸低呼吸指数(AHI)が用いられる。特に治療効果の判定にはこのAHIを用いることが多く、例えば診断後にCPAP療法下での睡眠ポリグラフ検査を行い、AHI37から2.8に改善した。というように判定します。
睡眠時無呼吸症候群は,一般の健常成人の中にも多数に潜在しています。 高血圧等、上記の症状の他、過労死, 夜間突然死との関連も指摘されており,さらには,仕事や学業の成績が上がらないで,真剣に働く意欲に欠け,性格の変化や性的能力の低下,失職による経済的問題,日中の傾眠による交通事故など, 数々の社会的不適応の原因になっていることが多く,極めて重大な社会問題にもなってきています.
一般にSASは中高年(30〜60歳)の肥満の男性にいちばん多くみられます。肥満の人は、首やのどの周辺部分にも脂肪がついているため、上気道が狭められて呼吸がしにくくなるのです。患者さんに共通してみられるのは、大きなおなか、小さなあご、短い首の三点です。
その有病率は男性全体のおよそ1〜3%と言われています。SASは女性より男性に多く(1:3)、
http://www.tsuboi-hp.or.jp/main/HTML/TOPIC/asunaro_vol10.html
女性の場合は、閉経後に睡眠時無呼吸症候群が増加することから、女性ホルモンとの関係も指摘されています。女性ホルモンには、呼吸中枢を刺激する働きもあります。これが、閉経前の女性に無呼吸が少ない理由のひとつになっているのだと思います。ところが、閉経後は肥満する女性が多く、かつ女性ホルモンも減少するため、睡眠時無呼吸症候群も増加するのです。閉経後は男女とも発症率ほぼ同じになるというデータもでています。
SASの重症度の判定
無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)という方法で、睡眠時の一時間当たりの無呼吸と低呼吸の平均回数を調べます。
無呼吸とは、睡眠中に10秒以上換気が停止すること、低呼吸は換気が50%以下に低下することです。
このAHIの睡眠時1時間当たりの数値が
軽 度 …5〜15
中等度 …16〜30
重 度 …30以上
のSASと判定されます。
日本人の場合、AHIの数値が30以上になる重症の患者さんがかなり多くいます。
しかし、SASの場合はほかの多くの疾患とは異なり、重症とはいっても、治療によって確実に良くなることが多いので、重症度をあまり気にする必要はありません。早期発見、早期治療がポイントです。
SASの種類
呼吸の指令を出す脳の障害による中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)と、上気道が閉塞して呼吸ができなくなる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の2つに大別されますが、OSASが睡眠時無呼吸の原因の95%を占めるとされます。
無呼吸や低呼吸による低酸素血症、高炭酸ガス血症とそれによる血液の酸性化は以下に述べる種々の病気と関連することが知られています。
1)高血圧: OSAS例の40〜70%に高血圧が合併し、特に睡眠時に血圧が低下しないノンディッパー型高血圧の原因のひとつとされ、心血管系への負荷が高まり、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの引き金になりえます。
2)糖尿病: 睡眠不足は血糖を低下させるホルモンであるインスリンの効き目を鈍らせることが知られており(インスリン抵抗性)糖脂質代謝を障害します。
3)虚血性心疾患: 冠動脈の緊張を高め夜間の狭心症発作や心筋梗塞の引き金になることもあります。
4)不整脈: 低酸素血症、高炭酸ガス血症とそれによる血液の酸性化は心臓にとっては不整脈の温床になります。
5)多血症: 赤血球の産生が刺激されて多血症を起こし、血液の粘度が高まり末梢循環が悪くなります。
6)肺高血圧症: 肺動脈の緊張の高まりや、上気道が閉塞して胸腔内の陰圧が高まることで、右心系への静脈血の戻る量が増えることで肺動脈圧が上昇します。OSASの重症例では肺高血圧症(平均肺動脈圧30 mmHg以上)やそれによる右心不全を合併し、むくみや運動時に呼吸困難を起こすことが知られています。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)のなかでも患者さんの割合が圧倒的に多い閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療で、もっとも有効性と安全性が確立されていて、第一選択となっているのは「CPAP療法」です。
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)とは、直訳すると「持続的陽圧呼吸」で、睡眠時に鼻マスクを装着し、小型の装置から一定圧力をかけた空気を気道に送り、上気道を常に陽圧(4〜20cmH2O)に保つことで気道を広げ、無呼吸の発生を防ぐという治療法で、自宅で継続的に行うことができます。治療開始第一夜から無呼吸から開放され、快適な眠りが得られ、日中の眠気が改善したり、血圧が低下するなどの患者さんも多くいます。又、CPAPの装置は小型なので、旅行や出張に持っていくこともできます。
CPAP療法はSASと診断された患者さんが月に一度の通院で治療を続ける場合、健康保険の適用となっています。
中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の治療
まず原因となる脳疾患や心疾患自体の治療を行ないます。慢性心不全の患者さんでは約3〜4割と高頻度で睡眠中に周期的な呼吸運動の停止による無呼吸(チェーン・ストークス呼吸)、すなわち中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)を合併すると報告されています。
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy, HOT)により慢性心不全患者さんの睡眠の質や睡眠時無呼吸が改善し、充生度(QOL)が向上するとの研究報告に基き、2004年からニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類 ?。度以上で、無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上の場合には在宅酸素療法が保険適応となりました。
OSASの罹患率は、男性3.3%、女性0.5%で、人口の1.7%。SAS予備軍のいびきのある患者は、約5人に1人、つまり、日本に2000万人。この疾患の背景として、内臓脂肪蓄積型の上半身肥満、いわゆるメタボリックシンドロームとのかかわりの高いことが分かってきた。
SAS患者のメタボリックシンドローム合併率とそのオッズ比は、男性が49.5%で、オッズ比が3.5、女性が32%で、オッズ比が6.6 と明らかに頻度が高い。
SASの治療としては、CPAP(持続陽圧呼吸:Continuous Positive Airway Pressure)療法が保険適応されており、その装置は現在6万台ほど使われている。自己負担額は、3割負担の場合、月々5,000円程度です。
問診(スクリーニング)
・日中の眠気の程度、いびき、耳鼻科的疾患等の合併症、生活習慣などに関して、問診を行う。
・ベッドパートナー同席が望ましい。
・昼間の眠気の評価には、Epworthの眠気テスト(図)等が用いられる。
どういうわけか、SAS は男性に多いようです。案外調べてみると見つかることが多い感触を持っています。^^v
画像:上:CPAP http://www.sleep.or.jp/cpap/auto.html Orz〜
これは、うっとうしいっておっしゃる方もありますが慣れるまで少しだけ辛抱が必要かな。^^
下:Epworthの眠気テスト
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