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内科ではこの不明熱の診断に苦慮しますね ^^;v
先日も抗生剤(セフェム+ミノマイシン)不応性の spike fever の方がおられ、CRP 16, WBC >1万、異型リンパ球(ー)、focus unclear で、急性前立腺炎でもないし、abscess (膿瘍)なんてどこにもないし、血培も心エコーも異常ないし、EBvirus,CMV virus もひっからないし、ツ反は陰性、画像にて、腹部に multiple lymphadenopathy が認められるも、癒合なく、痛みなく、LDH 正常、s-IL-2 receptor 軽度上昇、ferritin 軽度上昇、皮疹なし、ANF(-)、CH50 やや高値、P-ANCA(-) 、血中ADA やや高値、クオンティフェロン正常。食欲もあるし熱の割にはお元気で、NSAID のみで熱に対応してました。
一般に不明熱は、3週間以上続くことが定義されていますが、臨床的には充分不明熱でした。鑑別には、1)感染症 2)悪性疾患(とくに悪性リンパ腫)3)膠原病(血管炎、PMR/TA、成人発症 Still's disease、、、) を考えました。
1)は非常にデータからは考えにくい。2)もデータ、ならびに画像的にも考えにくい。3)も特異的な所見に乏しい。。。上級の専門家にお尋ねしたところ、やはり、1)か3)かだろう。。。って。悪性リンパ腫で高熱は出てもふつうは CRP 陰性のことが多いらしい。Adult onset Still's disease なら、ステロイド中等度以上必要なんですが、感染が否定できないならリスク高い。感染症の中で、Tb(結核)、非結核性抗酸菌症は否定できない。。。わたしは、ツ反(ー)、クオンティフェロン(ー)から、否定的に考え、腹部リンパ節生検なんて野蛮なこと(^^;)しなくてもできることをしたかったので、たまたま「亜急性壊死性リンパ節炎は考えられませんか?」と尋ねたところ、「普通は頚部リンパ節腫脹が来ますが、腹部リンパ節の報告もあります。」とのこと!しかも、そうならば、たいていは、ハイドロコートン100mg の1回投与のみでドラスティックに奏効しますとのこと♪ステロイドのその程度の量(プレドニン換算で25mg)を1回投与なら、たとえ他の疾患でも悪さはしないし、一時的に効いてもいずれはそれじゃなければ熱は出てくると考え、治療的診断に踏み切りました。患者さんには、以下の文献をお渡しし、以上の考えをお話し、IC(informed consent:「知らされた上での合意」の意)も得られたためトライ!なんと、その後10日以上経ちますが、うそみたいにぴたっと下熱したまま♪ 腹部リンパ節腫脹も軽快しており、CRP (+-) と、他の疾患では考えられない経過をたどっています。^^v
亜急性壊死性リンパ節炎は、原因不明で、今までは若い方の頚部リンパ節腫脹+発熱のケースは経験していますが、、、中年男性の方でしかも腹部リンパ節は、わたしはヴァージンケースです。もうしばらく経過観察が必要ですが、レアケースだから学会発表するつもりです。^^
追記(2007.09.18.):下熱後2週間くらいして、手足の皮膚の落屑が診られるようになりました。薬剤アレルギーだった可能性が濃厚と考えています。詳しく書いてませんでしたが、発熱、CRP 4位、やや膿尿にて、ジギタールでは前立腺の圧痛(±)でしたが、前立腺炎も疑って、、、ニューキノロンのオゼックスを処方したんですが、、、皮疹が出現し熱も続き、CRPも高値にて入院精査としてました。ニューキノロンのアレルギーはあると当然考え、オゼックスは中止、抗生剤はその系統以外のもの(上記)に切り替え、皮疹に対してはネオファーゲンの注射にて消失してたんですけどね。。。
熱の割にけろっとしてるときって、感染症以外のものの可能性大ですね。その中にはアレルギーを含めて考えておくべきであり、このケースの場合、鑑別には想定してましたので、、、ただ、ステロイド1回投与だけでピタッと熱が出なくなっちゃうってのが、、、ま、抗生剤に不応性だと思われたときすべての抗生剤は中止して確か3〜4日以上経過してた時点に使ったんですけどね、、、前日まで39℃台の熱が出てたのがうそのように雲散霧消してしまったのは、、、薬剤アレルギーだけにしては経験上珍しいのですが。。。薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST)もチェックしましたが、3剤とも(-)でした。これは(-)でも否定はできないことが結構あるんですが。
「不 明 熱 Fever of unknown origin
[要 旨] 古典的不明熱の原因として多いのは,感染症,非感染性炎症性疾患(膠原病や血管炎症候群),悪性腫瘍である。しかし,約 30 % は診断が未定に終わる。診断のため,十分な医療面接,身体診察を反復する。検査として,血液培養,超音波検査,CT 検査など侵襲の小さい検査は早期に行う。得られた所見に応じて病変部位を狙った検査を追加し,診断を確定する。原因疾患のリストを参考にし,丁寧に鑑別診断を進める。病変部位を絞れない場合,ガリウムシンチ,骨髄生検,肝生検などが有用である。肝生検で肉芽腫がみられる場合,さらに鑑別が必要である。非ホジキンリンパ腫の診断は時に困難であり,特に intravascular lymphoma の診断が困難である。成人スチル病などでは特徴的所見が少ない。診断基準を参考にしつつ他の疾患を除外するための検査が適切な範囲で必要である。診断未定の場合は比較的予後良好といわれるが,新たな所見がみられないか,経験的治療に踏み切らざるをえないか,注意深い経過観察が必要である。
■不明熱とは
Petersdorf らによる古典的な不明熱の定義は,「38.3 度以上の発熱が何度か認められる状態が 3週間を超えて続き,1 週間の入院精査でも原因が不明のもの」 である。3 週間以上というのは,急性一過性のウイルス感染症を除外するための基準である。また,38.3 度というのは口腔内の温度であり,腋窩温度であれば 0.3?0.5 度低い体温に相当する。これは 1961 年の報告であり,このように定義された不明熱の原因疾患のリストは,長年にわたり診断に貢献してきた。しかしながら医療技術の進歩に伴い,原因不明の発熱も臨床状況によっていくつかに区別されるようになってきた。すなわち,
Petersdorf らの定義に基づく古典的不明熱,好中球減少状態での不明熱,院内発症の不明熱,HIV 感染患者にみられる不明熱,である。古典的不明熱は従来の定義とほぼ一致するが,入院から外来診療への重点の移行に伴い,十分な検索がなされていれば 1 週間の入院は不明熱と分類する上で必要とされなくなった。
この稿では不明熱として,古典的不明熱の問題を取り上げる。従来,このような不明熱をきたす疾患として,感染症,非感染性炎症(膠原病や血管炎),悪性腫瘍が多いとされてきた(表1)。このような傾向は,最近に到るまで同様でありそれぞれ不明熱の原因の 10?30 % を占めている。また精力的な検索にかかわらず原因が不明の場合が1990 年代でも 30 % 存在する1)。このような不明熱の原因疾患について国内からも報告されているが,ほぼ同様である3)4)。
■医療面接のポイント
医療面接では可能性のある疾患を念頭においた病歴の聴取を行うが,review of systems が有用であろう。全身症状のほかに,頭頸部,胸部,腹部,泌尿生殖器,四肢関節,神経系などの症状の有無を系統的に確認する。また既往歴,旅行歴,最近の薬剤の服用歴,職業に気をつける。海外旅行歴は腸チフス,マラリア,アメーバ性肝膿瘍などと関連する。薬剤の服用歴では健康食品や漢方薬を含めて病院で処方される薬品以外の服用も確認する。発熱時に使用している薬剤があれば,これを中止する。薬剤性の発熱であれば通常 24 時間以内,遅くとも 72 時間以内に下熱する。
しばしば診断がつかないまま発熱が継続し,患者が消耗して検査ばかりが重なると,患者・患者家族と医師の関係に危機が訪れる。これを克服するためにも,時間と回数をかけた医療面接を通じお互いの考えや思いを共有しておく必要がある。
10 ガイドライン2005/2006
表1 不明熱の原因疾患
感染症 関節リウマチ
結核(粟粒結核,肺外結核など) 反応性関節炎
感染性心内膜炎 皮膚筋炎・多発筋炎
肝膿瘍,骨盤内膿瘍,その他の腹腔内膿瘍,膿胸 ベーチェット病
腎盂腎炎,前立腺炎 抗リン脂質抗体症候群
骨髄炎 クローン病
EB, CMV, HIV 感染症 サルコイドーシス
単純ヘルペス脳炎
歯根膿瘍 悪性腫瘍
偽膜性腸炎 非ホジキンリンパ腫
クリプトコッカス症 ホジキン病
骨髄異形成症候群
非感染性炎症(膠原病・血管炎症候群など) 肺癌,乳癌,肝臓癌,胃癌,膵癌,腎癌,
成人スチル病 卵巣癌,大腸癌
リウマチ性多発筋痛症・側頭動脈炎 原発不明腺癌
大動脈炎症候群
多発動脈炎 その他
クリオグロブリン血症 薬剤性
ウェゲナー肉芽腫症 Factitious fever
アレルギー性肉芽腫性血管炎 深部静脈血栓症・肺塞栓
過敏性血管炎 亜急性壊死性リンパ節炎
シェーグレン症候群 亜急性甲状腺炎
全身性エリテマトーデス 特発性好酸球増多症
・・・」
途中略してますが、、、ステロイドの1回投与であれば、感染症が隠れていても(かなりその確率は低いと考えられる症例において考えるべきだと思われますが)まずリスクが高まるとも考えられないので試みる価値があると考えました。^^v
画像:上:不明熱の分類
下:不明熱の原因
http://www.med.juntendo.ac.jp/jundemo/graduate/laboratory/labo/sogo_shinryo/k4.html
「年間で平均30例の不明熱患者が入院してきており、原因検索を行っています。」
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