現在関節リウマチ(RA)に対する生物学的製剤は7種類ありますが、2010年7月に承認されてるアバタセプト(Abatacept:商品名:オレンシア)は、そのなかでも免疫異常が起きていると考えられている上流に働くバイオ製剤です。『T細胞選択的共刺激調節薬』って言う長ったらしい名前がなかなか覚えられないわたしですが ^^;...この名前の通りの作用機序からして、RAに特化してるとは思われないお話は以前の記事にアップしてますが…^^...じっさいに、シェーグレン症候群出の治験が始まってて有効な模様のようです☆
「ヘルパーT細胞の活性化(IL-2産生)には、抗原提示細胞のMHCクラスII分子と抗原ペプチドにより、ヘルパーT細胞のTCR・CD3複合体が、抗原特異的に刺激されること(シグナル1)と、抗原提示細胞の補助刺激分子(インテグリンリガンド、CD80/CD86)により、ヘルパーT細胞の共刺激分子(副刺激分子、補助受容体あるいはインテグリンという。CD28)が、抗原非特異的に刺激されること(シグナル2:共刺激シグナル:補助刺激シグナルともいう)が、必要である。すなわち、T細胞に抗原認識のシグナル1のみが伝わり、シグナル2が伝えられないと、T細胞は活性化されないだけでなく、その抗原に対して応答しない免疫寛容状態になる。一方、シグナル2にはT細胞表面のCD152(ヒト細胞傷害性Tリンパ球すなわちCTL関連抗原4=CTLA-4)が、抗原提示細胞表面のCD80/CD86と結合すると、ヘルパーT細胞の免疫反応(IL-2産生)を抑制することが知られている。すなわち、CD152(CTLA-4)は、CD28に拮抗してT細胞の活性化を抑制する負のシグナルを伝達する分子である。アバタセプトはこのシグナル2の系を抑制する免疫抑制剤ということになる。本剤は、上記のようにT細胞の活性化に必要とされるCD80/CD86 リガンドに高親和性(*CD28よりも親和性が高いってこと!!)をもって結合し、その作用を抑える。すなわち、T細胞の活性化における CD80/CD86:CD28同時刺激シグナルを選択的に調節する薬剤分類に属した最初の免疫抑制剤であり、リウマチ様関節炎(RA)治療薬であるとされている。すなわち、T細胞副刺激モジュレーター(T-cell costimulation modulator)としての役割があり、T細胞機能を抑制する。適応はリウマチ様関節炎の治療である。他にも乾癬(psoriasis)やその他の自己免疫疾患の治療薬になりうる可能性がある。その免疫抑制作用はTNFα阻害薬より強力だといわれている。
アバタセプトは1回量2mg/kgまたは10 mg/kgを毎月1回靜注する。アバタセプト単独投与の効果は最初、抗リウマチ薬が奏効しない活動性の早期RA患者を対象とした第2相予備試験でその有効性が認められた。アバタセプトの有効用量は2mg/kg群と10 mg/kg群の2種の投与量比較では10mg/kg群にあるとされた。その後のプラセボ対照比較試験では、メソトレキサート(MTX)療法にもかかわらず活動性のRA患者を対象として、アバタセプト(10 mg/kg)+エタネルセプト群とプラセボ+エタネルセプト群が比較され、前者で有効性が高かったが、1年後の有害事象も高いことが判明した。
アバタセプトの副作用には靜注時のアレルギー反応やその後の免疫抑制に伴う感染症がある。現在のところ、リウマチ様関節炎に対して有害事象も考えるとアバタセプトとエタネルセプト(抗TNF抗体)との併用療法は推奨されない。」
「抗原提示細胞は、単に生体にとって異物である外来性抗原を貪食して除去するだけでなく、抗原の侵入を感知してリンパ球へ情報を伝えるシステムとして働いている。抗原提示細胞内には抗原を加水分解する酵素が存在し、外因性抗原の分解産物であるペプチドは主要組織適合遺伝子複合体 (major histocompatibility complex, MHC) クラスII分子により細胞表面へ提示される。
一方、内因性抗原の提示機構も知られており、MHCクラスI分子により提示が行われる。この機構は抗原提示細胞に限らず赤血球等の一部の細胞を除いて広く全身の細胞に備わっており、異物を提示している細胞は細胞障害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte, CTL) によって細胞死へと導かれる。
これらの外因性及び内因性抗原の提示を抗原提示と呼ぶ。抗原提示により活性化したT細胞は細胞性免疫及び液性免疫の機構に関与する。」
CD4 x クラス II=CD8 x クラス I
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ヘルパー キラー
MHCクラスII分子。
α鎖とβ鎖からなり、
それぞれ2つの細胞外領域および膜貫通領域、細胞内領域からなる。
*MHCの遺伝子座はヒトでは第6染色体
「MHCクラスII分子は、マクロファージや樹状細胞、活性化T細胞、B細胞などの抗原提示細胞を含め、限られた細胞にのみ発現している。クラスII分子はα鎖とβ鎖の2つの重合体であり、それぞれ2つの細胞外領域および膜貫通領域、細胞内領域からなる。MHCクラスII分子はヒトではHLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPの3種類があるが、DRのβ鎖は2種類あることが多く、これがDRα鎖と結合するためDR分子は2種類あることになる。つまり、ヒトでは4種類のMHCクラスII分子をもつことが多い。マウスMHCクラスII分子にはH-2A、H-2Eの2種類がある。
エンドサイトーシスにより抗原提示細胞に取り込まれた外来抗原は、抗原提示細胞内のエンドソームでタンパク分解酵素により消化され、ペプチド断片に分解される。MHCクラスII分子に結合するペプチドはクラスI分子に結合するペプチドよりも長く、15〜24アミノ酸程度である。ペプチド断片はその後CPL (compartment for peptide loading) と呼ばれる小胞に移動する。小胞体 (ER) で合成されたMHCクラスIIα鎖とβ鎖はゴルジ体を通ってCPL内に移動し、このCPL内でペプチドとMHCクラスII複合体が生成される。そして細胞表面に発現し、CD4陽性T細胞に抗原を提示して活性化させる。活性化したCD4陽性細胞は細胞傷害性T細胞やB細胞、その他の免疫細胞を活性化して異物を攻撃する。」
「【薬効薬理】
1. 作用機序 アバタセプトは抗原提示細胞表面のCD80/CD86に結合することでCD28を介した共刺激シグナルを阻害する。その結果、関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化及びサイトカイン産生を抑制し、さらに他の免疫細胞の活性化あるいは関節中の結合組織細胞の活性化によるマトリックスメタロプロテアーゼ、炎症性メディエーターの産生を抑制すると考えられる。
2. 薬理作用 アバタセプトはin vitroにおいて抗原特異的なナイーブT細胞及びメモリーT細胞の増殖を減弱させ、IL-2、TNF-α及びIFN-γなどの炎症性サイトカインの産生を抑制した。また、コラーゲン誘発関節炎ラットにおいて、病態の進行、抗コラーゲン抗体の産生及び関節破壊を抑制した。」
で…再掲した理由ですが…共刺激(抗原提示されることと=抗原ペプチドア嵌り込むHLAを持っている疾患感受性のある個体に、それを受容するTCRとの結合がシグナル1)とすると、シグナル2と呼ばれる共刺激があって初めて、T細胞は提示されたペプチドを異物として認識し免疫反応のスイッチが入れられちゃうわけで…そのシグナル2が入らない場合は、アナジー(免疫寛容状態)になっちゃうと理解してるわけ…ならば、一度免疫寛容になったリンパ球が再び免疫寛容の破綻を起こしちゃうからオレンシアは継続されなきゃいけないってことなのよ…?...一度アナジーになったらばずずっとその状態が続くとわたしゃ理解してたものだから...そこが解せない…^^;…
「不応答性(アナジー)
T細胞が抗原提示細胞と遭遇し、十分に活性化し増殖やサイトカイン産生するためにT細胞受容体からの信号だけでは不十分と考えられており、CD80やCD86などの補助シグナル分子とT細胞上に発現するCD28分子との会合が必要であると考えられている。逆に補助シグナルが欠如した場合にはT細胞に抗原特異的な不応答性(アナジー)が誘導される。」
でね...移植免疫の拒絶反応の抑制にも使えそうでしょ?寡聞にして聞いたことないけど…^^;…
ま、それはともかく、このバイオは使ってれば使ってるほど効きが良くなってくると言われてる…たぶん、免疫寛容が強化されるからじゃないのかなって思っちゃう…^^…そもそも…T細胞ってのも生まれては死にの繰り返しをしてるんだろうか知らん?そうなら、継続的にアナジーにさせなきゃいけないことも分かるんだけど…体内で自己と非自己を認識させる臓器の胸腺なんて、とっくに途中からはその働きを終えて退化してるんですよね…ってことは、すでに自己抗原に対しては免疫寛容を持ったT細胞しか生き残ってないってことを意味してるはず...同様に考えれば、人工的にせよ、後天的にアナジーを学習させたT細胞(ヘルパーT細胞)になるはずだと考えたいわけ…but...この薬が効いた症例で中断できたってな話はほとんど聞かない…それが謎 ^^;…
また、アルギニンがPAD4という酵素によってシトルリン化されるともともと体内の蛋白構成成分でないアミノ酸に変わることで蛋白の立体構造が変わることで抗原性がもたらされ、それに対する抗体として抗CCP抗体ってのが作られ、そいつが関節滑膜表面でもシトルリン化された部分に抗原抗体反応を起こして炎症が起こるという風に考えられてる…but…たしか、関節をシトルリン化してそこに抗CCP抗体(ACPA)を注入しても持続的な関節炎は惹起されないとも言われてる。だから、ACPAは炎症惹起性自己抗体ではないと…
でも、明らかにACPAが高い症例ほど関節破壊の進行とその程度は相関するとも言われ、炎症の発症する数年前からACPAが産生されてることから、この抗体が陽性の場合、RAがその後発症する可能性が大であると考えられているわけ…してみると、ヘルパーT細胞がシトルリン化されたペプチドを異物と認識して、B細胞にそれに対する抗体である抗CCP抗体を作らせ、かつ、細胞性免疫として滑膜細胞上のシトルリン化された部分に対する細胞性免疫機序(アレルギー4型?)も起こってるはずであり、ACPAの注入だけで関節炎が惹起されなかったからと言って、ACPAが病因原性を持ってないとはすぐに言えないとわたしゃ思うわけ…^^
また、ACPA産生に、タバコが誘因であるとまことしやかな説が流れてるんだけど...これもわたしゃ眉唾と思ってる…^^; シトルリン化するPAD酵素ってのはCa++イオンが必要で、細胞がストレスを受け傷んで細胞外からCaイオンが流入したときに活性化されるらしい☆ だからといって、タバコがそのストレスかと問われれば…わたしゃNo !!と言いたい衝動に駆られちゃう...だって、タバコを吸うのは断然男の方が多いし、いままでの日本人のどれだけの女性が吸ってましたでしょう?…それだけでもおかしいと思うし、ACPAが産生されたところで、関節内にシトルリン化された抗原がなきゃ何も起こらないわけですよ。そのシトルリン化を起こすPAD4の遺伝子がRAの方には多く、かつ、たしかそのジーンがX染色体に乗っかってるってな話(*確認したらば…第1染色体でしたぁ Orz…2014.03.04 訂正)だったと記憶してる…
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Peptidylarginine deiminase (PAD)
「PAD遺伝子はヒトでは第1染色体短腕に連鎖して存在している。」
けっきょく、関節滑膜でのストレスによってPAD4が活性化され、シトルリン化されたペプチドが異物として認識されるHLA-DR4を持ってる方に関節炎が起こってくるって筋書きだけで説明可能であり、タバコなんて持ち出してくる理由は乏しいと思うわけあるね…^^
いずれにせよ、このオレンシアの作用機序ってのはとっても面白いものですね♪
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