- 小腸の酵素あるいはP-糖タンパク質を介した相互作用
- 小腸上皮には薬物代謝酵素シトクロムP450 (CYP) の一種であるCYP3A4が発現している。シトクロムP450には様々な種類があるが、中でもCYP3A4は基質となる薬剤が非常に多い。ある種の薬剤あるいは食物がCYP3A4の活性を変化させることで相互作用が生じることが知られており、代表的なものとしてグレープフルーツジュースが挙げられる。グレープフルーツの中にはフラノクマリン類と呼ばれる化合物が含まれており、これが小腸上皮のCYP3A4の機能を阻害する。CYP3A4の基質としてカルシウム拮抗薬や免疫抑制剤であるシクロスポリン、ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるトリアゾラムなどが挙げられる。CYP3A4阻害によりこれらの基質薬物の血中移行量は増大し、作用の増強や副作用が生じる原因となる可能性がある。グレープフルーツジュースによるCYP3A4阻害作用は長時間にわたって示されるので、水の代わりにグレープフルーツジュースで薬を飲むような事をしなければ良いというものではなく、これらの基質薬物内服中はグレープフルーツジュースの摂取を避けなければならない。なお、グレープフルーツジュースによる代謝酵素阻害は経口投与した場合に限り発現するため、静脈内注射により直接血中に入れられた薬物に関してはこの相互作用は考えなくて良い。逆に抗結核薬のリファンピシンや健康食品であるセント・ジョーンズ・ワートはCYP3A4の発現誘導を引き起こすことが知られている。この場合、併用した基質薬物の血中濃度は減少し、薬効が十分に得られないことになる。また、小腸にはP-糖タンパク質と呼ばれる輸送タンパク質が存在している。これは小腸に限定して発現しているものではなく、血液脳関門や腎尿細管、癌細胞などにも見られる。小腸のP-糖タンパク質は一度吸収された薬物を小腸側に排出する役割を有するが、P-糖タンパク質の阻害により血中の基質薬物濃度は上昇する事になる。P-糖タンパク質の基質薬物としてシクロスポリンや強心薬のジゴキシンがある。前述したグレープフルーツジュースはCYP3A4のみならずP-糖タンパク質の機能をも阻害する事が知られており、一方リファンピシンやセント・ジョーンズ・ワートはP-糖タンパク質の発現を誘導する。」
- たとえば、DOACの代表であるプラザキサでは、
- http://heart-clinic.jp/index.php?プラザキサ より 引用 Orz〜
- 「減量を考慮し、慎重に投与する患者として、
◎中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者
◎70歳以上の患者
◎消化管出血の既往を有する患者
◎P-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者
プラザキサは、P−糖蛋白の基質であることから、P−糖蛋白阻害薬の併用で血中濃度が上昇することがあります。イトラコナゾールは禁忌となっています。ワソラン等を併用する時も併用開始から3日間は、2時間以上前にプラザキサを服用するように指導します。」
- この表にもありますが、シクロスポリンはこのP糖タンパクを阻害するので…
- MTxやらcsDMARDsの効きが悪くなったときシクロスポリンを追加したら効きやすくなって来る理由の一つはこの細胞内からの薬物の排出を行っているP糖タンパクの阻害作用と考えられているようなのね☆
- but...このシクロスポリンってお高い!!
- so...シクロスポリンに変わるもっと安価なP糖タンパク阻害剤を併用すればいいじゃん?って思うわけ ^^
- そんな化合物で安価なものがあればいいのにねぇ!!
- http://www.geocities.jp/yabu_rh/new/p_glycoprotein_I.html より 引用 Orz〜
- 「P糖蛋白質(p-gp:P-glycoprotein)
MDR1(multidrug resistance protein 1、P糖蛋白質)
P糖蛋白質は小腸粘膜の上皮細胞の細胞膜等に存在する輸送担体。P糖蛋白質は血液脳関門(BBB)、肝臓、腎臓にも存在している。
P糖蛋白質は基質となる一部の薬物の上皮細胞透過を制限している。
脳のP糖蛋白質
脳毛細血管内皮細胞に存在。
薬物の脳への移行を制限している。
阻害されると、脳内の薬物濃度が上昇する可能性がある。
したがって、血中濃度が上昇すれば重大な副作用をおこす可能性がある薬剤を投与するときは、添付文書のチェック、投薬を受ける人の身体的状況(腎機能ほか)がちぇっくされるべきである。
小腸のP糖蛋白質
薬物を消化管腔側に排出し、薬物の吸収を制限している。制限なく吸収すれば、沢山吸収するということになる。
阻害されると薬物の吸収が増大し、薬物の血中濃度が上昇する可能性がある。
例)ジゴシン(ジゴキシン)+ クラリス(クラリスロマイシン)
クラリスロマイシンにより、P糖蛋白質を介したジゴキシンの排泄が抑制され、ジゴキシンの血中濃度が上昇する。マクロライドのクラリスがP蛋白を阻害する。基質であるジゴキシンが吸収が上がり血中濃度も上昇する。
薬剤はおおよそ、腎臓か肝臓で排出しているので、ジゴキシンが体内から排出されにくくなる。結果として血中濃度が上昇する。
肝臓のP糖蛋白質
薬物を胆汁中に排出している。
阻害されると薬物の胆汁中への排出が減少し、薬物の血中濃度が上昇する可能性がある。
阻害されれば、排出されにくくなる。
腎臓のP糖蛋白質
薬物を尿細管腔側に排出している。排出しにくくなったら、下記の結果となる。
阻害されると薬物の尿細管への排出が減少し、薬物の血中濃度が上昇する可能性がある。
P糖蛋白質の基質となる薬剤
(末梢)
アレグラ(フェキソフェナジン)
ジゴシン(ジゴキシン)
ラニラピッド(メチルジゴキシン)
コルヒチン
リポバス(シンバスタチン)
リピトール(アトルバスタチン)
ジャヌビア/グラクティブ(シタグリプチン)
エクア(ビルダグリプチン)
ラジレス(アリスキレンフマル酸塩)
(中枢)
エバステル(エバスチン)
ジルテック(セチリジン塩酸塩)
アレロック(オロパタジン塩酸塩)
タリオン(ベポタスチンベシル酸塩)
アゼプチン(アゼラスチン塩酸塩)
クラリチン(ロラタジン)
アレグラ(フェキソフェナジン)
プリンペラン(メトクロプラミド)
ナウゼリン(ドンペリドン)
ジゴシン(ジゴキシン)
ロペミン(ロペラミド塩酸塩)
リスパダール(リスペリドン)
アーチスト(カルベジロール)
アセタノール(アセブトロール)
セレクトール(セリプロロール塩酸塩)
インデラル(プロプラノロール塩酸塩) 他
P糖蛋白質を阻害する薬剤
マクロライド系(クラリス他)
リピトール(アトルバスタチン)
サンディミュン/ネオーラル(シクロスポリン)
プログラフ(タクロリムス)
ジプレキサ(オランザピン)
ルーラン(ペロスピロン塩酸塩)
リスパダール(リスペリドン)
ワソラン(ベラパミル塩酸塩)
ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)
キニジン硫酸塩水和物
アンカロン(アミオダロン塩酸塩)
ノービア(リトナビル)
ビラセプト(ネルフィナビル)
インイラーゼ(サキナビル)
SSRI(ジェイゾロフト(セルトラリン)=パキシル(パロキセチン)>デプロメール・ルボックス(フルボキサミンマレイン酸塩)) など
ラクロリスム
シクロスポリン
ネルフィナビル
P糖蛋白質を誘導する薬剤・・・これらを服用しちゃうと...他の薬の効き目が低下してしまいます!!
有名なのは,抗結核剤のリファンピシンを併用するとステロイドの効き目がダダ下がってしまう!!
あと、ドクダミ茶飲んでる方の血圧が上がって来てたけど...ドクダミ茶の成分はP糖タンパク質を誘導するのやも知れん…^^
リファンピシン
カルバマゼピン
セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等 」
*薬剤耐性の予防にクラリスの少量投与ってのはどうなんでっしゃろねぇ?
呼吸器系では十分なる知識の蓄積があるはずだし…
ま、そもそも、マクロライド系はシクロポリンと親戚だったはずだし…
で、あと、ふつうの細胞(免疫系も含めた)にもP糖タンパクってあるや否や?
調べる限り不明…but…がん細胞に誘導されるのであれば、たいていの細胞にも同様のメカニズムは働いていると思えるのですけどね…?
P-gpは細胞膜上にあり、抗がん剤の細胞外排出などに寄与する。
「1976年に、多剤耐性関与たんぱく質としてがん細胞から分離された。その後、消化管上皮細胞の管腔側膜に局在することが確認され、血液脳関門、血液精巣関門、血液胎盤関門にも存在したことから、生体異物への暴露への防御機能を担う重要なたんぱく質との認識がなされるようになった。」
「P糖タンパク質(P-glycoprotein, P-gp, Pgp)は、ABC輸送体の1つである。細胞膜上に存在し、細胞にとって悪い化合物を細胞外へ排泄する。P糖タンパク質は悪いものを体外へ出そうとするため、生体の解毒機構にかかわるタンパク質だといえる。
P糖タンパク質はATPの加水分解エネルギーを利用して能動輸送を行う。つまり、P糖タンパク質は、エネルギーを利用する、ポンプATPaseである。P糖タンパク質の「P」は、Permeability(透過性)から付けられた。P糖タンパク質が薬剤の透過性を変化させるためである。
P糖タンパク質は次のようにも呼ばれる。
・ABCB1(ATP-binding Cassette Sub-family B Member 1)
・MDR1(Multiple drug resistance 1)
P糖タンパク質は、次のようにいろんな場所に発現する。
- 腸(消化管上皮細胞の管腔側膜に局在)
- 肺
- 腎臓の近位尿細管
- 血液脳関門(の毛細血管内皮細胞)
- 血液精巣関門
- 血液胎盤関門
- がん細胞
P糖タンパク質の役割は毒性物質を排泄することであるため、それから連想すれば発現場所は予想できる。
基質
P糖タンパク質の基質は、比較的脂溶性の高いカチオン性物質である。しかし、その基質認識性は広い。P糖タンパク質によって排出される薬は次のようなものがある。
- 抗がん剤(ビンクリスチン、ビンブラスチンなど)
- 強心配糖体(ジゴキシン)
- 抗不整脈薬(キニジン、ベラパミル)
- 免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン)
- ニフェジピン(カルシウム拮抗薬)
- コルヒチン
- ステロイド
- 抗HIV薬
シクロスポリン、ニフェジピンンなどはP糖タンパク質によって小腸の管腔側に排出されやすい。
*so…P糖タンパクの基質であるかどうかも、よく言われるバイオアベイラビリティに関係するんでしょうよね ^^
P糖タンパク質の誘導
P糖タンパク質は、薬物によって誘導されるストレスタンパク質でもある。次のような薬によって誘導を受ける。
*アスピリン飲んだらP糖タンパク質が誘導される→体内に入る毒物が減る!!
ってことあるね ^^
健康を守るABCタンパク質
「ABC蛋白質ファミリーの発見
抗がん剤の発達によって、急性白血病、悪性リンパ腫などは治癒可能な病気となった。しかし、残念ながら多くの固形がんは抗がん剤に対して感受性が低い。また抗がん剤が治療当初は有効であっても、再発後に効かなくなってしまうことがしばしばある。しかも困ったことに、再発時には投与した抗がん剤に対してだけでなく治療には用いられていない作用機構や構造が異なる抗がん剤も効かなくなってしまうのである。これらの現象はがんの自然耐性あるいは獲得多剤耐性と呼ばれ、がんによる死亡の大半に関係している。MDR1遺伝子は、がん細胞の多剤耐性のメカニズムを解明し、克服する方法を見つけようとする研究の過程で発見された。
25年前ごろ、植田は日本で開発された抗がん剤であるマイトマイシンCおよびブレオマイシンのDNAに対する作用機構を研究していた。ちょうどその頃、米国国立がん研究所のPastan博士が「がんの多剤耐性に関与する遺伝子を単離する」プロジェクトのために研究者を探していることを知り、幸運にもそれに参加する機会を得た。Pastan博士の研究室では、多剤耐性を示すヒトがん細胞の樹立に成功し(2)、抗がん剤耐性度が増すにつれて染色体の一部が増幅していることが発見されていた(3)。植田は、多剤耐性を示す細胞で共通して増幅している染色体領域を手がかりに、多剤耐性がん細胞で過剰発現している遺伝子の全長cDNAの単離することに成功した(4, 5)。そして、その遺伝子を、多剤耐性multidrug resistanceにちなんでMDR1と名づけた。
塩基配列からMDR1遺伝子産物のアミノ酸配列を予想した結果、バクテリアがATP加水分解に依存してアミノ酸や糖などの栄養物を取り込むトランスポーターと似ていることが判明した。つまり、ATP加水分解に依存して低分子化合物を輸送する新しいタイプのトランスポーターファミリーがヒトにも存在することが明らかになったのである。多くの生物のゲノムの全塩基配列が決定され、地球上の多くの生物が50-100種類のABC蛋白質遺伝子を染色体上にもっていることが明らかになった。ABC蛋白質ファミリーは、生物界全体の遺伝子ファミリーとしては最も大きなもののひとつである。
・・・
薬の体内動態
生物は環境や食物中に含まれるさまざまな構造の脂溶性物質にさらされている。問題は、それら脂溶性物質の多くが動物にとって有害であるということである。それらの脂溶性化合物が体内に入らないようにするには、微生物のように高分子の脂溶性物質が透過しにくい細胞壁をもつか、それぞれの脂溶性化合物を高親和性で結合する排出ポンプを数多く用意するかの選択肢しかないだろう。しかし、多細胞動物は消化管を細胞壁で覆うわけにはいかない。また、何千、何万という数の脂溶性化合物を考えれば2番目の選択肢も不可能である。
そこで哺乳類がとった戦略がMDR1であったと考えられる。さまざまな構造の脂溶性化合物がμMオーダー以上の濃度で膜を通過しようとする時、消化管上皮細胞の管腔側膜に存在するMDR1がそれらを結合し排出するのである。低い濃度の場合は、P450酵素などその他の解毒機構などに任せればよい。そのかわりに高濃度の化合物に関しては驚異的と言えるほどさまざまの構造を認識し、基質として排出する(21)。