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原爆被爆経験をもつ広島で生まれ育った私が、子供の頃から関心を持っていた出来事。 「第二次世界大戦」「ナチス政権」「ユダヤ人」「アウシュビッツ」 小学生のとき初めて読んだ「アンネ・フランク」。 アンネの父、オットー・フランクが書いた、アンネの生い立ちから隠れ家での生活、強制収容所へ送られるまでのすべてを記した本。 当時の私に衝撃的だったのは、アムステルダムでの隠れ家生活。 急な階段の途中にある、一見本棚の回転扉の向こうにある屋根裏部屋での暮らし。しかも2家族共同生活。 「そこに」人が居ることを悟られてはいけないので、大きな音はもちろん出せずトイレの水も流せない。生活臭は出してはいけない。窓も開けられない・・・。 想像を絶する毎日。それでも、ナチスに捕まって強制収容所へ行くよりはまし。 わずか15歳でこの世を去ったアンネが、どんな悲惨な境遇の中でも希望を捨てず、明るく振舞い、周りを励まし、強く賢く生きる姿が幼心にとても強烈に響いた。 その後、関連の本を読んだり、映画を観たりして、自分なりにこの戦争の、ユダヤ人大量虐殺へ至るまでの経緯を理解したつもりだった。 「シンドラーのリスト」「戦場のピアニアスト」・・・ どれも、ユダヤ人の悲劇を描いた作品。虐殺シーンなどかなりむごい場面もたくさんあった。 でも、今まで知ってるつもりでそれほど詳しく調べたことはなかった人物。アドルフ・ヒトラー。 始まりは1人だったにせよ、それに賛同する人間が出てこなければ何もできない。 あれほど大きな組織を操っていたということは、きっと底知れない魅力のある人間なのだろう。そうでなければ誰もついていくはずがない。 ヒトラーの魅力ってなに? ということで、今回の映画「ヒトラー」を見てみる気になった。この映画は今までに描かれなかった、ヒトラー自身の人間性を描いていたから。 1942年末〜45年4月のヒトラー自殺時まで、ヒトラーの秘書を務めた「トラウデル・ユンゲ(2002年没)」の話から始まる。 「若かったからというのは言い訳にはならない。もっと目を見開いて周りのことを見ていれば気付けたはず。今でも後悔している。」 1942年11月、ヒトラー初め要人達が住む地下要塞(狼の巣)に、6人の秘書候補者が訪れる。 その中の1人、ユンゲは、ひと目でヒトラーに気に入られ、即採用が決まった。 女性に対して、この上なく紳士的なヒトラー総統。初めはガチガチに緊張していた彼女も、 ヒトラーの優しい口調、紳士的な態度に安心し、採用を素直に喜ぶ。 1942年といえば、すでに大々的なユダヤ人迫害、大量虐殺が行われていた時期。 それを命令した張本人の周りは、こんなにも穏やかな時間が流れていたとは・・・。これは、「知らなかった。」という言葉が出てきても仕方のない状況。 実際、終戦後もこの秘書は、なんの罪にも問われていない。 ただ、数百万人を殺した独裁者の側にいて、何も知らず、なに不自由ない幸せな暮らしをしていただけ・・・。 穏やかな場面は冒頭の部分だけ。 時は流れ、1945年4月ベルリン。すでに戦局はドイツにとってかなり厳しいものとなっていた。 迫りくるソ連軍の攻撃に、ヒトラーの側近達も負け感じざるを得ない状況に。 すでに冷静な判断を失いつつあったヒトラーは、最後の最後までドイツ軍の巻き返しを唱える。半狂乱でまくしたてられれば、誰も言い返すことなどできない。 ヒトラーの命令を無視し、早々にベルリンから脱出する者も。 みな、「一刻も早くここから逃げ出したい。」という気持ちと、「最後まで総統を信じ命尽きるまでお側に仕える」という想いが入り乱れる。 極限の中での人間のリアルな感情が非常に細かく丁寧に描かれている。 ヒトラーの側近達の中でも、常に客観的に冷静に判断できる者もたくさん居たのがある意味驚いた。 やはり、みんな頭はいい人達の集まりなんだな・・と。 後のない現状を一番よくわかっていたのは、ヒトラー本人だったし。 それでも皆総統には、「大丈夫。ドイツは負けない。」と言ってほしい。頭ではわかっていても、敗戦など考えられない。ましてや全面降伏などもってのほか。 そうやって無駄な抵抗を続けている間、犠牲になるのは国民たち。 すでに街は火の海。瓦礫の山。そして死体の山・・・。 10歳にもならない子供たちまで、「ハイルヒトラー!」の掛け声のもと、戦車に向かって飛び込んで行く。名誉の戦死をするために。 敗戦する国の最期はどこも同じなんだろうけど、まさに終戦直前の日本の姿。 もっと早く負けを認めていたら・・・無駄に失われる命が少しは救われたのに。。 #余談だけど、8月12日にも特攻隊出撃していたのね。3日後に終戦になるとも知らず・・・。 普段のヒトラー自身は、とても穏やかな人物に見えた。 女性や子供、動物に対して特に愛情あふれ、この上なく優しく紳士的。 それでも、裏切り者に対しての制裁は全く容赦なし。 18年間そばにいた愛人(自殺する前日に結婚)の妹の旦那が、ヒトラーの命令に背き脱走したことを知り、射殺を命令。 妻の懇願にも一寸の迷いもなかった。「私の意思だ。」その一言ですべてが決まる。絶対権力。 思わず目を覆ったのは、野戦病院での風景。ひっきりなしに聞こえる絶叫。麻酔などあるワケもなく、負傷した手足をそのままのこぎりで切り落とす・・・。 想像しただけで血の気が引く。。 なんでそこまでして生かされなきゃいけないの?いっそ殺してもらったほうが随分楽になるのに。。 そんな極限の中で、治療にあたる医師や看護師たち。本当に素晴らしい。 技術だけでなく、精神面でも本当の人格者。 すでに敵地と化した危険地帯にある病院へ、残った医療品を探しに行く医師。 そこで目にしたものは、大勢の置き去りにされた老人患者たち・・・。 生き地獄。 ユダヤ人の大量虐殺ばかり有名になっているけど、ヒトラーを信じきっていたドイツ国民達も最期はヒトラーの犠牲になっていたことを改めて知った。 側近達が何度も「国民だけは助けてください。」と懇願したにもかかわらず、 「弱い人間は死ぬしかない。それはドイツ国民だろうと変わらない。私は強制した覚えはない。自らが選んだことだ。」 と切り捨てる。 これにはさすがに総統を崇拝していた人々も一気に士気を失った。「国民」の中には自分達の家族も含まれるのだから。 終戦後生き残ったとしても、裁判で不利な立場になるであろう人物は次々と自害した。ヒトラーを先頭に。 つくづく卑怯だと思う。死ぬほど楽な選択はないもんね。死ねずに苦しんでる人達はたくさんいるのに。 今のこの時代にこの作品はとても重要な意味のあるものだと思う。 独裁者だって一人の人間。それを崇拝する者たちも、常識的な判断のできる普通の人間。 これからだって、こうゆう人物が現れることは限りなくあり得る。 一人一人が自分の意思を持って、なにが正しいのかを冷静に判断できる強さが必要なのかな。。 実は「強い信念」こそ、時に怖ろしい思い方になるんだなーと痛感させられた。 |

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