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「ええい!言い訳をするな!餓鬼がこの私にそのような口をきいて良いと思っておるのか!?」
突如、怒鳴り始める目の前の男。
勢いよく叩かれた頬がじんじんと痛む。
私はすぐ起き上がり、努めて笑顔で言い返す。
「あら、貴殿こそ私にそのような口をきいてよろしいと思っていらっしゃるの?」
「なんだと!!まだ口答えをするか!!ふざけるなよ!!」
「ふざけてなんかないですよ。この大事な会議でふざける大馬鹿者など見たこともございませんわ。」
「・・・もう腹が立ったぞ!餓鬼だからといってその態度が見過ごされるほど甘い世界ではないのだよ!目に物をみせてやる!!」
太い身体を震わせて叫ぶ男に、私を除く周りの貴族達もたじたじだ。
「・・・ほう、目に物をみせてやる・・・・?うふふ、面白いことをおっしゃいますのねビルトン男爵殿。」
「面白い!?・・・私は真面目にいっているのだぞ!!面白い要素などどこにもないだろうが!!」
「私が言っているのは貴殿の発言だけじゃありませんよ。貴殿の態度を面白いといっているのです。」
作っていた笑顔を一瞬で崩すと男は怯えたような顔になる。
「・・・・・忘れたとは言わせませんよ。先ほどの無礼なお言葉と振る舞いはきちんと頂戴いたしましたからね。」
「・・・女王陛下、」
「あら、今更どうなさったの?先ほどみたく餓鬼とおっしゃればよろしいのに。」
「シャルルッテ女王陛下、」
「少し黙っていてちょうだいデュパッチ。・・・今、いいところなんだから。」
もしかして、先ほどから周りの貴族がたじたじなのは、彼ではなく私なのだろうか。
そんな気がする。
必死に止めようとするデュパッチを制して椅子から立ち上がる。
「・・・男爵風情が、平民より少し身分が上だからといって調子に乗らないことね。」
「じょ、女王陛下、」
「・・・何?私は今ビルトン男爵とお話しているのよ。邪魔しないでちょうだい。・・・それとも、貴殿も私とお話したいのかしら・・・・・・フィーテン伯爵?」
「い、いえ!とんでもございませぬ!」
邪魔なのを黙らせて改めて男に向き直る。
「今回の世界会議のために貴殿の席を用意したのは誰か、ご存知ですこと?」
「・・・・・じょ、女王陛下でございます。」
「そうよ。わざわざ貴殿のような低身分の者を呼んでさしあげたのよ。感謝される覚えはあっても罵倒される覚えはありませんわ。」
「・・・申し訳ございませぬ。先ほどは私もどうかしていました。」
「謝って許しを乞うぐらいなら最初から言わなければよろしいのに。低身分なうえに馬鹿ときては救いようがないですわね。うふふっ。」
横においてあるベルを静かに鳴らす。
「それでは皆様、本日の会議は以上とします。気分を損なわれた方がいましたら本当に申し訳ありませんわ。次の会議の予定は6ヶ月先です。それまで今回の課題を達成させるために頑張ってください。」
それだけ言って部屋を出る。
急いでついてくるデュパッチ。
「女王陛下!お待ちください!」
「・・・なんですの、あまり気分が良くないの。早急にお願いします。」
「頬をお見せください。先ほどビルトン男爵様に叩かれていたでしょう。」
まさかそのことに触れられるとは思ってなくて驚く。
私の頬を包むデュパッチの右手。
「・・・ありがとう。」
「いいえ。・・・それにしても、何故あのようになったのですか?私、最初のほうは見ていなかったので分かりませんが・・・。」
「・・・ビルトン男爵が軍資金を寄越せと言ってきたのよ。断ったら、今までヴィステーガには何億という金を貸してやったのだ。だから寄越せ、ですって。・・・笑っちゃうわね。」
「・・・それで、ビルトン男爵様の処分はどうなさるのですか?」
「味方につけますわ。」
「・・・味方?」
「私はさっき彼の弱みを握りましたわ。次からは彼が私の言うことに聞けないようにビルトン一族をこちらの支配下に置いてしまえばいいのよ。」
「・・・そうですね。」
冷たい湿布が頬に張り付く。
それがなんだかくすぐったくて微笑む。
デュパッチも笑ってくれた。
和やかな空気に、先ほどの疲れも癒されていくようだ。
「・・・・・・次はなんでしたっけ?」
「次はティディック伯爵のお屋敷へご挨拶に行きます。」
「・・・彼、少し苦手なのよねぇ・・・。」
溜め息を吐きながら長い長い廊下を歩く。
「ご挨拶が終わりましたら本日のスケジュールはなにもありませんよ。もうひとがんばりです。」
「・・・そうね。」
「お屋敷へ着いたらきっと食事もできますよ。」
「・・・そうね。」
1分1秒がとても長く感じる。
本日何度目とも知れない溜め息を吐きながらも足を進める。
進むしか、ない。
「・・・ん?」
「どうかなさいました?」
「・・・火薬の匂いがしませんか?」
「火薬?」
デュパッチの言葉に足を止めて匂いを嗅いでみる。
しかしデュパッチほど鼻がよくない私には分からない。
「・・・私には分からないわ。」
「そうですか・・・。じゃあ私の気のせいかもしれませんね。」
「いや、貴方の鼻はよく利くわ。調べてみる必要はありそうね。まだティディック伯爵への挨拶まで時間があるし、一応みておきましょうか。」
デュパッチのいうには、門のほうからしたらしい。
門には門兵がいるはず。もし何かあったとしても対処してくれるだろう。
しかし門兵を信頼しすぎても危ない。内部の裏切りが一番怖いのだ。
ドルン・・・・・・ッ!!!
「!?」
「お嬢様!」
二人で門のほうへ向かっていると、物凄い爆発音が響き渡った。
キャアと悲鳴が上がる。
まだ会議が終わったばかりでこの宮殿に残っていた者も多いはずだ。
ドレスなのも構わず急いで門へと向かった。
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ちょっと背景が分かりづらかったかも・・・(^^;
すいません。まじすいません。←
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