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宇和島の市役所から海岸沿いにすこし北へ行くと見返り橋がある。
ここは江戸時代、罪人を刑場まで連れて行く際、罪人が振り返ってもう二度と見れぬ街を見たことに由来する。
そのたもとに住吉小学校があり少し行くと坂の手前に点滅信号がある。
釣り人の私としては近場でよく釣れる場所として重宝している。
学校の前とすこし行ったガソリンタンクの横など夏は、スズキ、ホゴ、冬はアイナメ、その他ヒラメにキスなどよく釣れる場所である。
地元の人は、須賀川の河口で魚が泥くさいのでいやだという方もいらっしゃいますが、さして気にしない私には最高の場所だ。
スズキやヒラメは50センチオーバーが釣れる場所なのである。
しかし最近、埋め立てが進み悲しい限りであるがここに昔から女の幽霊が出るとうわさがあった。
ここの場所の釣りは夜釣り専門で夜8時ころから明け方までよく行っていた。
一度だけおかしなことがあったのを覚えている。
それは、初夏の夜だった。
夜9時ごろからガソリンタンクの横で釣りを始めた。
ここは道路と海の間にすこしだけの畑がありそこの端を陣取って釣っていた。
この日は全然当たりがなくサイキック青年団をウォークマンで聞きながらボーっと海を眺めていた。
12時すこしまわったころクーラーの飲み物を取ろうとクーラーの蓋に手をかけるとグニュっとした感触がした。
ビクッとして立ち上がった。
ライトで照らして見るとクーラーに10匹ほどの親指大のナメクジちゃんがウジウジと這い回っていた。
ヒエッとおもって周りをライトで照らすとそこには何百匹というナメクジちゃんがウジウジと蠢いていた。
足の踏み場もないとはこのことだ。
梅雨が上がったばかりでじめじめしているのでナメクジちゃんも元気だ。
これはだめだと思いこの場所をあきらめ荷物を片付けブヨとした足の感触に鳥肌を立てながら道路に戻り住吉小学校の端っこまで移動した。
ここは後ろを自動車が通るので仕掛けを投げるとき確認しなくてはいけないのが面倒なのである。
今日の潮は最高だと思っていたのだがここでも一向に当たりがない。
時たま浮きがクイクイと動くがその先がない。
竿を上げて見ると餌はしっかりとられている。
また、餌を付けて投げる。
こんなことをしばらく続けていると後ろからひんやりとした風がそよそよと吹いてきた。
ありがたい。
さっきまでのじめじめと汗ばむほどの体をひんやり冷やしてくれた。
さー、夜明けまでもう少しだ。一匹は釣るぞーと気合を入れ直し釣りを続けた。
するとまた背後から冷たい風が・・・
今度はそよそよではなく帽子が飛ぶかと思うほどの強さで吹いてきた。
それも、一瞬ではなく吹き続けている。
そのとき私の耳たぶを誰かが優しく撫で上げた。
ヒャッとなった私は後ろを振り向くとそこには誰もいない。
少し後ろで黄色い信号が点滅しているだけだった。
そしてさっきまで吹いていた風もピタッとやんでいる。
おかしいなっと思いつつ釣りを続けた。
するとまた後ろから冷たい風が吹き付けてきた。
今度は誰かが私の肩に手を乗せた。
おかしい、振り返ることができない。
体が動かないのである。
ヘッドフォンからはサイキック青年団の北野さんと竹内さんのトークが笑いと共に炸裂しているのに体は冷や汗でグショリと濡れてきている。
と、サイキック青年団の中の竹内さんの笑い声がレコードが飛ぶように繰り返し繰り返し「がははははは〜〜〜」と何度も何度も笑っている。
そのとき見返り橋の方から来た車のヘッドライトが私の左頬を照らした。
すると耳から聞こえていた竹内さんの高笑いがブツンという音と共に消え肩の手の感触も冷たい風も消えてしまった。
私は後ろを振り返ったがそこには黄色い点滅信号と薄暗い闇があるだけだった。
荷物をまとめ逃げるように車で家に帰った。
CDウォークマンはこの後、うんともすんともいわなくなりサイキックのCDを入れたまま車庫のガラクタ入れに今でも入っている。
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