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私が5,6歳の頃の話。
そのころ、私たち家族は道路から路地を少し入ったアパートの2階に住んでいた。
あれは夏が過ぎそろそろ虫の音が心地よいそんな頃だった。
母親のが台所で晩ご飯の後片付けをしていた。
6時からのガッチャマンのエンディング曲が聞こえてくる。
親父がテレビの前でヨーグルトに焼酎を混ぜて飲んで酔っ払っている。
(昔、銭湯に行くとヨーグルトという乳酸菌飲料があった)
外はもう薄暗くなり始めていた。
路地の先の道路あたりから「チリーン チリーン チリーン」と持鈴の音が聞こえてきた。
窓から覗いて見ると菅笠を被ったお遍路さんが一人立っていた。
私は「お遍路さんがいる」と母に言った。
「お金とお菓子を持って行ってあげなさい。」と母が言った。
「ハーイ」と私はお菓子とお金を持って階段を駆け下りた。
お遍路さんが行ってしまわないかと表を気にしながら急いで靴を履き玄関の戸を開け路地を走って道路に向かった。
すでに外は人の顔も見えにくいくらい薄暗くなっていた。
お遍路さんに「どうぞ」とお菓子とお金を差し出した。
そのとき菅笠をかぶったお遍路さんが「ありがとう」と前かがみでお菓子とお金を受け取とろうとした。その時、そのお遍路さんの顔が見えた。
女の人で顔が半分焼け爛れていた。
私は「ギャー」と叫んでお菓子とお金を投げ出し一目散に玄関に飛び込み母のいる二階へ駆け上がった。
母が「どうしたの」と聞いたので今あった事を話した。
すると母が「なんてことするの」と言って私をお遍路さんがいたところに連れて行った。
すでに日は暮れて真っ暗になっていた。
そこにはお遍路さんの姿はなかった。
そしてお菓子もお金もなかった。
今でもお遍路さんを見るたびに思い出す。
いくら幼かったとはいえ・・・・・
今でも私の家の前にはたまにお遍路さんがやってくる。
私は必ず施しをしている。
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