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もう20年も前の事だが、「中国拳法秘伝必殺鉄砂掌」という本を読んだことがある。
現在はどうか知らないが、当時は日本人が書いた蟷螂拳や太極拳、形意拳などの中国武術の解説書が結構発売されていた。
しかしそれら中国武術関係の本の多くは、素人目にみても内容的に疑わしいと言わざるをえないものがほとんどだった。
いや、疑わしいという表現は適切ではないかもしれない。
中国武術を解説しているのではなくて紹介していると解釈すれば特に疑問はおこらないかもしれない。
つまり内容的にはどの本もそのレベルに留まっていたということである。
しかし、龍清剛という人が書いた「中国拳法秘伝必殺鉄砂掌」は違った。
当時、僕が通っていた学校に偶然その本が置いてあったのだが、十代の男性によくありがちな強いものへの憧れから、何気なくその本を手にとって開いてみたのだった。
最初はただなんとなく内容をながめていた僕だったが、いつのまにかその本にのめり込んでいた。
そして別の日も何度も読み返していた。
一体その「中国拳法秘伝必殺鉄砂掌」は他の本と何が違うのか?
一言で言えば「生々しい」のである。
言い換えれば「経験した人でなければ書けない内容」ということである。
「達人でもないのに、自分が一方的に相手のパンチや蹴りを一発も受けないで勝とうと思うのは相手を板であると思っている思想に他ならないのである。ちなみに、タイ国のムエンタイ・ボクサーと一度闘ってみるとよい。私のいっていることが完全に立証されるであろう。彼らは常になぐられ蹴られて、その中を苦練して生き抜いてきたのであるから、その打たれ強さは想像を絶するものがある。これはムエンタイに限らずいかなる格闘技においても同様だ。ファイターと名がつく限り、バキバキ打たれても簡単にはくたばらないように鍛錬されているものである。高手でもない者が、ちょっと中国拳法のこむずかしいことがわかったという理由だけで、こうしたプロファイターを一発で倒せるという夢を見てはならない。(引用)」
また、この本では、他の武術や武道への非難が書かれていない。
極真空手の大山倍達や少林寺拳法の名手などにも触れられているのだが、それら武道家に対して尊敬の念が感じられる内容なのである。
鍛錬の様子や瓦割りの瞬間、また発勁打法の分解写真などが掲載されていて、そのどれもがこれまでに見たこともない独特のもので、到底、一朝一夕にできうるものではないことは素人目にもわかった。
本の装丁は、他の多くの中国武術解説書と何ら大差ないのだが、ひとたび本を開けばその内容は完全に一線を画する。
この世の中にはまさに星の数ほどの本がある。
正直、大抵は読んでも何の記憶にも残らないようなつまらない本が多い。
しかし、中には素晴らしい本物の本が埋もれている。
でもそれは開いて見てみないとわからない。
表紙だけを眺めていてもわからない。
先入観は人間の敵。
この先「中国拳法秘伝必殺鉄砂掌」以上に僕を感動させてくれるものは見つかるだろうか。
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はじめまして。
たまたま拝見しました。
中国武術に関しては、あれ以上の本は見つからないんじゃないでしょうか。そのお弟子さんが現在ご活躍中ですが、やはりすばらしいものです。一言で言えば『違う』のです。本物なのです。
2009/2/10(火) 午後 6:55 [ sasura ]