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cubeSP
無指向性スピーカーcubeSP技術情報
当社の製品(無指向性スピーカーcubeSP)の宣伝を兼ねて、マトリックス方式を用いた残響補強のご紹介をしてきましたが、もちんろんcubeSPの代わりに普通のスピーカーを用いても、実用上はまずまずの効果が得られます.

一般のスピーカーをサブ(差音成分再生)に用いた場合の配置のバリエーションのいくつかを下図に示します.

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メインのスピーカーの外側に配置


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少し手前側にサブのスピーカーを配置


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サブのスピーカーを後ろ向きに配置(壁面からの反射を利用)


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サブのスピーカーを受聴位置のほぼ真横に配置


前回ご紹介したアダプタ回路を用いて、差音成分のレベルを適切に調整しながら試してみれば、リスニングルームに適合したスピーカー配置がみつかるはずです.(差音成分レベルはサブのパワーアンプで調整してください)



マトリックス方式を用いた残響補強(その1:基本構成)
マトリックス方式を用いた残響補強(その2:ミキサー回路とCubeSPを用いた改良)
マトリックス方式を用いた残響補強(その3:残響補強の効果)
マトリックス方式を用いた残響補強(その4:ディレイの追加)
マトリックス方式を用いた残響補強(その5:リバーブ回路の追加)
マトリックス方式を用いた残響補強(その6:マトリックス・アダプタ回路)
マトリックス方式を用いた残響補強(その7:スピーカー配置のバリエーション)
無指向性スピーカーcubeSPのカタログ、外形図を公開しました
カタログ http://www.cepstrum.co.jp/products/cubesp/cubesp_catalog.pdf
外形図 http://www.cepstrum.co.jp/products/cubesp/cubesp_outline.pdf
cubeSP製品紹介ページ http://www.cepstrum.co.jp/products/cubesp/cubesp.html

業務用の製品ですので、いわゆるインターネット通販はおこなっておりません. お客様からのお問い合わせに対して個別に見積書を発行します. 個人のお客様に販売する場合も同様の個別対応となります.
マトリックス方式を用いた残響補強のためのアダプタの回路図を公開します.
このアダプタを使うと追加した差音成分(L-R, R-L)再生用スピーカーのレベルの調整がやりやすくなります.(サブのパワーアンプ側でレベル調整可能です)
ソースによってサブのスピーカーの最適な再生レベルが異なるので、こまかくレベル調整をするのが自然な残響感を得るコツです.

マトリックス・アダプタ回路図
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結線図
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回路は非常に単純で、差音生成用のトランスの前段にOPアンプのバッファを入れただけです.
中点電位の生成にわざわざレールスプリッタ TLE2426 を使っていますが、抵抗分割に変更しても問題ありません. 
出力コネクタが2つありますが、後段のパワーアンプで位相が反転する場合の位相合わせ用です.
入力段のスイッチはアッテネータです. 出力レベルが非常に高いCDプレーヤー等を接続した時に、トランスが飽和するのを防ぐためのものです.(S/N等のカタログ・スペックを稼ぐために、D/Aコンバータの5Vppの信号がそのまま出てくる製品があります)
長時間動作が必要な場合は、電源を9V(006P)から単三電池に変更してください. 使用しているOPアンプ NJM4556 は電源電圧±2Vでも動作するので、単三 x4 でも問題ないはずです.



何度も繰り返ししつこく書きますが、マトリックス方式を用いた残響補強が有効な音楽ソースはかなり限定されます.
いわゆるワンポイント・ステレオ・マイク収録的な録音スタイルで、部屋の残響成分(差音成分)がきちんと録音されたソースでなければ効果がありません. 一般的には、クラシック音楽やジャズのライブ録音の一部が相当します. ポピュラー系の音楽ソースは全滅です.

スピーカー・マトリックス方式の擬似4ch再生において、どのような音楽ソースでも効果が得られるかのようなことを言っているオーディオ・マニアや評論家がいますが、空耳の人なのでしょう.



マトリックス方式を用いた残響補強(その1:基本構成)
マトリックス方式を用いた残響補強(その2:ミキサー回路とCubeSPを用いた改良)
マトリックス方式を用いた残響補強(その3:残響補強の効果)
マトリックス方式を用いた残響補強(その4:ディレイの追加)
マトリックス方式を用いた残響補強(その5:リバーブ回路の追加)
マトリックス方式を用いた残響補強(その6:マトリックス・アダプタ回路)
マトリックス方式を用いた残響補強(その7:スピーカー配置のバリエーション)

cubeSP設計変更

業務多忙のため長い間cubeSPの開発を中断していましたが、設計を変更してようやく販売を開始しました. 実は使用しているドライバ(スピーカー・ユニット)の国内の流通の一時的な乱れの問題もあったのですが、それも解消してcubeSPの安定生産の目処がつきました.
当社のweb上の製品情報の更新は今しばらくお待ちください.

おもな変更点は下記のとおりです.

1.搭載ドライバ数(スピーカー・ユニット数)を5ヶから4ヶに変更
2.付属品の周波数特性補正用イコライザ(ハードウェア)の添付の取りやめ

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左:設計変更前(ドライバ5ヶ) 右:設計変更後(ドライバ4ヶ)



正六面体にドライバ(スピーカー・ユニット)5ヶ搭載では対称性が崩れるため、ドライバ4ヶに変更しました. いろいろ特性測定をおこなったのですが、ドライバ4ヶの方が水平面・垂直面ともに指向特性が優れている(無指向性に近い)ことが判明しました.
結局、指向性の良さ(無指向特性)はほとんど筐体の小ささで決まってしまっているので、ドライバの数を減らしても悪影響はまったくありませんでした.
筐体はこれ以上小さく出来ませんので、現時点ではこれが最善の設計です. これでも大型の正多面体無指向性スピーカーよりも良好な指向特性が得られます.
無指向性スピーカーの一般的特性として、低域の周波数特性は平坦になりません. 適切な周波数特性の補正が必要です.(下図はcubeSPの周波数特性測定例)
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低域の周波数特性の補正は特別なハードウェアを用いなくても、市販のグラフィックイコライザやフリーソフトを使えば十分であることが分かりました. 設定データは当社からご提供可能です.
グラフィックイコライザを用いる場合は、ラックマウント型の15バンドのものがちょうどピッタリの特性です.(下図はBehringer FBQ1502の補正設定時の特性例)
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ソフトウェアで周波数特性を補正する場合、Equalize APOが大変便利です. Windowsの標準のオーディオ・システムのプラグインのような形で動作して、録音時または再生時に実時間動作で周波数特性
の補正ができます.(下図はUSBオーディオ・インターフェースを用いて測定したEqualizer APOの補正特性実測例)
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ご紹介している開発中のインパルス・レスポンス計測プログラムでは、忘却係数を用いた移動平均処理(積分)で同期加算をおこなっています. 例えば忘却係数α=0.98とした場合、平均回数N=100とした単純移動平均フィルタと等価な特性になります.

忘却係数を用いた移動平均処理 y[n]=(1.0-α)・x[n]+α・y[n-1] (α:忘却係数)

単純移動平均処理 y[n]=(x[n]+x[n-1]+x[n-2]+x[n-2]+...+x[n-(N-1)])/N (N:平均回数)

x[n]:入力信号 y[n]:移動平均フィルタの出力信号

測定中に突発的な雑音が混入しても、フィルタは測定結果に与える悪影響を「忘却」しますから、慌てる必要はありません. 測定結果に乱れが生じても、そのまま測定を続けていれば再び徐々にS/Nが向上していきます. その様子はリアルタイムに更新されるグラフ表示で確認出来るので、頃合いを見計らって測定結果をセーブすれば良いのです. 


移動平均フィルタのインパルス・レスポンス
 :忘却係数を用いた移動平均処理(α=0.98)
 :単純移動平均処理(N=100)

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移動平均フィルタの周波数特性
 :忘却係数を用いた移動平均処理(α=0.98)
 :単純移動平均処理(N=100)

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http://www.cepstrum.co.jp/products/cubesp/cubesp.html
計測プログラムのパラメータ設定を変更して、さらに長時間の同期加算処理をおこなった結果を以下に示します. これまでよりも残響時間の長い広い部屋(ダイニング・キッチン)で測定をおこないました. マイク位置でのTSP(Time Stretched Pulse)の音圧レベルは42dB(A)〜46dB(A)でした.(TSPの周期が長いので騒音計のA特性での音圧レベルの読みが一定になりません) エアコンはつけっぱなしで、デスクトップ・パソコンのファン・ノイズもマイクに入ってきます.

常識的には有り得ない低音圧レベルでの測定ですが、長時間の同期加算によるS/N向上の効果が得られていることが分かります. エアコンを切った部屋で測定をする場合は、このような極端に長時間の同期加算は適切ではありません. 現実的には10分〜20分程度が適当な測定時間でしょう.(部屋の中に人がいれば、それだけで室温変化の原因になります)

同期加算無し
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30分間同期加算
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60分間同期加算
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90分間同期加算
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120分間同期加算
休止期間の無いTSP(Time Stretched Pulse)を用いたインパルス・レスポンス計測の同期加算の効果は下記の動画(AVIファイル)もご覧ください. TSPと同時に音楽を再生しながら測定をおこなっています. 正確に残響時間を求めるのには苦しいですが、初期反射パターンを確認するには十分な精度でインパルス・レスポンスを測定出来ています.(動画の中で測定を開始してからグラフが表示されるまで少し時間がかかります)

なお、使用している音楽(ジャズの Take Five)は生演奏ではなく、MIDIの再生音です.
動画ファイルから再生される音は、測定時にマイクで収録したものではなく、cubeSPから再生した音源の方です.(TSPと音楽をミックスしたものをcubeSPから再生して測定をおこないました)


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休止期間の無いTSP(Time Stretched Pulse)を用いたインパルス・レスポンス計測の同期加算によるS/N向上の効果の実例をご紹介します. 測定に用いたプログラムはまだ開発途上ですが、cubeSPのオプションとしてお客様にご提供する予定です. このプログラムを用いれば、非常に小型であるために出力(音圧レベル)を上げられないというcubeSPの弱点をカバーすることが出来ます.

下記の計測プログラムでは忘却係数を用いた移動平均により同期加算をおこなっています. 現状のパラメータ設定はまだ最適化されたものではありません. 3段に分かれた緑色のグラフ表示の上2段が計測したインパルス・レスポンス、最下段がA/Dの入力信号です. 黄色のカーブはインパルス・レスポンスより求めたエネルギーの減衰曲線(残響曲線)で、横軸の表示範囲は100ms、縦軸の表示範囲は25dBです. 測定中、リアルタイムにグラフ表示が更新されるので、同期加算が進むにつれて徐々にS/Nが向上していく様子が良く分かります.

音響系のインパルス・レスポンスには室内の温度分布の変動(=音速変動)等に起因する揺らぎがあるために、やたら長時間同期加算をすれば良いというものでは無いことにご注意ください.




まだパラメータ設定が最適化されていないので、下記の測定例では同期加算によるS/N向上の効果は3分程度で飽和してしまっています. 最適化すれば、10分〜20分程度の同期加算でさらにS/Nを上げることが可能です. 計測時間を長くしすぎると、音響系のインパルス・レスポンスの揺らぎの影響を受けてしまいます.

同期加算無し
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1分間同期加算
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3分間同期加算
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5分間同期加算
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下記の例は、測定信号(TSP)と同程度の音量でステレオから管弦楽曲を再生しながら計測をおこなったものです. 最下段のマイク入力信号波形から、かなりの音量で管弦楽曲を再生していることが分かります. 同期加算をおこなえば、道路交通騒音などの影響のある環境でも音響計測が可能です.

同期加算無し
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1分間同期加算
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3分間同期加算
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5分間同期加算
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10分間同期加算
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聴覚フィードバック

今、世間では聴力を失った作曲家のゴーストライターの存在や病歴詐称が話題となっています. TVニュース等で、この聴力を失ったとされる作曲家のインタビューや出演番組の一部を見て(聞いて)すぐに感じたことは、これは耳の聞こえない人のしゃべり方では無いということです. 少なくとも聴覚を完全に失って10年以上も経っているはずは無いとしか思えません.

人が言語を獲得出来るのは耳が聞こえるからであって、流暢に言葉を喋ることが出来るのも耳で自分の声を聞いて発声器官を上手にフィードバック制御しているからです. 発声時の聴覚フィードバックを遮断、もしくは妨害するとまともに喋れなくなってしまうこともあります. 典型的なのはDAF(Delayed Auditory Feedback)/遅延聴覚フィードバックの実験例で、吃音(いわゆるドモリ)の症状を劇的に再現することが可能です.(もっとも、まれにDAFの影響をあまり受けない人もいるようですが)


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英語のネイティブ・スピーカーにとって発音しにくい日本語の単語の一つは「りょうりや」(料理屋)だそうですが、これは日本人でも結構いい加減に怠けた発音をしていることが多いのではないでしょうか? 人間の声を線形予測分析してみると、普通の人は音声学の教科書に載っているデータのような綺麗な発音はしていないことが良く分かります. 一方、トレーニングを積んだNHKのアナウンサーなどの発声は大変明瞭で、それは分析データ(基本周波数、フォルマント周波数の変位等)にもはっきりと表れます. 残念ながら、アナウンサーと違って多くの人は、自分の声が聞こえていても聴覚フィードバックによるきちんとした発声器官の制御を怠けがちなのです.

 さて、人が完全に聴覚を失ったら話し声はどのように変化するでしょうか? 初めは何の変わりはなくとも、時が経るにつにつれて発声器官の制御の「怠け」が大きくなり、徐々に発音が不明瞭になっていくはずです.(聴覚フィードバックをかけられないのですから当然です) 冒頭で触れた聴力を完全に失って10年以上経つという作曲家の話し声を不自然に感じたのは、このような発声の「怠け」をまったく感じられなかったからです. 障害があるのは(内耳に音波を伝達する)中耳のみで、骨動で(健全な内耳により)自分の声が聞こえているという可能性もありますが、そうするといつも轟音のような耳鳴りに悩まされているという症状との矛盾があります.

(その後の報道によれば、「3年くらい前から言葉が聞き取れる時もあるまで回復していました」とのことです)
Stereo誌2014年1月号付録のパワーアンプLXA-OT3をスイッチング電源と一緒にケースに入れて実験用アンプにしました. 持ち運びの楽な軽量実験用アンプとして便利なのですが、ただ一つゲインが足りないことが玉に瑕です. CDプレーヤー等に接続して音楽再生に使用するにはLXA-OT3の控え目な利得設定は大変適切なのですが、いろいろな音響実験に使用するにはゲイン不足です. そこで少し基板をいじってゲイン・アップの改造をしてみました.

改造箇所は図のとうりです. デジタル・アンプIC TDA7491の利得設定を26dBから32dBに変更するとともに、前段のOPアンプ回路部分の利得も増やしています. OPアンプ回路の利得アップの代償として周波数帯域幅が狭くなりますが、可聴帯域内(20kHz以下)の特性に悪影響はありません.(気になるなら270pFのコンデンサーも代えてください) 当然ながら利得増で残留雑音も増えますが、実験に差し支えるほどではありません.

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