ここから本文です
cubeSP
無指向性スピーカーcubeSP技術情報

書庫過去の投稿日別表示

全1ページ

[1]

聴覚フィードバック

今、世間では聴力を失った作曲家のゴーストライターの存在や病歴詐称が話題となっています. TVニュース等で、この聴力を失ったとされる作曲家のインタビューや出演番組の一部を見て(聞いて)すぐに感じたことは、これは耳の聞こえない人のしゃべり方では無いということです. 少なくとも聴覚を完全に失って10年以上も経っているはずは無いとしか思えません.

人が言語を獲得出来るのは耳が聞こえるからであって、流暢に言葉を喋ることが出来るのも耳で自分の声を聞いて発声器官を上手にフィードバック制御しているからです. 発声時の聴覚フィードバックを遮断、もしくは妨害するとまともに喋れなくなってしまうこともあります. 典型的なのはDAF(Delayed Auditory Feedback)/遅延聴覚フィードバックの実験例で、吃音(いわゆるドモリ)の症状を劇的に再現することが可能です.(もっとも、まれにDAFの影響をあまり受けない人もいるようですが)


イメージ 1


英語のネイティブ・スピーカーにとって発音しにくい日本語の単語の一つは「りょうりや」(料理屋)だそうですが、これは日本人でも結構いい加減に怠けた発音をしていることが多いのではないでしょうか? 人間の声を線形予測分析してみると、普通の人は音声学の教科書に載っているデータのような綺麗な発音はしていないことが良く分かります. 一方、トレーニングを積んだNHKのアナウンサーなどの発声は大変明瞭で、それは分析データ(基本周波数、フォルマント周波数の変位等)にもはっきりと表れます. 残念ながら、アナウンサーと違って多くの人は、自分の声が聞こえていても聴覚フィードバックによるきちんとした発声器官の制御を怠けがちなのです.

 さて、人が完全に聴覚を失ったら話し声はどのように変化するでしょうか? 初めは何の変わりはなくとも、時が経るにつにつれて発声器官の制御の「怠け」が大きくなり、徐々に発音が不明瞭になっていくはずです.(聴覚フィードバックをかけられないのですから当然です) 冒頭で触れた聴力を完全に失って10年以上経つという作曲家の話し声を不自然に感じたのは、このような発声の「怠け」をまったく感じられなかったからです. 障害があるのは(内耳に音波を伝達する)中耳のみで、骨動で(健全な内耳により)自分の声が聞こえているという可能性もありますが、そうするといつも轟音のような耳鳴りに悩まされているという症状との矛盾があります.

(その後の報道によれば、「3年くらい前から言葉が聞き取れる時もあるまで回復していました」とのことです)

全1ページ

[1]

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事