映画と野球好きの日々雑言

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黒澤明

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 皆さんは黒澤明という映画監督をご存知でしょうか。日本映画界にとどまらず、世界の映画人に多大なる影響を与え、「世界のクロサワ」と呼ばれた映画界の一大巨人です。

 僕は父親の影響で早くして黒澤監督の作品を観る事ができたのですが、その作品のすごさというのは古今類を見ない面白さです。
 徹底したリアリズム。息を呑む躍動感。心に深く刻まれるヒューマニズム。これほどの映画を作れる映画人を僕は未だ黒澤監督のほかに知ることはできません。

 僕にとって黒澤作品の入門は監督の代表作といわれる「七人の侍」でした。当初はかなり古い作品であり、モノクロで知らない役者が出て、しかも時間が長い。恐らく今の人達が古い名画を見るのを敬遠する理由も同じものではないかと思うのですが、これらの考えは自身の浅はかさを後悔するものでした。

 モノクロの映像からは現代でも表現できはしないであろうリアリズムが溢れ出し、その強烈なイメージはCG全盛の現代映画をあざ笑うかのようです。いや、もしも時期を同じくしたものであってもあざ笑うどころか、歯牙にもかけないでしょう。黒澤監督によって創造されたそのイメージが監督による絵コンテに寸分たがわず構成され、場面の隅々にまで妥協を許さない。朽ちた寺は正に数百年の歳月を経ているかのように佇み、界隈を行きかう人々は長年着古したぼろきれのような服を身にまとい、貧しいながらも生命力豊かに生きている市井の人(戦後復興の時期、辛酸を舐めつつも希望を持ち働き続けた人々であるからこその雰囲気なのかもしれませんが)そのものであるし、正に一つの場面場面が重厚なリアリズムを発しているのです。

 そして、役者陣。かつて日本にこれほどの役者がいたのか、それとも黒澤監督の慧眼、演出のすばらしさなのか。恐らくはその双方とも素晴らしい。志村喬、三船敏郎といった黒澤作品の代表の演技もさることながら、寡黙で腕の立つ浪人役の宮口精二、飄々と侍達のムードメーカーでありながら、逆に彼を通してこの映画の闇を感じさせる千秋実。彼らの存在感は威風堂々たるものであり、かつヒューマニズムを鮮烈ではなく、確固としてそこのあるものとして表現している。スターのような華やかさではなく、けしてリアリズム溢れる場面に埋もれることのないその存在感を登場人物がそれぞれ確立している。これほど映画として凄いことはないと言えます。例え監督が渾身の作品として作り上げても、役者がそれに太刀打ちできなければ、とたんに淡白なものか、もしくはグロテスクなほど監督の自己満足の産物になりかねないからです。しかし、これほど圧倒的な作品の中で役者達はけして負けてはいない。

 さらには作品の諸所に出てくる、哲学とも思えるようなヒューマニズム。野武士達の被害者、侍達の庇護者である農民達の表には見えず、徐々に明らかになる業の深さと悲哀。事実を知り、農民に対し怒りを覚える侍達の中で唯一その悲哀を知る菊千代(三船敏郎が躍動感たっぷりに演じる)が叫ぶシーンはけしてお涙頂戴ではなく、第三者として扱われがちな農民の存在を確立するものであったのではというのがこれまでこの作品を5回(まだまだ!)観た僕の感想です。
 それらの中でも僕が思わずぞっとしたのが野武士のアジトのシーン。野武士を急襲すべく侍達が野武士達が眠りこけるアジトに火をかけるのですが、それに最初に気付くのが、野武士にさらわれた農民の女房。彼女は火の手を見たとき、初めに野武士達をあわてて起こそうとするのですが、ぴたりと止めます。そして、ほんの少し笑みを浮かべるのです。このまま焼け死んでしまえ、と。その時の女房の笑みが何よりも恐ろしい。このようなシーンを表現できる黒澤監督の鬼才ともいうべき演出が果たして今の人にできるのでしょうか、いや、僕はできないと思います。

 だいぶ長くなりましたが、勿論、クライマックスの豪雨の中の戦闘はすさまじいの一点。これこそ黒澤作品ともいうべき、現代のアクション映画が足元にも及ばない名シーン。実際の撮影では土砂降りの雨のシーンで水溜りの中に立ち続けた監督の親指の爪は死んで黒くなり、三船敏郎は直後に肺炎で何ヶ月もの入院を余技なくされたとのことです。

 映画が好きな人は一度は黒澤作品を観てください。けして損にはならないはずです。今後も黒澤監督に関して、自分なりにその素晴らしさを語りたいと思います。

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「7人の侍」も素晴らしいですが、白黒時代で言うと僕は「椿三十郎」のとぼけた味が好きです。

2005/11/26(土) 午後 2:05 suzushim

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初めまして、履歴からおじゃまします。黒澤作品は観てみたいと思いつつ手が出ませんでした。なんだか怖いイメージがあって…。怖いというか痛い?でもやっぱり観てみようかなという気になりました。

2005/12/17(土) 午前 0:18 [ chi*i*om*meko ]

ご訪問ありがとうございます。確かに黒澤監督の作品はリアルさを追求して殺陣のシーンなどは凄惨なところがありますから、苦手な人はちょっと敬遠してしまいますね。でも「生きる」や「赤ひげ」などはそういったシーンがあまり無く、少し重苦しいですがすごく感動できる話です。是非一度。

2005/12/17(土) 午後 1:19 [ cubsss5 ]

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cubsss5さん、こんにちは。黒澤明監督のすごさを、広くともに語っていきましょう。「七人の侍」を初めて見たときは、立ち見でしたが、これが世界に影響を与えた「七人の侍」かと感動しました。日本映画My Best10で、とりあえず4本黒沢作品が入っていますが。「生きる」も「赤ひげ」も「隠し砦の三悪人」も本当は入れたいのですけどね。

2006/3/21(火) 午後 0:10 fpd

僕も『七人の侍』を初めて観た時はこれが本当の映画なんだと感動しましたね。モノクロだし、古いしと偏見を持っていた自分の愚かさを痛感しました。

2006/3/21(火) 午後 6:28 [ cubsss5 ]

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遂に「七人の侍」はDVDを買ってしまいました。
毎回見るたびに泣いています。

2010/10/16(土) 午前 9:55 [ dalichoko ]

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