(本)パーソナリティ障害:いかに接し、どう克服するか
岡田尊司(精神科医、医学博士)
本書は、単なるパーソナリティ障害の解説書ではない。
実際に、そういう問題を抱えている人や、身近にそういう人がいる場合に、
克服や援助の際にポイントとなる点を具体的に記している。
これは、私自身が、多くの患者さんとの関係の中で学んできたことであると同時に、
私自身の人生から学んだことでもある。
したがって、精神医学的な観点から書かれた生き方術の本でもある。
私自身、人はどう生きるべきか、どうすればその人自身を活かせるのか、
本当の自分、本当の幸福に出会えるのか、ということを幼い頃から考えてきた。
それは多分、余り幸福とはいえない人たちの中で育ってきたせいだろうが、
そうした中で、私自身の人生も、必然的に翻弄されたものであった。
私は先人の知恵にその答えを求めようとして、文学や哲学や心理学を学んだ。
私が最初、専門分野に選んだのは哲学だった。思索や抽象的な思考の世界に魅了されつつも、
その一方で、そうした世界にだけいることが、本当に生きることではないと思うようになった。
体のいい現実逃避に思えてきたのだ。当時の私は、2年ほど、ろくに日にも当たらず、
すっかり引きこもった生活をしていた、もっと現実の中で多くの人と出合い、
本当の人生を生きたいと思うようになった。
医者になる決心をして、当時、哲学科の主任教授だった山本信先生のところに
恐る恐る挨拶にいくと、叱られるかと思っていたのに、
「それは、よかった」と手放しで喜ばれたので拍子抜けした。
影も姿も見せない不肖の教え子の行く末を、案じてくださっていたのだろう。
長い学生生活の末、私が医学部を卒業し医者になったのは、27歳のときである。
本書は、多くの人から私が学んだことのエッセンスをまとめたものである。
説明的にならずに、できるだけイメージ豊かに理解してもらうために、
具体例を豊富に採り入れた。今回は、子どものケースは一部に留め、
幅広い年代のケースを扱っている。
プロローグ:現代人を蝕むパーソナリティ障害
生きづらさの背後にあるもの
職場や家庭、友人、恋人にも
正しい認識と対処を
第1部 パーソナリティ障害の本質
第1章 パーソナリティ障害とは何か
行きすぎた考え方や行動の偏り
パーソナリティ障害に共通する特徴
自己愛の病としての側面
生きづらさを補う適応戦略
優れた点も
第2章 パーソナリティ障害はなぜ生まれるのか
遺伝か環境か
「ほどよい母親」と自我の基盤
分離ー固体化期の障害
自己愛の病理
心的外傷とパーソナリティ障害
社会が生み出す一面も
背徳狂からDSM−III の成立まで
第II部 パーソナリティ障害のタイプと対処
第3部 愛を貪る人々:境界性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
境界性とは、何の「境界」なのか?
「死にたい虫」を飼う女子大生
「見せかけの優しさでもほしい」少女
最高と最低を往復する
自殺企図と心理的コントロール
見捨てられ抑うつと自己否定感
根っこは親へのこだわり
「17歳のカルテ」とウィノナ・ライダー
なぜ近年急増したのか
(接し方のコツ)
変わらないことが最大の支え
心中しないために
同情は「おんぶお化け」を生む
自殺企図への対処
(克服のポイント)
両極端の間の選択肢を考える
細く長くつながる
自分で自分を支える
第4章 賞賛だけがほしい人々:自己愛性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
自分は特別な存在
非難に弱い。時には、引きこもりも
優雅なる冷酷
肥大した自己愛性
2人のサルバドール・ダリ
愛情剥奪体験と傲慢さという鎧
「獅子座のシャネル」
肥大した理想と釣り合わない外界
(接し方のコツ)
もし自己愛者が上司や同僚だったら
現実能力を補う
ロダンとカミーュ・クローデルの不幸な関係
(克服のポイント)
自分を狭めず、他人から学べ
よきマネージャーをパートナーに持て
共に何かをする体験
他者のために生きる
第5章 主人公を演じる人々:演技性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
天性の誘惑者として嘘つき
マーロン・ブランドと「うつ」
チャップリンの子ども時代
ココ・シャネルと虚言
映像メディアの時代には大活躍
根底にあるものは何か
(接し方のコツ)
仮面を無理に剥ぐな
身体化症状とどう付き合うか
(克服のポイント)
自分自身と対話する時間
石の上にも3年
中味のあるパートナーを選べ
第6章 悪を生き甲斐にする人々:反社会性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
他人を冷酷に貪る
タブーなき人々
否定されてきた人生「復讐するは我にあり」
(接し方のコツ)
否定的な見方に敏感
受容体験と無常観
(克服のポイント)
武蔵という生き方
我が子に同じ人生を望むだろうか?
第7章 信じられない人々:妄想性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
裏切りを恐れる
疑り深さと過度な秘密主義
権力者の病
父親殺しと反権力
(接し方のコツ)
親密になるリスク
正面衝突は回避せよ
権力ゲームに巻き込まれない
(克服のポイント)
人の心は支配できない
秩序愛と気配り能力を活かせ
戦いに勝つより、許す勇気を
第8章 頭の中で生きている人々:失調症パーソナリティ障害
(特徴と背景)
インスピレーション豊かな直観人
人目を気にしないでマイペース人生
ユングのオカルト趣味
(接し方のコツ)
本人のペースを尊重する
社会へのコーディネーター役が大切
(克服のポイント)
身近なことをおろそかにしない
人の気持ちに目を向ける
発病の危機を乗り切れ
第9章 親密な関係を求めない人々:シゾイドパーソナリティ障害
(特徴と背景)
孤独と清貧な人生
10年1日のごとく
内面は意外に豊か
(接し方のコツ)
己の世界の侵害を恐れる
本当の親しさを求めると失望
(克服のポイント)
己の世界を究める
第10章 傷つきを恐れる人々:回避性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
食わず嫌いの人生観
ハリネズミとジレンマ
褒められなかった子
トラウマ体験が生む回避
頑張らせすぎた子が急増中
「飛ぶのが怖い」
(接し方のコツ)
主体性を尊重する
回避の慢性化、全般化を防ぐ
義務を説いても動かない
否定的な言い方は禁物
無気力の温床を打ち破るには
(克服のポイント)
失敗を恐れない
守りすぎることの弊害
第11章 1人では生きていけない人々:依存性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
赤ん坊型と献身型
1人が苦手
ノーといえない人
「ギルバート・グレイブ」無気力な母に縛られた子
(接し方のコツ)
代理人にならない
答えをいわないアプローチ
(克服のポイント)
自分の人生をとり戻す
自分の気持ちを口に出す習慣を
人に奉仕する仕事が向く
第12章 義務感が強すぎる人々:強迫性パーソナリティ障害
(特徴と背景)
律儀で責任感も強い善人
努力は報われるという信念
捨てられない人
(接し方のコツ)
こさわりの尊重の限界の設定
視点を変える
(克服のポイント)
休養も仕事のうち
責任を1人背負わない
他人に同じことを期待しない
おわりに:パーソナリティ障害をプラスの力に
かつては人格の陶治こそ、学ぶ目的だった
性格が丸くなるということ
新たな社会の模索
(本)パーソナリティ障害:いかに接し、どう克服するか
岡田尊司(精神科医、医学博士)
PHP新書 780円+税
転載元: Dr ミカのメモ帳: 脳・栄養・心 (発達障害・特別支援教育)
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