就業開始から12週を経た派遣労働者に、正規労働者と同等の基本的な労働条件を保障する!
イギリス 派遣労働者規則が成立、11年10月施行へ
EU派遣労働指令が08年12月に施行されたことをうけて、国内法化の議論が進められていた派遣労働者規則が、1月21日に成立した。EU指令の成立に先だって、全国レベルの労使の間で交わされた合意文書に基づき、就業開始から12週を経た派遣労働者に、正規労働者と同等の基本的な労働条件を保障する内容だ。具体的には、当該の仕事に従事するために直接雇用された場合に保障されるであろう給与水準や、労働時間、時間外労働、休憩、休息時間、夜間労働、休日、祝日に関する権利について、均等処遇を定めている。
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また、均等処遇が義務付けられる労働条件の範囲、とりわけ給与に関する均等の適用範囲が重要な論点となった。労働組合は、給与全般を対象とすべきと主張、経営側の基本給のみが対象となるべきとの主張との間に隔たりがあった。規則は最終的に、派遣労働者の労働に直接かかわる賃金、すなわち基本給、時間外手当、シフト手当、休日労働手当、業績手当などがこれにあたると定義している。一方、企業年金、整理解雇手当や疾病手当のうち企業が法定レベルを上回って設定している部分、現物給付、企業業績連動型手当(profit-sharing scheme)などは適用が除外される。なお、派遣事業者が直接雇用して派遣先企業に派遣を行う場合は、派遣業務と派遣業務の間の待機期間について、最低賃金額を下限として従前賃金の50%を支払うことを条件に、派遣先における均等処遇を適用しないことを認めている。
規則はこのほか、社内食堂などの施設の利用、空きポストができた場合の応募などの権利、妊娠中あるいは乳幼児の母親である派遣労働者に対する保護についても、正規労働者と同等であるべきこと、労働者派遣の利用に関しては従業員代表に情報提供を行うべきことなどを定めている。また労働組合からは、企業が派遣労働者への権利付与を回避することを目的に、契約期間を12週より短く設定して反復更新する可能性が指摘されていた。規則は、同一の雇用主のもとで働く場合、最低6週間の休止期間をおくか、全く異なる仕事に従事する場合を除いて、就業期間は通算されるとしている。
さらに、法律施行後の運用においては、派遣労働者と正規労働者の比較をどのように行うかという問題がある。経営側からは、EU指令の規定は賃金表などで公式に給与額が決定されている労働者に関してのみ有効であり、従って個別に賃金額が決められる9割の派遣労働者に対して、規則は適用されないのではないか、と指摘されていた。これに対して、政府は1月に公表した文書(10月のコンサルテーションに寄せられた意見に対する政府の回答文書)の中で、これに関するガイダンス案を示した。同案は、賃金表や賃金体系などの公式な規定以外に、慣習的に従業員一般に適用されている(例えば最近採用された従業員に適用されている)給与額について、これに基づく均等処遇を求めている。また、比較対象となる正規労働者に関しては、最も単純な方法は、同一もしくは同種の職務に従事する正規労働者との間の比較だが、比較の際には職務内容だけでなく、資格や技能、経験などのレベルを加味することを認めている。
履行確保の手段としては、政府の設置する監督機関(Employment Agency Standard Inspectorate)による検査のほか、派遣労働者自身が雇用審判所に申し立てるといった方法がある。雇用審判所の審理により違反が認められた場合は、派遣労働者に対して2週間分の賃金を下限とする未払い賃金等の支払いのほか、最高で5000ポンドの賠償の義務が課される。規則は、基本的に派遣事業者が責任を負うこととしているが、派遣事業者が派遣先での均等処遇の状況に関する情報の取得とこれに基づく法令順守の努力を行ったことが認められれば、その限りではない。このほか、違反事業者に対しては改善状況の検査が実施されるほか、改善命令に従わないなどの場合には罰金(上限は設定されていない)や最長で10年の業務停止が課される可能性がある。
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