復帰する権利を強く主張したら「会社都合だ!」と言われた。最近は、過酷な労務管理によってうつ病などで休む労働者が急増し、その復帰を巡る紛争が多発しています。この1ヶ月間に数件の相談を私一人で受けている状態で、深刻な事態となっています。うつ病は、その大部分が業務や会社の人間関係に起因していることは明らかなのに労災して認められるのは年間250人程度です。労災として認められなくても少なくとも快方に向かっている労働者を温かく迎え入れるようなそういう社会であって欲しいと強く願うものです。 精神疾患から快方に向かっている労働者に会社と争う力は残されていません。職場復帰を認めない会社に対して力尽きて離職していく労働者の後ろ姿を見るのは支援する者にとって辛いことです。 最近遭遇した典型的な事例を紹介する前に精神疾患からの職場復帰は法律や行政の取り組みの上ではどうなっているかを述べることにします。ごめんなさい。更にその前に、私傷病は各企業の就業規則ではどうなっているかを述べます。 就業規則では私傷病はどう取り扱われるか残念なことに精神疾患は通常私傷病として扱われています。私傷病は企業ごとに取り扱いが違っています。大企業では病欠期間が数カ月あり、その間は賃金が支払われる場合も少数ですがあります。大概は無給となり有給休暇が無くなると無給扱いで、その場合には健康保険組合から傷病手当金が支給されます。病欠期間に治癒した場合、労働者の判断で出勤できますが、一定の病欠期間(就業規則で期間はマチマチ)に治癒しなければ通常「傷病休職」が発令されます。うつ病の回復には短くても3カ月はかかるといわれ、病欠期間だけで復帰することは難しいのが大部分で、多くが傷病休職となっています。 傷病休職の期間も就業規則でマチマチです。休職期間に治癒しなければ合法的に退職又は解雇となります。治癒した場合、又は症状が改善しリハビリ出勤などが可能と主治医が判断し会社が出勤を命じた場合には復帰できます。一旦、休職が命じられると復帰を会社から認められないと復帰できないことになるわけです。そこで復帰をめぐるトラブルが発生することになるわけです。 自分の意思で復帰できる病欠期間に良くなるためには早めに良い医者にかかることと、厚生労働省の指針に基づいた職場の取り組みが必要です。 精神疾患からの職場復帰は法的には?行政の取り組みは?法的な根拠としては「労働安全衛生法」の69条と70条の2と言うことになります。短い条文なので下に両条文を記載します。【(参考)労働安全衛生法】
第69 条(健康教育等) 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。 2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。 第70 条の2(健康の保持増進のための指針の公表等) 厚生労働大臣は、第69 条第1 項の事業者が講ずべき健康の保持増進のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。 70条の2に言う指針は平成18年3月31に公示された「労働者の心の健康の保持増進のための指針」です。この指針は職場復帰だけではなく労働者の心の健康増進に関することを全面的に規定しています。同指針の第6項(4)が「職場復帰における支援」となっています。 ここに規定しているのは次の4項目です。 1 職場復帰プログラム(復職の標準的な流れ)の策定 2 職場復帰プログラムの体制や規程の整備 3 職場復帰プログラムの組織的、計画的な実施 4 労働者の個人情報への配慮及び関係者の協力と連携 厚生労働省ではこの指針を周知徹底するためにパンフレットを作成し配布していますのでご紹介しておきます。かなり丁寧に解説されていますので指針よりもわかりやすくなっています。 ○「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 ○「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針」 上の方が指針の中の職場復帰に特化した内容で下は指針の内容全般に関するパンフレットです。 更に平成21年3月21日には各都道府県労働局長宛ての通達「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」を出して徹底するよう指示しています。この通達ではメンタルヘルスに取り組む企業の割合を50%以上にする目標を掲げています。そして、この通達の第6項が「職場復帰支援」となっていて、上に紹介したパンフレットの紹介もされています。 ある中小企業の企業内労働組合からの相談出来たばかりの組合員数が労働者の1割にも満たない労働組合の役員からの相談でした。相談の内容は組合員がうつ病に罹患し2年ほど闘病生活をしていたがこのほど快方に向かい主治医も産業医も復帰は可能だとしているのに人事当局が復帰を認めないので困っているとの内容でした。当初は「復帰は認められない。休職期間が終了する2月末で退職となる。」との言い方だったが当該労働者が強く復帰を求めたところ「復帰する場所が無い。産業医も復帰できると言っていることは認めるが現実に復帰する場所が無い。会社都合と考えて良い。」と言い方が変ったとのことでした。 組合も出来たばかりで小さく交渉力にも限界があるとのことでしたが、労働組合が粘り強い交渉を続け、最終的な解決には至っていないが、当面リハビリ出勤をすることで話し合いが付いたとの報告を受け取りました。 小さな労働組合でも筋の通った主張にたいしては、会社も妥協せざるを得なかったのだろうと思われる事件でした。 うつ病が快方に向かっても労働者一人ではなかなか闘えないのが現実です。労働組合が無ければ労働者から労働局に対して「助言指導」を申込む方法がありますが、会社と争う前に折れてしまう事例が多いのも現実です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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2011年01月16日
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