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哲学日記
泥沼から脱出するまで一気につき進め。休息は泥沼を抜けてからとるものだ。

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司会者
ここからは、世相を一刀両断にしてください。

現実主義者
無理だよ(笑)

司会者
じゃあ、悪口でもいいです。大悪口大会をやりましょう。ここに、犠牲者になってもらう相手をメモしてきたんです(メモを出す)えーっと、日本人、儒教道徳、女、政治、マスメディア、大衆社会…まあ相手にはことかかない(笑)
全部はとてもやれないでしょうが…

キリスト者
だいぶ昔の話を思い出したんだけど、ポルノ専門の場末の映画館に入ったんですよ。火曜の夕方だから空いてるだろうとと思って入ったが、ばかげたことに満員に近かった(笑)
しかも、若い男女の客が多いかと思うと、そうじゃない。中年の男が多い。

現実主義者
あんた、自分も観に入ったくせに、文句たれることないよ(笑)

キリスト者
(笑)それはそうだが、まあもうちょっと聴いてください。
よく見ると、頭の白いおじいさんが、けっこういるのに驚く。そのとき入ってきたおじいさんは、よれよれのカバンを抱いてよろよろ歩いていた。こんな年寄りが、たぶんひとりで来てるんだね。僕の近くの席に座わって、あごに手を添えて一心に映画を観ている。
そこへ、腰の曲がった、これも相当な年のおばあさんが、箒とちりとりを両手にして入ってきて(映画館に雇われてる)通路に座り込んで、皺の中に落ち込んだ小さな目でスクリーンを見ている。

仏教者
ハッハッハッハ(突然笑い出す)

現実主義者
どうしたの?

仏教者
いやね、僕も思い出しちゃったんですよ。まえに「外国のおなごはけものみてえだ」なんて言う田舎のおばあさんがいて、僕は不思議に思ったが、きっとその種の映画を見て単純に真に受けたんだろうね(笑)

キリスト者
その推理はたぶん当たりだな。
でね、率直に言って、棺おけに片足入った年の人が、寂しくひとりでやって来て色気たっぷりの様子で、こんなものに見入っている有り様は惨めなことだと思うんだ。

現実主義者
惨めに見えるのは、あんたの主観であって、本人はなんとも思っていないでしょう。
僕は人間的で微笑ましいと思う。だいたい、テロや戦争で殺し合いをやってるのに比べたら、そんなのは、はるかに罪がないし別に人に迷惑をかけてるわけじゃないから何ら恥じることもない。

キリスト者
なんでそこでテロや戦争が出てくるの(笑)
でも、あなたの言いたいことは分かりますよ。「いい年をして、世間様に恥ずかしいからやめなさいよ」なんていう連中がいるんだ。僕は外聞を恐れて良い子ぶる人々は、この色気いっぱいの年寄り達よりずっと人間として惨めな状態にあると思いますよ。

現実主義者
そうなんですよ。りっぱなもんですよ(笑)



仏教者
そうですね、男が女を誘惑しようと目の色変えてるってのは、ていたらくもいいとこで、人類の負債はその分だけ増え続けることになる。人類の精神世界の決算は毎年、度外れた赤字続きで…

司会者
ちょっと待って、なんか男の悪口になってる。男3人集まって男の悪口言っても面白くないので、最初にお願いしたとおり、言うなら女の悪口にしてください(笑)

仏教者
若い女の人は意外に正しい見方をしていますよ。男なんかより。

現実主義者
おい、おい(笑)

仏教者
まあ聴いてください。
若い女性は「自分に正直に」と一番に言うもんですよ。同じ年頃の青年にしゃべれせてみなさい。男の方はすでに早々と本来の自分を見失ってることが分かりますよ。
「社会に役立つ自分」とか「日本人の自覚をもった自分」「男らしい自分」等々、もっともらしい字面、言葉だけのガラクタと「自分本来の自分」というダイヤモンドを取り替えてしまっているんです。
ただし、若い女性の方にも問題があって、せっかくの自分に正直にという正しい見方の大切さ、かけがえのなさを自覚する(捉えなおす)能力において生得的な弱さがある。

キリスト者
たしかに、女の人にはそういう頼りないところがある。
それで結局「男と女が互いに愛しあい一緒に生き、子供をつくり育てていく以上の幸福は、人間にはないのです」って主張になる。

現実主義者
それはその通りだと、僕は思いますよ。

キリスト者
ええ、分かります。しかしそれは結果としてそうなだけだ。
女たちは、および多くの男たちも、そこに至る正当なプロセスを自身で歩いたのではないんです。
たいていステレオタイプの言説を弄しているだけですからね。深く考えての自己投機の表明じゃないから、わが身が遺伝子の奴隷になっている自覚も反省もまるでない。
彼らは知識と知恵の間に存在している恐ろしいほどの深淵に気づかないんだ。

仏教者
知識としてだけなら、このごろの小学生なんか、みんな言うもんね。「なるべく良い大学出て、良い会社に入って、平凡でも良いから幸せな家庭を持ちたい」なんて言う(笑)

キリスト者
だから、彼らはいくつになっても自分に自信がもてない。知識はいくら積み上げたって自信にはならないんだから。

仏教者
それで彼らは強い意志力を欲しがるんです。強すぎる意志力の危険性にはひどく無知なままでね。あきらめない者の多くは、お決まりの自己欺瞞に追い込まれる。すなわち、精神の正常な柔軟性を欠いた単なる硬直傾向を我が意志力の強さと思い込むんです。


現実主義者
自分の頭がすっかり硬くなり、新しいことを一切受容できなくなると、ずうずうしくも「俺も一人前の社会人になった。精神の安定した大人になった」と思い「悪いものは悪い。いいものはいい。ダメなものはダメ」と断言して何か言った気になって威張る「大人」に、大多数の人間が劣化するのは、いったいなぜなんでしょうか。

仏教者
社会の習慣は常時ONの定力装置で、それに常にそれ以上の力で抵抗していないと、加わる影響はどんどん大きくなるからですよ。
日常人はごく若い時以外はほとんど抵抗しないから、歳をとるにしたがってその受ける影響は蓄積され、ついにはまったく社会習慣の権化に変わってしまい、もはや自分で考え悩む努力は消え「悪いものは悪い。いいものはいい。ダメなものはダメ」とロボットのように言うだけになってしまうんですよ。


※定力装置 一定の力を加え続ける事のできる装置


現実主義者
歌の文句じゃないけど「後どのくらい傷つけば大人になれるのか。だけどわたしは耐えてみせる」なんて言います(笑)


キリスト者
若い女の向上のイメージがそういうものなら、努力はすべて裏目に出てしまうかもしれない。


仏教者
ダメな男もこの種の姿勢で人生に向かってるもんですよ。凝り固まっちゃってる。よくあるパターンなんです。ひとつの立場からみれば一理あるという程度の思想信条に固執して硬くなっちゃうんですね。本人はそれで、もう迷いがなくなった、強い、男らしいと自惚れている。傍からみれば、馬鹿まるだし(笑)
まわりが一切相手にしなければ、自分勝手にエネルギーを使い果たして消滅するんですがね。まわりのバカが共振してしまうから大事になる。

キリスト者
でも、女のほうもひどい。結局、彼女らの多くは人並みに人生を送ることさえかなえば、まずまずの幸福であると考えている。そうなるために人並みの努力はしている。よほど運の悪い生まれつきでない限り彼女のささやかな望みはかなえられる。


現実主義者
そうですね。女の不安は、おおむね、ひょっとして自分の運が特別悪いんじゃないかという気がかりだけですよ。


キリスト者
まあ、多くは努力のかいあって同年代の女が結婚する頃には自分も適当な相手が見つかって家庭をもつ。やがて二世の誕生等、古今東西、あの有名な歌「おさななじみ」に表現されている、男女が繰り返すいとなみが続けられるんですよ。このわけの分からぬ反復運動は、空中のすべての鳥たちによって、水中のすべての魚たちによって、地上の大小もろもろの動物と虫と植物のすべてにおいて繰り返し続けられていることでもある。


現実主義者
あんたの言おうとしていることが、どうも僕にはあまりよく飲み込めないんですが(笑)


キリスト者
つまり、感覚神経の幸福に翻弄されているうちに、タイムアウトになりその幸福な女と男は煙のように消えてしまい、残ったのは一人あるいは数人の子供だというわけです。それは、ふりだしに戻された僕なんです。あるいは彼女でもある。
こういうことが切りなく繰り返されているのが、この現実の世の有り様だともいえる。
そうだとすると、これは恐ろしいようなことだと思えてくるんです。


現実主義者
うーん。


キリスト者
…これを言うと伝統教義に反することになるんだけど、じつは僕は、女は神の手じゃないかとまえから思ってるんだ。


現実主義者
神の手ですか(笑)


キリスト者
イブはもともと神の指示によってアダムをそそのかして禁断の木の実に手を出させたんじゃないのかな。だとすれば、楽園から追放されているのはアダムだけであって、イブはひきつづき神の手としてアダムにくっついてきている。


仏教者
それは面白い発想だね(笑)
たしかに女は神の前でべつに罪をもっていない感じがある。女は男よりはるかに無意識に支配され生きていき死んでいくものですからね。そういうものに対して、神は男に対するときの峻厳な姿勢で臨むことはないはずだ。それどころか、あなたが言うように、初めから神の手の一部分であるふしさえ見える。


現実主義者
なんだか女が憎らしくなってきた(笑)


仏教者
女はか弱くて繊細で傷つきやすく、三界に家なきはかない存在だというけど、これは見せかけだけだしね(笑)



(続く)

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(過去記事統合増補編集再録)

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