日米 特許 最新 判例 ブログ (大阪第3特許勉強会編)

特許、実用新案、意匠、商標、不競法、著作権法の全ての判例について検討を行った中から、注目される判例を紹介します。

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平成21年1月28日判決言渡
平成20年(行ケ)第10096号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年12月11日

拒絶審決が取り消された事件。

請求項の内容は以下のとおり。
【請求項1】
下記(1)〜(3)の成分を必須とする接着剤組成物と,含有量が接着剤組成物100体積に対して,0.1〜10体積%である導電性粒子よりなる,形状がフィルム状である回路用接続部材。
(1) ビスフェノールF型フェノキシ樹脂
(2) ビスフェノール型エポキシ樹脂
(3) 潜在性硬化剤」

 審決では、本願補正発明は,特開平6−256746号公報に記載された発明に対して進歩性がないと認定した。

 裁判所では、審決には,相違点の看過についての誤りがあるか否かにかかわらず,引用発明のフェノキシ樹脂について,相溶性,接着性がより一層良くなるように,ビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いてみようとすることは,当業者が容易に推考し得たことであるとした点には誤りがあると、判断した。

I村判事は、後知恵を排除するための説示として、以下のように述べている。

「特許法29条2項が定める要件の充足性,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで,出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして,容易想到性の判断の過程においては,事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが,そのためには,当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。
さらに,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するた
めにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である。」

その上で、以下のような認定を行い、本件発明の進歩性を肯定した。
「…しかし,審決が引用する「PKHA」(甲4の段落【0022】)は,特開平9−279121号公報にお
いて,「PKHA(ビスフェノールAより誘導されるフェノキシ樹脂・・ユニオンカーバイト株式会社製商品名・・・)」との記載があり(甲5の1の段落【0086】),また,米国特許第4343841号明細書においても,「これらの樹脂は,ユニオンカーバイド社からBakeliteフェノキシ樹脂・・PKHA・・として商業的に入手でき,そして,ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから得られる高分子量熱可塑性ポリマーと表現される。」(甲5の2第4欄44行〜48行。訳文)との記載がある。したがって,審決が引用する「PKHA」は,ビスフェノール「A型」のフェノキシ樹脂であり,ビスフェノール「F型」のフェノキシ樹脂ではないから,引用例の「PKHA」との記載は,ビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いることに対する示唆にはなり得ない。」

考察
 後知恵を排除するための説示が、結構大胆であるように思います。「…当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である」とまで言い切っている認定は初めてのように思います(世界初!?)。
 当業者が本件発明に近づくための試み以外の試みをすることはなく、当業者なら本件発明に近づくための試みするべきである旨の示唆が必要なのだろうか…。couldアプローチ→wouldアプローチ→shouldアプローチと進化した事を示す画期的な判決になるかもしれません。ただし、この判決は、用途発明限定の判断かもしれませんので、今後の動向に注目したいです。

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今回の"would-shouldアプローチ"の判断手法は、EPの"could-wouldアプローチ"をさらに押し進めたものですね。
容易想到性の判断における後知恵の排除をしっかりやろうという裁判所の意志が感じられますが、進歩性のハードルは下がっていくんでしょうか。コメントにもある通り、判決動向を注意深く見ていく必要がありそうですね。 削除

2009/2/18(水) 午後 11:41 [ Y ] 返信する

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「…当該発明の特徴点に到達するために…」の部分が重要だとすると、当業者が偶然に当該発明の特徴点に到達できる試みをするだけでは足りず、当業者が本願発明の課題とその解決手段を認識した上で、当該発明の特徴点に到達できる試みをすることが必要であると認定したのかもしれません。要するに、引用例から本願発明の課題が読み取れないと駄目と言っているだけなのかも…。KSR前の米国に近づいたのかな? 削除

2009/2/20(金) 午前 9:06 [ wak ] 返信する

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判決文に「当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要」とありますが、
この判断は極めてEP的な印象を受けます。EPでもこの様な判断をした審決例がありますし、今後これを進歩性判断の手法として採用するのであれば、出願発明の客観的な課題の認定も必要になるのではないでしょうか。 削除

2009/2/20(金) 午後 7:11 [ KYM ] 返信する

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