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※十三・栄町商店街
きのうの午後、
北新地を本拠地としているA氏から電話をもらった。
A氏は、飲むとなったら一晩に2〜30万円も使う金持ち。
「大先生、誠に失礼ですけれど」
「なんですか?」
「よかったら、今夜、“サンローラン”、奢らせてください」
オレ、いま、目指す目標があって、
カネを使いたくない。
けれども、
奢らせてくださいと言ってもらって出て行った。
しょんべん横丁の大衆酒場“平八”で待ち合わせた。
“サンローラン”のおねえちゃんも“平八”に呼んで、
午後6時半ごろ、“サンローラン”に入った。
A氏と、9時過ぎに分かれた。
で、話はこれから。
オレ、家へと帰っていたら、
ケータイが鳴った。
見たら、さっき別れたばかりの
“サンローラン”のおねえちゃんからだった。
「はい、もしもし」
おねえちゃんのケータイからなのに、
電話の声は、男だった。
「いま、どこですか?」
「家に向かって、帰ってるところ」
「ボク、いま、“平八”です。アハハハハ」
「はい」
「いま聞いたんですが、大先生、“サンローラン”にいたんでしょ?」
「はい」
「よかったら、十三へ戻ってきてください」
「どちらさん?」
「ボクです」
「すいませんが、どちらさんですか?」
「ボクですよ、アハハハハ」
「どちらさん?」
「B男ですよ」
「なんや、B男か」
「大先生、早く来てください」
「けど、オレ、いま、カネ使えないのや」
「ここの飲み代だったら、ボク、出しますよ」
「ホンマか?」
「きょうは、奢らせてもらいます」
電話の主は、
“サンローラン”で知り合ったブロガーで、
いつも金欠と言ってるB男だった。
うれしいな。
さっきまで、金持ちのA氏と“サンローラン”にいて、
帰ったと思ったら、また別の客に呼び出されて、
“サンローラン”に戻ってくる。
自分のカネは使わないけれど、
客を次々と“サンローラン”に呼ぶ。
店の幹部はオレのことを、絶対に、大事な客と思っているに違いない。
そんなことを考えながら、“サンローラン”を目指した。
9時半に“サンローラン”に到着。
早足でフロアーに入った。
ところが、
B男がいない。
なんでや?
え?
あっ、
まさか・・・。
ケータイの着歴を確認した。
エ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!
やっぱり。
すぐ、B男に電話した。
「B男、ゴメン、オレ、間違えた」
「なにを間違えたんですか?」
「オレ、“サンローラン”に来てしもた」
「なんで、“サンローラン”なんですか?」
「そやから、間違えた」
「ボク、“平八”と言ったでしょ」
「間違えたんや」
「なんで?」
「オレ、おねえちゃんのケータイを“○×△□▼サンローラン”と登録してる」
「はい」
「B男は、“○×△□▽サンローラン”と登録してる」
「はい」
「登録名が、そっくりなんや」
「はい」
「それでオレ、とっさに、おねえちゃんのケータイを借りて電話してきたと思った」
「はい」
「おねえちゃんのケータイから電話すると言うことは」
「はい」
「当然、B男が“サンローラン”にいると思った」
「なんでですの〜」
「それから、“サンローラン”に来てたんでしょ、って言うたやろ」
「はい」
「それは、“サンローラン”に来て、おねえちゃんから聞かんと分からんことや」
「“平八”のママから聞いたんです。おねえちゃんが迎えに来たから、“サンローラン”へ行ったと思うって」
「そう言うことか」
「ボク、“平八”と言ったでしょ」
「オレ、“平八”は、冗談で言うたと思った」
「大先生、ワザと間違えて“サンローラン”へ行ったんでしょ」
「違う、違う」
「ホンマですか〜〜」
「ホンマや。ホンマに間違えた。とにかく“サンローラン”に来てくれ」
「大先生が、こっちに来てください」
「もう、ビール、出てきてしもた」
「ボク、“サンローラン”は奢るカネ持ってませんよ」
待機席にいたおねえちゃんは、
指名がついて大喜びだったけれど、
オレは、泣きながら、
カードを切るしかなかった。
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