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酒はパアーッと明るく飲むものだと思っている。でもたまにインケツなヤツと付き合わされることがある。全く迷惑な話で、インケツがいると周りがハジケようにも、どうも調子が出ない。
大学の後輩で少林寺拳法部の幹部のNら7、8人とでっかいキャバレー“グランド。サロン・十三”へ行ったときのこと。彼らの年は21〜2で、ホステスのほとんどは年上になる。若い男をつまむ趣味のホステスに狙われることの方がずっと多い。
それはともかく、ワーワーやってるうちに女子学生の話になってきた。見かけは怖い兄ィさんも道を開けるほどのゴツイ彼らでも、心根は純情な男が多い。特に恋愛関係になると先輩のオレがもどかしくなるほどウブなのもいる。
Nもその一人で、思いを寄せてる女のコがいるのだが、デートも出来ずに悩んでいた。大学の近くの喫茶店でアルバイトをしている同じ大学の女子学生で、ほとんどの仲間は知っていた。話題が彼女に移ったとき、Nが急に黙りこくってしまった。
「そやけどあのコ、付き合ってるヤツがおるんやで」
言わんでもいいのに一人の部員がNに教えたからだ。さらに追い討ちをかけるように、長々とそのことを証明する話を続けたからたまらない。
「だれそれと映画に行った」
だの
「旅行に行った」
と話したんである。
今まで盛り上がっていたNが一言もしゃべらなくなり、お地蔵さんになってしまった。
と思うとお次はロボットに変身した。ビールを自分のグラスに注いでは飲み、注いでは飲み、グイグイやりだした。完全にやけ酒で、止めるホステスの声も全く耳に入らない。ついに、グラスを握り締めたままバリン。拳法で鍛えた握力がこんなところで成果を出した。
もうこうなったら解散するしかない。みんなを帰してオレはNと、別のキャバレー“ふうりゅう”、“サンローラン”とハシゴした。
「よし、きょうはオレもお前と同じだけ飲むで」
こんなとき、なぐさめの言葉なんか何の足しにもならない。ただNのつらい気持ちが痛いほどわかった。
若いころ、命がけでホレたホステスにだまされて、悔しい思いをしたことを思い出したのだ。男は何人もの女にホレて、フラれてしているうちに免疫が出来てくる。
そして最初に入った“グランド・サロン・十三”に再び戻ってきた。もう閉店間際。
「あーらお帰り。まだクヨクヨしてる。なによ、女の一人や二人」
先ほどの席にいたホステスが元気づける。
ビールを2、3本開けたころだろうか。いきなりNは席から立ち上がって叫んだ。
「あ〜、、やりた〜い!」
Nが席に座り直して再び飲み出すと、
「ねえ、私と今夜やってみる?」
Nより10歳ほど年上のホステスが言い出した。Nは、
「先輩、どうしましょ」
と聞いてくる。
「アホか、勝手にせい」
「ハイ。じゃ、お世話になります」
失恋した純情男が一転して軽い男になった。
オレくらいになると飲みすぎると役に立たないが、若いNなんかは関係ない。いくら飲んでも下半身はいつも元気で使用に耐える。
「ウフフ、かえって長持ちするからいいわ」
くだんのホステスは好きそうな笑いをNに投げかけていた。
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