|
※しょんべん横丁
きのうの5時、事務所にいたら
いま、キャバレーにハマっている
マスコミ関係者のG男から電話があった。
「大先生、いま、どこですか?」
「事務所」
「いま、十三にいるんですけれど、出て来れます?」
「いま、すぐ?」
「晩メシ、奢らせていただきます」
きのうは仕事が忙しかったけれど、
晩メシ奢りと聞いて、仕事をやめた。
十三駅の西口で待ち合わせた。
「大先生、どこへ行きます?」
「高級? 中級? 低級? ご予算は?」
「どこでもいいですよ」
オレ、遠慮して、大衆酒場“アナバ”に入った。
「きょうは、大先生に、お土産を持ってきました」
「それは、うれしいな」
「エヘヘヘヘ」
「何をくれるの?」
「価値あるものです」
「高いものやったら、オレ、いらんわ」
「いやいや」
「腕時計とか?」
「違います」
「なにやろ?」
「いまは、すごく価値があるものです。けど、もうしばらくしたら、価値は無くなると思います」
「食うもの? 高級メロンとか?」
「食べるものじゃないです」
「なんやろ?」
「いまは誰も持っていませんから、すごく価値があります」
「なにやろ?」
「もうすぐ、全国に出回ると思いますけれど」
「へ〜」
「いまは、希少価値があります」
「なにや?」
「まあ、お土産は、あとで」
「先に、くれや」
「あとで、あとで」
「まあええわ」
「ところで、大先生、ボクが指名しているS子、知ってるでしょ」
「おお、知ってる」
「あいつ、金持ちですね」
「オレ、知らん」
「店では、目立たない格好をしてますけれど」
「おお」
「行き帰りは、いい服を着てますよ〜」
「ふ〜ん」
「はいている靴でも、6万円の靴って言ってました」
「へ〜」
「あいつ、キャバレーで働いてるのは、生活費のためと違うみたいです」
「そしたら、なんで勤めてるの?」
「遊び半分の、小遣い稼ぎと思います」
「ふ〜ん」
「あいつ、毎日、家からタクシーで店に来てるんですよ」
「どこから?」
「服部から」
「服部やったら2000円くらいするやないか」
「はい。往復で4000円ですね」
「へ〜」
「最近、彼女が、ボクに言うんです」
「なんて?」
「ボクが店に来なかったら、面白くないって」
「うれしいこと言うてくれるやないか。けど、ホンマかぁ〜?」
「本当みたいです」
「なんで、分かる?」
「この前、ボク、福岡へ出張したんです」
「おお」
「その間、ずっと店を休んでましたから」
「へ〜」
G男のケータイがなった。
6時半だった。
「大先生も、一緒に行きます?」
「S子のところ?」
「はい」
「オレ、ヤメとく」
「奢りますから」
「ええわ。ヤメとく」
「そうですか」
「おお」
「そしたら、ボク、先に行かせてもらっていいですか?」
「ちょっと、待てや」
「はあ?」
「お土産は?」
「あっ、忘れてました」
G男、カバンから封筒を出してオレにくれた。
封筒を開けると、
中に、女の写真が1枚入っていた。
「34歳です」
「だれや?」
「まあまあまあ」
「オレに結婚しろって?」
「アハハハハ。違います」
「そしたら、だれや、これ?」
「これが、いま話題の結婚詐欺・連続不審死事件の女です」
モザイクは、かかっていなかった。
|