|
【経済コラム】ゴールドマンの沈没を防いだもう1つの力−M・ルイス
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=ae.Rfz72nYNk
1月17日(ブルームバーグ):振り返ってみると、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン市場の崩壊で最も興味をそそられるのは、損失の規模ではなく、配分のされ方だ。
ウォール街の金融機関には、各社そろって問題に巻き込まれる能力が備わっている。インターネット株が崩壊したときは、そろいもそろって関連株を買い持ち(ロング)にしていたし、北朝鮮熱が冷めたときも同国の債券投資で同様の状況になっていることだろう。
今回のサブプライム危機で不可解なのは、ゴールドマン・サックス・グループだ。同社だけが、その他すべての金融機関と正反対のポジションを取ったからだ。巨大な金融機関は通常、市場で並外れて特異な見方は示さない。
さらに不可解なのは、ゴールドマンがどういう理由でいかにもうけたのか、他の金融機関がほとんど知らなかったようだという点だ。これについては、同社の最高経営責任者(CEO)を務めた経歴を持つポールソン米財務長官がかつての同僚に助言したというようなばかげた陰謀説が出回っている。
私がみたところ、この謎を説明しようとする試みはこれまでに1回のみ。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のケイト・ケリー記者によるものだ。
同記者の記事は非常にいい内容だが、どうでもいいような詳細が含まれている。市場が崩壊したとき、昼食に誰が何を食べ、他人の巨額の金を投資することから生じるストレスを解消するため、あるトレーダーが変な時間にジムに行ったというたぐいだ。これを読むと、ゴールドマン社内の誰かが内情を暴露したに違いないという気分にさせられる。
恐らく真実か
しかし、同社はWSJの取材には協力しなかった。むしろ、同紙の記事に少々腹を立てたようで、特定のトレーダーに支払われたボーナスや特定の部門が稼いだ利益に関して、大げさに書き立てたと言っている。ただ、同社の文句もその程度なので、記事の内容は恐らく真実なのだろう。問題は記事が十分に掘り下げられていないという点だ。以下が同記事の内容。
2006年末までに、サブプライム住宅ローンやその他いわゆる債務担保証券(CDO)を作り出して販売した人たちは、ゴールドマンを他の金融機関と全く同じポジションを取る組織にさせた。サブプライム住宅ローン担保証券のトレーダーは、メリルリンチやシティグループ、ベアー・スターンズを含む他の金融機関同様に、ゴールドマンを沈没させたことだろう。
しかし、ゴールドマンで自己勘定取引をする優秀な2人が同社のCEOと最高財務責任者(CFO)に対し、サブプライム市場の鈍化を感じるので同社はポジションを売り持ち(ショート)にするべきだと訴える。この2人は実際にショートにするのだが、そのポジションがあまりに巨大で、同社全体で取られていたサブプライムのロングポジションを上回ったため、同社は市場崩壊時に巨額の利益を上げられた。
2つの力
記事の内容はこれで終わり。いい記事だ。しかし、これが何を意味するのか考えてほしい。ゴールドマンでも、サブプライムローンや関連証券の販売・取引に携わっていた人間は同社を他の金融機関と全く同じロングポジションにさせていたからだ。ゴールドマンが他社と違っていた唯一の点は、同社にはその道の専門家の判断を覆す力を持った全く別の部隊が存在したという事実だ。しかも、無言でそれを実行できたようで、トレーダーらにサブプライム関連取引の読みは間違っているからポジションを解消すべきだとも言わずに、彼らの取引を帳消しにした。
ウォール街では現在、リスク管理担当者が解雇や配置転換などの憂き目に遭っている。しかし、これら担当者の多くが実際にはリスク管理の本来の力を持っていなかったというのもかなり明白だ。例えば、リスクマネジャーはサブプライム部門の責任者の感情を考慮しなければならなかったという。モルガン・スタンレーは最近、これらマネジャーが各部門の責任者に対してではなく、CFOに直接報告する制度への変更を検討しているとしている。
しかし、ゴールドマンでは2つの力が同時に働いた。一つは同社をトラブルに巻き込む金融機関によくある力。もう一つは大手金融機関の愚かさから利益を得る非常に成績優秀なヘッジファンドのような力だ。しかも、後者の力は前者の力を上回った。
自社の従業員を含む金融業界が無能力者の集まりだと、ここ1年で取ったポジションでここまであからさまに示した例は、ゴールドマン以外には思い浮かばない。
今後、ゴールドマンで働く普通のトレーダーや販売担当者は、市場に関する自らの意見や判断には基本的に意味がないことを知りながら、働き続けることになるだろう。同社のトップにいる優秀な人間が市場を読み、普通の従業員の見方が違うと思えば、反対のポジションを取ってくれるのだ。しかしそれなら、トレーダー自体が必要なのだろうか?そして、このトップにいる優秀な人間が間違った場合、一体どうなるのだろうか。(マイケル・ルイス)
(マイケル・ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:What Does Goldman Know That We Idiots Don't?: Michael Lewis (抜粋) {NXTW NSN JURVE50UQVIA <GO>}
|