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サブプライムの現実:宝物まで失った哀れな女の子の泣き声が聞こえる
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003003&sid=amV8NcfqBtBo&refer=jp_stocks
12月21日(ブルームバーグ):カリフォルニア州の住宅保有者、クリストファー・オールトマン氏が住宅ローンを支払えなくなったとき、米銀シティグループのチャールズ・プリンス最高経営責任者(CEO、当時)が評価損で払ってくれた。
同氏への融資の債権は、シティが保有する証券の裏付けに含まれていたからだ。しかし、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連でシティが失ったとみられる166億ドル(約1兆8800億円)の一部は、住宅ローン担保証券の価値下落に賭けた投機家の懐に入った。ウォール街の「グループ・オブ・ファイブ(G5)」が2005年に開発したサブプライム関連のデリバティブ(金融派生商品)が、そのような賭けを可能にした。
金融機関はサブプライムローンを証券化し、仕組み金融商品として販売した。リスクは投資適格級の格付けの背後に隠され、複雑な商品の真の価値は誰にも分からなくなった。国際通貨基金(IMF)の金融セクター専門家、ランドール・ドッド氏は「このような仕組み商品はウォール街に巨額の利益をもたらした」として、「結局のところ、本質にあるのは貪欲さと過剰なリスクテークだ」と論評した。
デリバティブはリスクを増幅した。サブプライムローンに基づくデリバティブを使って、投機家は特定の住宅ローン債権の集まりでデフォルト(債務不履行)が増える可能性に賭けることができた。このデリバティブの増幅効果のおかげで、少数のサブプライム借り手のデフォルトが、世界の信用市場をまひさせることになった。
中銀が資金供給
今年1−3月(第1四半期)にはサブプライムローンの13.8%で返済が滞った。デフォルト増でサブプライム証券への需要は急減し、金融商品の価値への疑念は世界の運用ファンドに広がった。担保の価値への不信から融資は停止状態となり、米連邦準備制度と欧州中央銀行(ECB)は8月10日までに、合わせて2750億ドルを銀行システムに注入していた。
ノーザン・トラストのチーフエコノミスト、ポール・カスリール氏は、デリバティブのヘッジ機能が投資家を果敢にしたと指摘する。「デリバティブはリスクを減らすわけではなく、移転するだけだ」が、「デリバティブ市場の発展が低コストでのリスク移転を可能にし、より大きなリスクを取ることを促した」と同氏は分析した。
01−06年にかけて、住宅価格は全米で50%上昇した。住宅ローン担保証券投資やその安全性を信じる取引は有利だった。ところが、06年7月から住宅の供給過剰が始まりローン延滞が増え始めると、住宅ローンと関連証券のデフォルトを見込む取引が活発になった。
張本人も犠牲者に
サブプライム問題による経済混乱を引き起こした張本人の多くは、犠牲者にもなった。サブプライム住宅金融大手ニュー・センチュリー・ファイナンシャルの役員だったデービッド・アインホーン氏は、住宅ローン販売担当者は「借り手の返済能力ではなく、借り換え能力に基づいてローンを販売した」と話す。
無理な貸し付けで借り手がデフォルトしても、住宅金融会社に手数料は入る。しかしこのような業者の多くは今、職もお金もない。カリフォルニア州で信用スコアが850点中の420点の借り手にまで貸し込んでいたダニエル・サデック氏のクイック・ローン・ファンディングは、8月にシティグループが融資を中止し廃業に追い込まれた。
金融機関は高利回りの証券を組成するため、サブプライムローンを買い上げていた。ここでも、借り手がデフォルトしてもバンカーに手数料は入る。そして銀行の損失は今、膨れ上がっている。世界の大手金融機関は07年7−12月(下期)に合わせて890億ドルのサブプライム関連評価損を計上する見込みだ。「デリバティブは、リスクを分散すれば世界は安全になるという幻想を抱かせたが、実はバランスシートから切り離したと思っていた後でもリスクは残っていた」とキーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズの住宅ローン業界アナリスト、ボーズ・ジョージ氏は指摘した。
拡大
損失拡大は止まらない。フロリダ州の学校や自治体が財布代わりに使う州のファンドはサブプライム関連証券を保有していることが分かり、270億ドルの運用資産のほぼ半分が引き揚げられた。金融庁によると、日本の銀行36行は4−9月に2440億円の評価損を計上した。トナカイが人口よりも多い村を含めたノルウェー北部の8つの町と村も、サブプライム証券で合計3億5000万クローネ(約70億円)を失った。
一方、住宅ローン業界の苦境を予想した投資家は、うまくやった。テキサス州ダラスのヘッジファンド運用者J・カイル・バス氏は最も悪質そうな住宅金融会社のローンを裏付けとした証券の下落を見込む取引で1億1000万ドルの元手を約6億ドルに増やした。ドイツ銀行の資産担保証券トレーディング責任者のグレッグ・リップマン氏は、価値下落を見込む取引でドイツ銀の損失を抑えた。米ゴールドマン・サックス・グループは住宅ローンの焦げ付き増を読み切り、損失を回避した。
合成債務担保証券(シンセティックCDO)などのデリバティブを含む投資商品の説明資料は量が多く、読まずに済ます投資家も多い。プリズマ・キャピタル・パートナーズのマネジングパートナー、ギリシュ・レディ氏は「深く掘り下げて投資商品の担保資産を分析した人は、デフォルト増を見越して利益を上げた」と語る。
ピンクの自転車
負け組のなかでも最も高い代償を支払ったのは、ボストンに住んでいた6歳のサバンナ・ネスビットちゃんだ。彼女の家を差し押さえにやって来た保安官事務所の職員らは、サバンナちゃんが誕生日に祖母に買ってもらったピンクの自転車を中に置き忘れたまま、家の鍵を取り替えてしまった。「毎晩泣いて新しいのを買ってと言うけれど、私もお金に不自由していてできない」と祖母のアンヌ・マリー・ウィンターさんはため息をつく。彼女の家も差し押さえられているという。サデック氏のクイック・ローンで変動金利型ローンに借り換えたオールトマン氏は、今のところ瀬戸際の状態だ。
ウォール街の「G5」会議の主催者だったドイツ銀行は最近、今度はサブプライムではなく信用力の水準が1つ上の「Alt−A」住宅ローンの証券で新しい指数を作ろうと、会議を始めた。Alt−Aローンのデフォルトに賭けて、また大きな利益が狙えるかもしれない。
原題:Savannah Cries About a Bicycle Left Behind in Reset of Subprime(抜粋) {NXTW NSN JTDW2G1A74EA <GO>}
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