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1月10日(ブルームバーグ):次にはじけるバブルは、「スーパースター」グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長の評判かもしれない。
最も偉大な中央銀行総裁との評判を手に2006年にFRBを去ったグリーンスパン氏だが、米リセッション(景気後退)リスクの高まりに伴い、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)やシンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のエコノミストから2000−05年の住宅ブーム時の前議長の政策に対する批判が浮上し、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿やテレビ出演で反論する羽目になった。
「バブルの歴史−チューリップ恐慌からインターネット投機へ」の著書のあるエドワード・チャンセラー氏は「グリーンスパン氏の評判のバブルが膨れたのは、家計資産を増大させたからだ」として、従って、家計資産が「減少するに伴い、スーパースターとしての地位も脅かされる」と分析した。
損なわれかねないのは、同氏への評価ばかりではない。同氏がFRB議長としての18年半に実践してきた政策も、見直しの対象となる。グリーンスパン氏は規制を嫌った。金利という手段を使って資産バブルをつぶすことも避けて、住宅価格上昇と住宅投資ブームを放置した。そのバブルは今はじけ、米経済をリセッションに陥れようとしている。
グリーンスパン氏はインタビューで、そのような批判は規制や金融政策の限界を無視していると反論した。しかし、バーナンキ現FRB議長は既に、前議長の放任主義から距離を置き、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローンに関する新しい規制を提案している。
総じて高い評価
プリンストン大学教授で元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏やカーネギー・メロン大学のアラン・メルツァー教授、ブランダイス大学のスティーブン・チェケッティ教授らは総じて、FRB議長としてのグリーンスパン氏の手腕を高く評価している。同氏の議長在任期間中に、米経済は2回のリセッションを1年未満で切り抜けるとともに、過去最長の景気拡大を謳歌(おうか)した。
しかしながら、グリーンスパン氏への称賛は、住宅市場を中心とした景気減速を受けて、やや陰りを見せ始めている。05年の論文で同氏を史上最高の中銀総裁だろうとたたえたブラインダー氏は、今ではそれに条件を付ける。金融政策の運営では依然、この評価に当てはまるが、銀行業界の監督という点ではそれほどの高い評価にはならないとブラインダー氏は述べた。
ブラインダー氏は「FRBや他の規制当局は行動が遅れた」として、「より良い規制・監督システムによって今回の問題をはるかに軽微に済ますことは可能だった」との考えを示した。
「哲学」
AEIのエコノミスト、デスモンド・ラックマン氏も、規制を嫌うグリーンスパン氏の「哲学」が過剰融資に当局が歯止めをかけ損ねた原因だと指摘する。グリーンスパン氏はインタビューで、住宅融資ブームの最中もFRBの銀行監督当局の担当者は懸命に働いていたが、「規制当局にできることと、できないことについて現実的になる必要がある」と反論。「内部告発以外によって不正が発見されることは非常にまれ」で、当局の「調査によって見つかることはまずない」と語った。
ブラインダー氏らはまた、過度の低金利を長く維持し過ぎたことで住宅バブルを育てた点でもグリーンスパン前議長を批判する。グリーンスパン時代の米連邦公開市場委員会(FOMC)は03年6月にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を45年で最低の1%に引き下げ、1年間同水準に据え置いた。その後の引き締めも0.25ポイントずつと緩やかだった。「前議長の成績は全体として『A』か『Aプラス』だが、この時期の金融政策に関しては『B』だ」とブラインダー氏は述べた。
メルツァー教授は、グリーンスパン氏は「偉大なFRB議長だった」としながらも、低金利維持のリスクについての警告を無視した点で誤りを犯したと指摘する。同教授は、グリーンスパン氏は「自分に甘過ぎる」と論評した。デフレを恐れ過ぎたことが誤りの基になったと付け加えた。
過剰貯蓄
グリーンスパン氏は、住宅バブルが膨らんだのは米国の金融政策の結果ではなく、世界の過剰貯蓄が長期金利を低く抑えた結果だと主張する。同氏はその証拠として、2000年代初めには米国ばかりでなく世界の他の諸国でも住宅価格が上昇したことを挙げた。
チェケッティ教授によれば、グリーンスパン氏の業績が今見直されるのは自然なことだ。同教授は「距離を置くことで、初めて見えるものがある」として、「時がたつとともに、グリーンスパン氏の残したものについて、よりバランスのとれた見方が確立されるだろう」と話した。
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