|
次なる試練はCDS市場か−「時限爆弾」の中でファンドなど戦々恐々
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=aTnzwCDEnnmY&refer=jp_top_world_news
5月20日(ブルームバーグ):3月14日金曜日、ヘッジファンドアドバイザーのティム・バックシャル氏(37)はパニックに陥るまいと気力を奮い立たせていた。カリフォルニア州ウォルナットクリークにあるクレディット・デリバティブズ・リサーチ社のデスクに座る同氏の前には、5つのコンピューター画面があった。
証券大手のベアー・スターンズの株価は、同日の取引開始以来50%下落していた。ベアー・スターンズと取引のあるバックシャル氏の顧客ファンド運用者らは、同社が破産申請の瀬戸際にあるとの不安にかられ、ベアー・スターンズがデフォルト(債務不履行)した場合に備えクレジット・デフォルトスワップ(CDS)を購入するべきかどうかと悩んでいた。
バックシャル氏は彼らにこう説明した。第1に、CDSの保証料は分刻みで天井知らずに急騰している。第2に、CDSの売り手の金融機関にも破たんリスクがある。ベアー・スターンズが倒れるときは他の金融機関も一蓮托生(いちれんたくしょう)となる恐れがあるからだ。その場合、CDSを購入した顧客は役に立たない保険に数百万ドルを払ったことになる。
カウンターパーティー(相手方)と呼ばれるCDSの売り手が契約を履行するだけの資金を持っているかどうかは、買い手には分からない。バックシャル氏によれば「実態が分からないなかでの恐慌状態」だ。
結局、CDS市場はこの日、崩壊しなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)と米銀JPモルガン・チェースがベアー・スターンズ救済に入り、CDSの売り手に支払い義務が生ずる事態は回避されたからだ。
CDS市場の崩壊を恐れるのはバックシャル氏とその顧客ばかりではない。投資家ジョージ・ソロス氏は、CDS市場での支払い不能の連鎖が次の世界的金融危機を引き起こす可能性を指摘する。
ダモレスクの剣
1990年代初めにJPモルガンのバンカーらが開発したCDSの市場規模は今や、保証対象債務の額面で62兆ドル(約6450兆円)に達した。同市場は規制の対象になっておらず、CDSの売り手に十分な資金があるかどうかを示す公の資料もない。相手方が契約義務を履行しないリスク(いわゆる「カウンターパーティーリスク」)は時限爆弾のようなものだ。
ソロス氏は著書の中で、「ダモレスクの剣(迫り来る危機)だ」と書いている。「これほどの規模の市場を規制なしに野放しにすることは許されない」と同氏は言う。
元米財務省のエコノミストで現在はルイジアナ州立大学の経営大学院で教えるジョゼフ・メーソン氏は、FRBがJPモルガンによるベアー・スターンズ買収の取りまとめを急いだ理由の1つは、このダモレスクの剣が落ちるのを防ぐためだったと話す。「FRBはCDS市場のカウンターパーティーリスクを監視してこなかった結果、どこにリスクがあるのか、どの金融機関に融資すればいいのかが分からなかった。このため不安にかられたのだろう」と同氏は述べた。
救われたのはJPモルガン?
そのカウンターパーティーの1社はほかならぬJPモルガンだ。メーソン氏は、「実はベアー・スターンズではなく、JPモルガンの救済だった」と語った。
CDSの売り手に支払能力があるかどうかを監視する公的機関はない。また、買い手は実際に債券を保有していなくてもCDSを購入できる。CDSは保険であると同時にデフォルトリスクの動向に投機する手段なのだ。一軒の家に、所有者以外が保険をかけ、火事で燃えてしまったら皆が保険金を貰える仕組みだ。市場規模は2000年以来、毎年2倍になってきた。複数の企業の債務に対するCDSをまとめた指数の存在も市場規模拡大に寄与した。
2002年以降のジャンク(高リスク・高利回り)債デフォルト率低下のなかで、CDS市場が試されることは今までなかった。しかし、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはジャンク債のデフォルト率が09年4月には前年同月比で4倍の6.1%に上昇すると予想している。
デフォルトが発生すればCDSの買い手は売り手から数千億ドルを回収しようと走り回るだろうが、その多くは回収し損ねるだろうと元シティグループのデリバティブトレーダー、サティアジット・ダス氏は予想し、「金融危機を複雑化させる要因だ」と指摘した。
|