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■新作『本当にヤバイ!欧州経済』発売中!
日曜スペシャル『本当にヤバイ!欧州経済』番外編
本編はこちらhttp://www.amazon.co.jp/dp/4883927091
ドバイショックが襲った欧州!
UAE向けの英国の銀行貸出495億ドル フランスは113億ドル、債権者の70%以上は欧州だった。それが焦げ付いたらどうなるのか?
リーマンショックで体力を失いふらふらの銀行、はじける国内バブル、そして、溶け続ける銀行資産、ギリシャの国家的な粉飾も表面化、ユーロはそして欧州経済は耐えきれるのか?リーマンショックを予言した『ドル崩壊!』を監修した渡邉哲也と今一番人気の経済作家三橋貴明が再びタッグを組んで本当の欧州経済をえぐりだす!!
『本当にヤバイ!欧州経済』は彩図社からの発売です。
ということで宣伝終了!
☆ここから番外編
■ドバイショックは、欧州にどのような影響を与えるか
11月25日突如として、ドバイの政府系投資持ち株会社であるドバイワールドは債務の繰り延べを求めた。政府系ということもありその被害はドバイ政府に広がるという懸念が拡がった。そして、ドバイのデフォルトにより、その被害はUAE全般に拡がるという懸念も発生し、世界をドバイショックが襲ったのであった。万が一、UAEがデフォルトとなるとその被害は非常に大きなものになる。また、市場の織り込みも完了しておらず、急激な変化によるダメージは投資側の資金ショートによる連鎖も想定されたのであった。
■ドバイ政府はドバイ・ワールド債保証していない−当局者
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aljpdjKMFmt8
■根拠
http://ftalphaville.ft.com/lib/data/filecache/attachment/N/a/Nakheel-Development-1-Prospectus.pdf
P35
Dubai World is a public corporation established pursuant to Law No. 3 of 2006 issued by His Highness
Sheikh Mohammed Bin Rashid Al-Maktoum as Ruler of Dubai. Investors should note, however, that the Government of Dubai does not guarantee any indebtedness or any other liability of Dubai World.
☆目論見書に政府非保証債であることが明記されているため、債権者は政府に請求できないことがほぼ確定し、ドバイワールドのデフォルトは、直接的にはドバイ政府のソブリン債などに影響を与えないことが確認されそうである。
この場合、政府資産による補填が望めなくなるため、債権者の損失額が増加することになる。ドバイは7つの首長国でできた連合国家であり、アブダビなど産油利益が望める他の首長国からの支援に期待し、それを前提に欧州など他国からの投資活動が行われてきた。しかし、この前提が完全に覆されたことになる。投資者である欧州を主体とした金融セクターは、保有するアラブ関連債権の評価見直しを迫られることになる。
☆UAE向け債権額 地域別
Total 1231.1
Japan 89.6 Europe 886.2 USA 106.2 Others 149.0
国別
United Kigdom 502.0 France 113.0 Germany 106.4 United States 106.2
Japan 89.6 Switzerland 45.6 Netherlands 44.6 Austria 19.1 Belgium 13.9
Spain 8.9 Canada 6.9 Australia 6.0 出典BIS
参考資料
■湾岸協力会議(GCC)諸国の通貨統合に向けた取り組み状況 2008
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/itaku0804b.pdf
☆湾岸諸国は経済統合と通貨統合に向けて動いてきたが、今回のドバイショックでその金融センターとして予定されてきたドバイが崩壊、通貨統合は完全な暗礁に乗り上げたと言える。そして、それに関わってきたHSBC*1やSC*2などの英国植民地銀行に大きなダメージを与えることになったのである。
*1シリア生まれのユダヤ人サッスーンが創業した銀行、イスラム教の戒律上、イスラム教徒からは金利を取れないため、金融業務をユダヤ人が受け持ってきた。イスラムはユダヤに出資し、それをユダヤ人が融資、その利益を配当としてイスラムに返却する形態の投資活動が中心、その一端を請け負ってきたのがサッスーンであった。その拡大の原資となったのはアヘン戦争への関与であり、第二次世界大戦前の上海租界の中心銀行でもある。第二次世界大戦後も英国の租借地香港金融の中心であり、香港ドルの発券銀行でもある。
*2英国東インド会社を源流に持つ植民地銀行、HSBCとともに英国のアジアの金融の代理人であり、香港ドルの発券銀行である。アジア通貨危機後の混乱期に乗じて、アジアでの主導的地位を拡大し、韓国の第一銀行を完全子会社化している。
■英国への影響
英国の金融機関は、アイルランドなど周辺国と自国内のバブルの崩壊、米国サブプライムショックによる証券化バブルの崩壊という二重苦に苦しんできた。英国は鉱工業生産など産業の衰退で失われた利益と経済構造を金融利益に求め、旧植民地を利用したタックスヘイブンを拡大、それを自国の金融センターであるCITYで運用するという経済構造を構築してきたのであった。
アメリカの911事件後、米国のイスラム資金への監視が強まり、それを嫌ったオイルマネーやイスラムマネーの流入を容認することで金融規模を拡大してきたのであった。
しかし、今回のサブプライムショックとドバイショックにより、これが完全に裏目に出たことになる。
すでに、先に始まったサブプライム問題と国内バブルの崩壊により、国内向け巨大銀行であるRBS、ロイズは破綻の危機に面してしまった。この両行ともスコットランドの地域通貨であるスコットランドポンド(英国ポンドの兌換紙幣)の発券銀行であるため、英国としては潰すにつぶせない銀行でもあった。英国政府はこれを救済するため膨大な額の資本注入を行い、そして不良債権を買い取らざる得ない状況に追い込まれたのであった。これにより民間債務であった銀行の負債は政府の負債に置き換わることになったのである。そこに、今回のドバイショックが直撃した。英国銀行の中でも比較的健全とされてきた海外向け銀行の二大巨頭がHBSCとSCである。この二行にも膨大な額の焦げ付きが発生した。
■ドバイ・ワールドへの英銀エクスポージャーは50億ドル=報道
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12754720091203
☆つまり、今回のドバイワールドの再編計画では、その投資額の65%が損失として発生する見込みとなっている。これがドバイワールドだけに限定されるならよいが、バブル崩壊の影響はドバイ全域に広がっており、ドバイ地域の他の不動産会社も同様の事態になっているものと思われる。
また、今回の一件で、アラブ地域全体へ信用不安が拡大しており、今後の他国からの投資は絶望的、そして、長期的なキャピタルフライトによる不動産バブルのさらなる崩壊が懸念されている。
■ドバイ信用不安、UAEの銀行財務格下げにつながる可能性=ムーディーズ
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-12701520091130
■さらにドバイ関連企業数社をジャンクに引き下げ=フィッチ・S&P
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12750720091203
☆ドバイの資金構造は、産油国アブダビなどからの資金がメインであり、そこに英国を中心とした欧州系に資金が流入し、それを拡大させる構造になっていた。
また、他国からの資金は英国のCITYなどの金融センターを通じて、それが間接的にドバイに流れる仕組みでもあった。この基本構造が失われたことで、中東と他国との資金の流れが逆流する形となると思われる。また、アラブ地域の通貨は石油決済の関係上、ドルペッグとなっており、その債権の多くはドル建てで決済されている。つまり、リワインドの過程でドルの需要が高まることにもなる。逆流過程で大きな為替変動が発生する可能性も高く、将来的な資源などの換金売りも予測されている。
■欧州新興国への影響
資源バブルによる潤沢な中東資金は、英国の金融センターを通じて欧州企業や欧州銀行にも多く投資されてきた。しかし、その資金の引き揚げとその影響が懸念される事態となっている。欧州系銀行の多くは、欧州先進国よりも、高い投資利回りが得られる中東欧諸国への投資額を増加させてきた。先のHSBCやSCなども欧州新興国への投資姿勢を拡大してきた歴史がある。しかし、中東向け融資の焦げ付きと損失により、自己資本維持のための換金売りが行われる可能性もある。
この場合、中東欧など新興国のバブル崩壊の二番底が発生する可能性もあり、これが北欧の中小国に波及し、ドミノが発生する可能性も捨てきれない。
投資構造で行けば、東中欧の新興国が破綻すると、中東欧諸国への投資額が大きいスウェーデンなどの北欧先進国、オーストリアなどの中小国は持たないことになる。そして、それはフランスやドイツなど大きな国を巻き込みながら、雪崩的な破綻の連鎖が起きる構造になっている。リーマンショック後の破綻連鎖は各国政府の協調により最悪の事態は免れたが、再び同様のショックが襲うと国際社会がそれを抱え切れるかは不明である。
■アジアへの影響
英国のCITYが欧州とアラブの金融センターであるならば、アジアではシンガポール、マレーシア、香港がそれにあたるのである。香港から英国に本社を移したHSBCであるが、先日、再び香港に本社機能を移転している。また、イスラム金融という側面で見た場合、地域的にイスラム教徒も多いマレーシアと金融センターであるシンガポールがその中心であり、この3つの核がアラブマネーのアジア金融センターとなっている。今回、この資金の多くが失われたため、その金融センター機能は低下することになると思われる。
そして、アラブ資金の投資先である企業などの換金売りも予測されることになる。
中長期的に国際金融を見た場合、サブプライムショックで失われた米国資金を資源バブルに沸くオイル(アラブ)マネーが補ってきた。その投資先として、アジアなどの新興国もその対象となっており、底支えしてきたアラブマネーの消失は、アジアの危機にもつながる可能性がある。
当然、これは最悪のシミュレーションであり、これを阻止するために政治的な話し合いや対応が行われるのは間違いのないところである。このドミノ連鎖をどのように食い止め、地雷や時限爆弾を安全に処理できるかが今後の国際社会の焦点となるだろう。
2009年12月5日 渡邉哲也
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