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【米経済コラム】「レベル3」はウォール街の救世主か−J・ワイル
4月23日(ブルームバーグ):ウォール街の広報担当者のマニュアルに書かれているナンバーワンのルールは、「価値評価が難しい資産で大損を出したときは会計規則のせいだとわめけ」だ。
では、そのようなつかみどころのない資産で利益が出た場合はというと、ルール・ナンバー2の出番となる。「会計規則で認められる限り、資産の種類については口にするな」だ。
ここ数カ月、多くの企業幹部や政治家が金融機関のバランスシート悪化は保有資産の適正評価を求める会計規則が原因だと主張している。8日には国際通貨基金(IMF)までがこれに加わり、緊張が高まっている時期には会計基準のやや緩やかな適用が必要ではないかと示唆した。
金融機関があいまいな時価評価に基づいてバランスシート上の流動性の低い資産について未実現利益を計上した場合には、これに匹敵するような議論は沸いてこない。しかしながら、評価困難な資産による未実現利益がなかったら、ゴールドマン・サックス・グループは前四半期(2007年12月−08年2月)に大した利益を上げることはできなかっただろう。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの利益は大幅に減り、モルガン・スタンレーは利益なしとなったはずだ。
こういうことは、決算発表では分からない。投資家は各社が四半期財務報告書を提出する数週間後まで待たなければならない。そこには、いわゆる「レベル3」の資産と負債についての脚注が付いている。
FAS157
適正評価について簡単に説明しよう。米財務会計基準審議会(FASB)の規則「FAS157」によれば、レベル1の資産とは、株式のように市場価格が得られるものだ。レベル2は、市場価格はないものの、市場で観察可能な要素に基づいて価値を評価する資産。そしてレベル3資産は各社が「市場参加者が価値評価に使用すると思われる要素についての独自の推定」によって価値を決める。
レベル3資産が悪いということはないのだが、その定義上、このような資産の評価はより不確実で、バイアスがかかりやすい。レベル3資産は新しいものでもない。大手投資銀行が昨年FAS157を採用するまではそのように呼ばれていなかっただけだ。
モルガン・スタンレーは12−2月にレベル3資産から42億4000万ドル(約4360億円)の未実現純収益を得た。これは同社の税引き前利益のほぼ2倍だった。レベル3のデリバティブ(金融生商品)資産による純収益は83億9000 万ドル。同社はこれを損益計算書に載せたトレーディング収益に含めた。これがなければ、同社のトレーディング損益は50億ドルの「損失」となるところだった。
ゴールドマンのレベル3資産による未実現収益は20億7000万ドルで税引き前利益の96%相当だった。リーマンはレベル3の企業株式について6億9500 万ドルの未実現収益を計上したが、これは同社の税引き前利益を若干上回る水準だ。
各社の決算の正確性に疑義を呈することがこのコラムの目的なのではない。会計規則についての議論にバランスを取り戻すべきときだというだけのことだ。レベル3資産の上昇を利益として認める規則は、下落時にも各社が正直に申告することが前提となっている。
保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は07 年10−12月(第4四半期)に、「スーパーシニア」クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の評価額を115億ドル引き下げた。AIGの言う通りにこれが「幻想」であるならば、モルガン・スタンレーの利益の大きな部分も幻想だということになるだろう。(ジョナサン・ワイル)
(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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