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 1月10日(ブルームバーグ):次にはじけるバブルは、「スーパースター」グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長の評判かもしれない。

最も偉大な中央銀行総裁との評判を手に2006年にFRBを去ったグリーンスパン氏だが、米リセッション(景気後退)リスクの高まりに伴い、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)やシンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のエコノミストから2000−05年の住宅ブーム時の前議長の政策に対する批判が浮上し、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿やテレビ出演で反論する羽目になった。

「バブルの歴史−チューリップ恐慌からインターネット投機へ」の著書のあるエドワード・チャンセラー氏は「グリーンスパン氏の評判のバブルが膨れたのは、家計資産を増大させたからだ」として、従って、家計資産が「減少するに伴い、スーパースターとしての地位も脅かされる」と分析した。

損なわれかねないのは、同氏への評価ばかりではない。同氏がFRB議長としての18年半に実践してきた政策も、見直しの対象となる。グリーンスパン氏は規制を嫌った。金利という手段を使って資産バブルをつぶすことも避けて、住宅価格上昇と住宅投資ブームを放置した。そのバブルは今はじけ、米経済をリセッションに陥れようとしている。

グリーンスパン氏はインタビューで、そのような批判は規制や金融政策の限界を無視していると反論した。しかし、バーナンキ現FRB議長は既に、前議長の放任主義から距離を置き、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローンに関する新しい規制を提案している。

総じて高い評価

プリンストン大学教授で元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏やカーネギー・メロン大学のアラン・メルツァー教授、ブランダイス大学のスティーブン・チェケッティ教授らは総じて、FRB議長としてのグリーンスパン氏の手腕を高く評価している。同氏の議長在任期間中に、米経済は2回のリセッションを1年未満で切り抜けるとともに、過去最長の景気拡大を謳歌(おうか)した。

しかしながら、グリーンスパン氏への称賛は、住宅市場を中心とした景気減速を受けて、やや陰りを見せ始めている。05年の論文で同氏を史上最高の中銀総裁だろうとたたえたブラインダー氏は、今ではそれに条件を付ける。金融政策の運営では依然、この評価に当てはまるが、銀行業界の監督という点ではそれほどの高い評価にはならないとブラインダー氏は述べた。

ブラインダー氏は「FRBや他の規制当局は行動が遅れた」として、「より良い規制・監督システムによって今回の問題をはるかに軽微に済ますことは可能だった」との考えを示した。

「哲学」

AEIのエコノミスト、デスモンド・ラックマン氏も、規制を嫌うグリーンスパン氏の「哲学」が過剰融資に当局が歯止めをかけ損ねた原因だと指摘する。グリーンスパン氏はインタビューで、住宅融資ブームの最中もFRBの銀行監督当局の担当者は懸命に働いていたが、「規制当局にできることと、できないことについて現実的になる必要がある」と反論。「内部告発以外によって不正が発見されることは非常にまれ」で、当局の「調査によって見つかることはまずない」と語った。

ブラインダー氏らはまた、過度の低金利を長く維持し過ぎたことで住宅バブルを育てた点でもグリーンスパン前議長を批判する。グリーンスパン時代の米連邦公開市場委員会(FOMC)は03年6月にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を45年で最低の1%に引き下げ、1年間同水準に据え置いた。その後の引き締めも0.25ポイントずつと緩やかだった。「前議長の成績は全体として『A』か『Aプラス』だが、この時期の金融政策に関しては『B』だ」とブラインダー氏は述べた。

メルツァー教授は、グリーンスパン氏は「偉大なFRB議長だった」としながらも、低金利維持のリスクについての警告を無視した点で誤りを犯したと指摘する。同教授は、グリーンスパン氏は「自分に甘過ぎる」と論評した。デフレを恐れ過ぎたことが誤りの基になったと付け加えた。

過剰貯蓄

グリーンスパン氏は、住宅バブルが膨らんだのは米国の金融政策の結果ではなく、世界の過剰貯蓄が長期金利を低く抑えた結果だと主張する。同氏はその証拠として、2000年代初めには米国ばかりでなく世界の他の諸国でも住宅価格が上昇したことを挙げた。

チェケッティ教授によれば、グリーンスパン氏の業績が今見直されるのは自然なことだ。同教授は「距離を置くことで、初めて見えるものがある」として、「時がたつとともに、グリーンスパン氏の残したものについて、よりバランスのとれた見方が確立されるだろう」と話した。

メリル、マージンコールでベアーSファンドにとどめ−自社に跳ね返る
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=ayGdn55oJB5Y&refer=jp_commentary
  1月3日(ブルームバーグ):2005年−07年半ばにかけて、ウォール街の伝統ある証券会社2社が繰り広げたやり取りは結局、双方に打撃を与えた。

1914年創業のメリルリンチは、ベアー・スターンズ(1923年創業)のヘッジファンドに数億ドル規模の債務担保証券(CDO)を販売した。購入代金のうちCDOの額面の約90%相当は、メリルからの融資によって賄われていた。ファンドが保有するCDOの価格が07年6月に下落した際、メリルは証拠金積み増しを求めた。

事情に詳しい複数の関係者によれば、べアー・スターンズ幹部は同社が資産売却を余儀なくされればCDO市場全体の相場下落につながるとして時間的猶予を求めたが、メリルはこれを聞き入れなかった。

ラルフ・シオフィ氏が運用していたベアー・スターンズのファンドは、メリルなどのマージンコールに応じるため07年6月に38億ドル(約4150億円)相当のCDOを売却した。投げ売りでCDO価格はさらに下落。メリルが自社バランスシート上に保有していた230億ドル相当のCDOの価値も下落した。メリルは住宅ローン関連資産をすべて見直して79億ドルの評価損を計上し、07年7−9月(第3四半期)の赤字につながった。

オプティーク・キャピタル・マネジメントの金融サービス業界アナリスト、ウィリアム・フィッツパトリック氏は「メリルはベアー・スターンズのファンドに資金確保の時間を与えるべきだった。そうすれば自社の資産の評価額を引き下げずに済んだ」と指摘した。

ベアー・スターンズとメリルはこの件についてコメントを控えた。メリルは07年6月15日にシオフィ氏のファンドの8億5000万ドル相当のCDOを差し押さえた。同社はその売却を図ったが、額面1ドルに対し20セントの価格を提示され断念した。シオフィ氏のファンドは7月に破産申請し、投資家に16億ドルの損失を与えるとともに、全世界でのCDO評価額見直しを引き起こした。

メリルがベアー・スターンズのファンドに時間を与えていたら、ファンドの問題が明らかになる前に自社の保有CDOを減らすかクレジット・デフォルト・スワップ(CDO)を購入してヘッジする時間もあっただろうとフィッツパトリック氏は指摘する。しかし、そのような機会はベアー・スターンズのファンドの破たんとともに失われた。「結果は同じだっただろう」が、秩序ある離婚も可能だったのに、メリルは早く届けを出し過ぎたと同氏は話した。

サブプライムの現実:宝物まで失った哀れな女の子の泣き声が聞こえる
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003003&sid=amV8NcfqBtBo&refer=jp_stocks
12月21日(ブルームバーグ):カリフォルニア州の住宅保有者、クリストファー・オールトマン氏が住宅ローンを支払えなくなったとき、米銀シティグループのチャールズ・プリンス最高経営責任者(CEO、当時)が評価損で払ってくれた。

同氏への融資の債権は、シティが保有する証券の裏付けに含まれていたからだ。しかし、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連でシティが失ったとみられる166億ドル(約1兆8800億円)の一部は、住宅ローン担保証券の価値下落に賭けた投機家の懐に入った。ウォール街の「グループ・オブ・ファイブ(G5)」が2005年に開発したサブプライム関連のデリバティブ(金融派生商品)が、そのような賭けを可能にした。

  金融機関はサブプライムローンを証券化し、仕組み金融商品として販売した。リスクは投資適格級の格付けの背後に隠され、複雑な商品の真の価値は誰にも分からなくなった。国際通貨基金(IMF)の金融セクター専門家、ランドール・ドッド氏は「このような仕組み商品はウォール街に巨額の利益をもたらした」として、「結局のところ、本質にあるのは貪欲さと過剰なリスクテークだ」と論評した。

  デリバティブはリスクを増幅した。サブプライムローンに基づくデリバティブを使って、投機家は特定の住宅ローン債権の集まりでデフォルト(債務不履行)が増える可能性に賭けることができた。このデリバティブの増幅効果のおかげで、少数のサブプライム借り手のデフォルトが、世界の信用市場をまひさせることになった。

              中銀が資金供給

  今年1−3月(第1四半期)にはサブプライムローンの13.8%で返済が滞った。デフォルト増でサブプライム証券への需要は急減し、金融商品の価値への疑念は世界の運用ファンドに広がった。担保の価値への不信から融資は停止状態となり、米連邦準備制度と欧州中央銀行(ECB)は8月10日までに、合わせて2750億ドルを銀行システムに注入していた。

  ノーザン・トラストのチーフエコノミスト、ポール・カスリール氏は、デリバティブのヘッジ機能が投資家を果敢にしたと指摘する。「デリバティブはリスクを減らすわけではなく、移転するだけだ」が、「デリバティブ市場の発展が低コストでのリスク移転を可能にし、より大きなリスクを取ることを促した」と同氏は分析した。

  01−06年にかけて、住宅価格は全米で50%上昇した。住宅ローン担保証券投資やその安全性を信じる取引は有利だった。ところが、06年7月から住宅の供給過剰が始まりローン延滞が増え始めると、住宅ローンと関連証券のデフォルトを見込む取引が活発になった。

             張本人も犠牲者に

  サブプライム問題による経済混乱を引き起こした張本人の多くは、犠牲者にもなった。サブプライム住宅金融大手ニュー・センチュリー・ファイナンシャルの役員だったデービッド・アインホーン氏は、住宅ローン販売担当者は「借り手の返済能力ではなく、借り換え能力に基づいてローンを販売した」と話す。

  無理な貸し付けで借り手がデフォルトしても、住宅金融会社に手数料は入る。しかしこのような業者の多くは今、職もお金もない。カリフォルニア州で信用スコアが850点中の420点の借り手にまで貸し込んでいたダニエル・サデック氏のクイック・ローン・ファンディングは、8月にシティグループが融資を中止し廃業に追い込まれた。

  金融機関は高利回りの証券を組成するため、サブプライムローンを買い上げていた。ここでも、借り手がデフォルトしてもバンカーに手数料は入る。そして銀行の損失は今、膨れ上がっている。世界の大手金融機関は07年7−12月(下期)に合わせて890億ドルのサブプライム関連評価損を計上する見込みだ。「デリバティブは、リスクを分散すれば世界は安全になるという幻想を抱かせたが、実はバランスシートから切り離したと思っていた後でもリスクは残っていた」とキーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズの住宅ローン業界アナリスト、ボーズ・ジョージ氏は指摘した。

                拡大

  損失拡大は止まらない。フロリダ州の学校や自治体が財布代わりに使う州のファンドはサブプライム関連証券を保有していることが分かり、270億ドルの運用資産のほぼ半分が引き揚げられた。金融庁によると、日本の銀行36行は4−9月に2440億円の評価損を計上した。トナカイが人口よりも多い村を含めたノルウェー北部の8つの町と村も、サブプライム証券で合計3億5000万クローネ(約70億円)を失った。

  一方、住宅ローン業界の苦境を予想した投資家は、うまくやった。テキサス州ダラスのヘッジファンド運用者J・カイル・バス氏は最も悪質そうな住宅金融会社のローンを裏付けとした証券の下落を見込む取引で1億1000万ドルの元手を約6億ドルに増やした。ドイツ銀行の資産担保証券トレーディング責任者のグレッグ・リップマン氏は、価値下落を見込む取引でドイツ銀の損失を抑えた。米ゴールドマン・サックス・グループは住宅ローンの焦げ付き増を読み切り、損失を回避した。

合成債務担保証券(シンセティックCDO)などのデリバティブを含む投資商品の説明資料は量が多く、読まずに済ます投資家も多い。プリズマ・キャピタル・パートナーズのマネジングパートナー、ギリシュ・レディ氏は「深く掘り下げて投資商品の担保資産を分析した人は、デフォルト増を見越して利益を上げた」と語る。

             ピンクの自転車

  負け組のなかでも最も高い代償を支払ったのは、ボストンに住んでいた6歳のサバンナ・ネスビットちゃんだ。彼女の家を差し押さえにやって来た保安官事務所の職員らは、サバンナちゃんが誕生日に祖母に買ってもらったピンクの自転車を中に置き忘れたまま、家の鍵を取り替えてしまった。「毎晩泣いて新しいのを買ってと言うけれど、私もお金に不自由していてできない」と祖母のアンヌ・マリー・ウィンターさんはため息をつく。彼女の家も差し押さえられているという。サデック氏のクイック・ローンで変動金利型ローンに借り換えたオールトマン氏は、今のところ瀬戸際の状態だ。

  ウォール街の「G5」会議の主催者だったドイツ銀行は最近、今度はサブプライムではなく信用力の水準が1つ上の「Alt−A」住宅ローンの証券で新しい指数を作ろうと、会議を始めた。Alt−Aローンのデフォルトに賭けて、また大きな利益が狙えるかもしれない。

原題:Savannah Cries About a Bicycle Left Behind in Reset of Subprime(抜粋) {NXTW NSN JTDW2G1A74EA <GO>}

サブプライムの罠、ウォール街の「神様」の審判で世界の隅々に拡散
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=a1ZEInxFORv0&refer=jp_commentary
  12月20日(ブルームバーグ):今年の7月10日、ニューヨークの空に暗雲が垂れ込めるなか、格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は午前10時に電話会議を開始した。なぜ同社が、2年余りで最も思い切った行動を取ろうとしているのかを説明するためだ。

  S&Pのアナリストらは、価格が暴落している米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連証券120億ドル(約1兆3600億円)相当を格下げ方向で見直すと発表した。その一部は、S&Pが投資適格級の格付けを付与してから1年もたっていない証券だった。2005年に自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターを格下げしたとき以来、S&Pがこれほどの注目を集めたことはなかった。

  S&Pのチーフエコノミスト、デービッド・ワイス氏とマネジングディレクターのトマス・ウォーラック氏は20分の説明の後、投資家とアナリストからの質問を受けた。「何カ月も前にできたはずなのに、なぜ今なのか」というのがヘッジファンド、フロントポイント・ファイナンシャル・サービシズで運用に携わるスティーブン・アイズマン氏の問いだった。ウォーラック氏らは正確に判断するために時間が必要だったと説明しようとしたが、アイズマン氏は「もっとまともな答えをしてもらいたい」とさえぎった。

  5年にわたる不動産ブームがピークに近づきつつあった05年、ウォール街は最も信用力の低い借り手向けのサブプライムローンに基づく新手の証券を販売していた。大手格付け会社から安全資産のお墨付きをもらいながら、これらの証券は同格付けの他の証券よりも高いリターンをもたらした。グローバル・インサイトの金融・経済ディレクター、ブライアン・ベスューン氏によると、投資銀行は、05、06年でこれらの証券1兆2000億ドル相当を販売した。

             ほとんど神様

  信用リスクに関するウォール街の3大審判であるムーディーズ・インベスターズ・サービス、S&P、フィッチ・レーティングスの関与がなければできなかったことだった。このような証券の約80%は、米国債と同じ「AAA」の格付けが付与されていた。元ムーディーズのアナリスト、シルベーン・レインズ氏は「格付け会社は一部の投資家からほとんど神様のように思われていた」と話す。しかし今や、その「信頼は失われ、裏切られたという思いに変わってしまった」と同氏は慨嘆した。

  格付けは、ウォール街が高リスクのサブプライムローンに基づいた証券を世界の市場で売りさばくのに役立った。ウォール街のバンカーたちによる発明を原動力に、サブプライム証券の市場は05、06年に急拡大。同商品は世界の隅々まで行きわたり、欧州やアジアの銀行、公的基金のポートフォリオに入り込んだ。

  多くの機関投資家は、投資適格級以外の証券の保有を法律や独自のルールによって禁じられている。調査会社グラハム・フィッシャーのマネジングディレクター、ジョシュア・ロスナー氏によると、発行会社は必要な格付けを得るための方法を、格付け会社から教わる。投資銀行は格付け会社が配布したソフトウエアを使って投資適格の要件を満たしていたという。

               お笑い

  「仕組み金融の世界で、格付け会社が公平だという考えはお笑いだ」とロスナー氏は語る。「発行会社は、誰にでも入手できるモデルを使って仕組み商品を設計し、あとは望み通りの格付けになるよう、格付け会社に微調整してもらう」のだという。

  野村ホールディングスが組成した7億2000万ドル相当の証券は06年の発行時に投資適格の「Baa3」を得た。この証券の現在の格付けはジャンク級(投機的格付け)の上から7番目の「Caa1」。裏付けの住宅ローンの29%がデフォルト(債務不履行)し、価格は額面の32%に落ち込んでいる。この証券の担保の約40%は、ダニエル・サデック氏のクイック・ローン・ファンディングの融資債権だった。

  1999年まで4年間ムーディーズに在職したアン・ラトレッジ氏は、「企業文化に変化があった」と話す。「昔は、格付け対象と馴れ馴れしくすることはなく、信用の質だけを見極めるのだという姿勢があった」という。ロスナー氏は、5年間の住宅上昇相場からの利益という誘惑が、変化を加速させたと指摘。格付け会社は「既存の企業を格付けする業務から、仕組み金融商品を作り出す手伝いという仕事に乗り換えた」と話した。S&Pは06年に組成されたサブプライム証券の約98%に格付けを付与した。ムーディーズは97%、フィッチは51%だった。

無縁ではなかった

  今年9月26日、米証券取引委員会(SEC)のコックス委員長は上院銀行住宅都市委員会で、格付け会社が資産担保証券(ABS)発行会社から「過度の影響を受けていなかったか」を調査していることを明らかにした。同日、ニューヨークの年金基金がムーディーズの格付けが投資家を惑わせ、サブプライム証券による損失につながったとして同社を提訴した。10月にはコネティカット州のブルーメンソール司法長官が格付け会社3社に召喚状を出した。

  元ムーディーズのレインズ氏は、今後数カ月の間に年金基金がサブプライム関連損失を明らかにし、問題は米国のほとんどすべての家計に及ぶだろうと言う。「結局、ウォール街ではなく最も小口の投資家が損失を被ることになる。むやみに格付け会社を信じた運用者を信用したためだ」と同氏は述べた。

  テキサス州の元教員、ホセ・セプルベダ氏は、ニューヨーク、ロンドン、東京の市場を揺るがせている信用危機が自分とは無縁だと思っていた。ところがそうではなかった。同氏の退職資金を運用する年金基金はサブプライムローンを含む資産を担保とした証券60億ドル相当を保有していたのだ。「サブプライムローンを裏付けとした投資商品が安全だなんて、どうしたら思い込むことができたのだろうか」と同氏は首をかしげている。

(明日は第5話「サブプライム危機が世界の信用市場を席巻、半身不随状態に(仮題)」です)

原題:Rating Subprime Investment Grade Made `Joke' of Credit Experts(抜粋) {NXTW NSN JTBFI10D9L36 <GO>}

米サブプライム危機の端緒−ウォール街「G5」が中華食べながら仕込んだカラクリ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003015&sid=a1T0LHb3Wh_U&refer=jp_europe
  12月17日(ブルームバーグ):今から約3年前の2月のある夜、会議室の木製のテーブルの周りにウォール街の大手投資銀行5社の代表が集まっていた。テイクアウトの中華料理を食べながらの彼らの相談が、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン危機の完璧なお膳立てをした。

会議の主催者はドイツ銀行のトレーダー、グレッグ・リップマン氏(当時 36)だった。同氏は住宅ローン担保証券から、企業の信用商品と同様に大きなウォール街の収益源を育てることを夢見ていた。集まったのはほかに、ゴールドマン・サックス・グループのトレーダー、ラジブ・カミラ氏(同34)、ベアー・スターンズのトッド・クシュマン氏(同32)。シティグループとJPモルガン・チェースの代表者も招かれていた。

標準化された新しい商品の設計と取引ルールを決めるためのドイツ銀行のウォール街オフィスでの初回会合には、50人近くのトレーダーや弁護士が集まった。トレーダーらが「グループ・オブ・ファイブ(G5)」と名付けたこの会合が、ウォール街と世界経済の歴史を変えた。

標準化された新しいデリバティブ(金融派生商品)は、投資銀行各社を米国のサブプライム住宅ローンのリスクから守ると同時に、米住宅市場減速を見込む投資家による投機を可能にし、さらに高利回りを求める機関投資家のニーズも満たすためのものだった。

この商品は同時に、損失を増幅させる設計となっていたため、サブプライムローンの小さな部分がデフォルト(債務不履行)しただけで、世界の銀行や年金基金が保有している証券の価値が急落し、企業向け融資をストップさせ、世界の信用市場をまひ状態に陥れることになった。

しばらくの間

サブプライムブームはしばらくの間、投資銀行と金融会社、仲介業者、投資家、不動産業者、格付け会社の懐を暖めた。何十万人もの米国民が、買えるとは思わなかった立派な家を買うことができた。

これらの住宅購入者はローン返済を続けられないことが、後になって明らかになった。サブプライムローンの焦げ付きはこれまでに、ローン債権を裏付けとした証券の保有者に約800億ドル(約9兆400億円)の損失をもたらした。このデリバティブの市場は不透明で、多くの金融機関はまだ損失の総額が把握できていない。

米シティグループとメリルリンチ、スイスのUBSの最高経営責任者(CEO)は更迭された。リセッション(景気後退)回避に向け、米連邦公開市場委員会(FOMC)は3回の利下げを実施し、銀行間市場の資金逼迫(ひっぱく)緩和のため、年内に最大400億ドルを金融システムに注入しようとしている。

いきさつ

以下は、ウォール街がいかにして、南カリフォルニアの貸し込み産業と米住宅インフレを、世界の金融システムに連結させたかのいきさつだ。

カリフォルニア州オレンジ郡の住宅金融業者ダニエル・サデック氏は、サブプライム融資債権に対するウォール街の熱意に気付いた1人だった。同氏は自身の会社、クイック・ローン・ファンディングを「サブプライムローン製造工場」にした。

ダラスではヘッジファンド運用者のカイル・バス氏が、リップマン氏のグループが設計した商品の取引を始め、空売りの対象を探しているうちに、サデック氏が行った融資を裏付けとした証券に行き着いた。

ニューヨークでは格付け会社が、返済能力のない人に貸し込んだサブプライムローンを裏付けとした証券に、せっせとお墨付きを与えていた。格付け会社は過去のデータに頼り、審査の甘い融資の広がりへの対応が遅れた。格付け会社が投資適格の格付けを付与したなかには、サデック氏のローンの担保証券が含まれていた。

リップマン氏のグループがサブプライムを含む住宅ローンを担保とした証券関連の新製品の標準化を目指した2005年冬の夜の会合は、そのような商品の市場急拡大に道を開いた。

歴史的低リターン

05年2月当時、債券投資のリターンは歴史的低水準にあった。格付け「AAA」の住宅ローン担保証券の利回りは平均で、10年物米国債に比べ1ポイント高かった。問題は、信用力の高い借り手の多くが03年の低金利時に既に住宅ローンを借り換えていたことだ。住宅ローン担保証券への需要に対応するため、ウォール街は新しいローンの創出が必要だった。そのための新たな借り手は主に、信用力の低い借り手だった。

それでも顧客に販売する住宅ローン担保証券が不足し、銀行は「合成」という標準化されたデリバティブを作り出すことにした。これによって数少ないローンからより規模の大きい証券を組成し、世界の投資家の需要を満たすことができた。

こうして、ドイツ銀のリップマン氏の呼び掛けで集まったG5は、世界の資本市場の大ヒットとなる新商品を設計した。会合は月1回、午後5時から開かれ3時間以上も続いたという。05年6月までには、G5以外の金融機関も含めた合意ができ、標準化されたデリバティブ商品が作られることになった。次のステップはそのような商品の指数を設計することだった。こうして、ABX−HE指数が作られた。計画の参加者らはこれによって取引が増え、流動性が高まり、市場に深みが出ると考えた。

早期の警告

しかし、05年9月には既に、ドイツ銀内部にもサブプライムローンのデフォルト急増を懸念する声が出始めていた。同社アナリストのチームは同月、サブプライム市場のリスク上昇について警告した。

ABX−HE指数は06年1月19日に取引を開始した。住宅市場の難局を嗅ぎ取っていたソリン・キャピタルのジョン・ケーン氏は、ABX指数を使ってサブプライムローン担保証券の下落に賭けることにした。サブプライム証券下落を見込む契約の価格は既に、上昇し始めていた。トレーダーはデフォルト率の上昇を予想していた。

G5の顧客の間で、新しいデリバティブの人気は上々だった。銀行や機関投資家は高利回りを確定するためこれを購入した。しかし、ドイツ銀行とG5の少なくとももう1つのメンバー、ゴールドマン・サックス・グループは数カ月以内に、このデリバティブを使ってサブプライム証券価格の下落に賭ける取引を始めていた。

リップマン氏は、G5が作り出し、その後銀行が債務担保証券(CDO)として組成したサブプライム住宅ローン関連のデリバティブが、サブプライム危機を生んだという議論に反論する。「問題はサブプライムそのものにあり、デリバティブが問題を生み出したわけではない」として、「デリバティブは透明性を高め人々が問題に早期に気付くのに役立った」と同氏は述べた。

スピードを出すためのシートベルト

クレディ・スイスの資産担保証券調査ディレクター、ロッド・ダビツキー氏はしかし、「合成」という名前のデリバティブは、「高速での運転を可能にするためのシートベルトのようなものだった」として、巨額損失はこのデリバティブが生んだものであることは疑いの余地がないと指摘した。

原題:Subprime Securities Market Began as `Group of 5' Over Chinese(抜粋) {NXTW NSN JT6GZD07SXKY <GO>}

翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:東京 木下 晶代 Akiyo Kinoshita akinoshita2@bloomberg.net Editor:Akiko Kobari 記事に関する記者への問い合わせ先: Mark Pittman in New York at mpittman@bloomberg.net

更新日時 : 2007/12/17 17:20 JST

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