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宮部みゆきの『理由』を読んだ。1999年に本書で直木賞を受賞している。
芥川賞には外れがあるけど、直木賞には外れはない、と私は思っている。
ストーリーテリングという点では、直木賞受賞作品は、とにかく面白い。
本書も例外ではなかった。600ページを超す大作だけど、のめり込んで読んだ。
長時間電車に乗って出張に出かける私にはありがたい一冊だった。
裏表紙の紹介文;
「東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件。
殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だったのか。
そもそも事件はなぜ起こったのか。
ノンフィクションの手法を使って心の闇を抉る宮部みゆきの最高傑作が
ついに文庫化。」
*抉る=えぐる(なかなか読めないですよね)
実に登場人物が多い。1つの事件に対して、一体何人の人たちが登場してくるのか。
宮部みゆきは、その一人ひとりの登場人物に順次焦点を当てて、その人物像を
生き生きと創り出す。事件が無事解決後、その事件を最初から振り返ってみましょう
とルポライターが書いたかのような書き方で、小説は進む。
謎が謎を呼び、読者は飽きることのない事件の展開に引き込まれる。そして、それぞれの
人物描写が細かく、かつ、なんとも言えず、身につまされる。多くの家族が登場する。
人には必ず、親がいて、家族というものが存在する。場合によっては、配偶者、子供もいる。
そして、人には必ず過去もある。そういったものがない人は、名無しのゴン兵のようなものだ。
現代の東京には1000万人を超す人たちが住み、毎日見かける大勢の人たちも、自分に
とってみれば、赤の他人であって、彼らの過去も家族も我々は知らない。そういう知らない者
同志がすれ違い、隣に住んだりしているわけだ。そういう都市の生活がバックグラウンドとして
非常にうまく描かれている。
そして、本書のタイトル『理由』なのだけど、なぜ、「理由」なのか。
この本を読めば、いたるところに「なぜ?」と問いたいことが出てくる。
それらの「なぜ?」の回答となる「理由」を宮部は、順次明らかにしてくれる。
私が悲しかったのは、男性のつまらないプライドが引き起こした愚行が複数ある点だ。
その「つまならいプライド」はまさに私も持っているものであり、それらの「愚行」も、妙に
納得がいってしまう。なんて男はバカなんだ、と思い、その男が自分と同じである
と考える悲しさだ。
もちろん、女の愚かさも随所に描かれている。
宮部のこのドライでクールな文体って一体なんなのだろう?
この人はどんな人なのだろう。
もと新聞社勤務かと思ったら違いました。
宮部みゆき(1960年生まれ)は、東京下町の高校を卒業した後、大学へは行かずに
法律事務所に勤務している。そして、小説スクールのようなものに通い、小説デビューしていく。
そして、その文学賞の受賞歴は華麗だ。
1987年『我らが隣人の犯罪』 オール読物推理小説新人賞受賞
1989年『魔術はささやく』 日本推理サスペンス大賞受賞
1992年『龍は眠る』 日本推理作家協会賞受賞
1992年『本所深川ふしぎ草紙』 吉川英治文学新人賞受賞
1993年『火車』 山本周五郎賞受賞
1997年『蒲生邸事件』 日本SF大賞受賞
1999年『理由』 直木賞受賞。
推理物、SF物が多いですが、時代劇も書いています。
オールマイティなんですね。まだ、独身かもしれない。
ゲームマニアらしい。
他の本も読んでみたいと思います。
『理由』を読んで、あえて、ネガティブなことを書くとしたら、宮部みゆきのハートというか、
魂を感じなかった、という点だ。ノンフィクション、ルポルタージュの手法を取って、あえて
そういうものを排除したのかもしれない。
だけど、この本によって人生が変わることはない。
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デビューの頃は凄く下手な作家でした。。。笑
だけど『火車』あたりで化けた。あれは良い作品です。結末の部分で賛否あって直木賞逃したけれど『理由』よりも好きです。
2012/10/7(日) 午後 0:48 [ すいす ]
すいすさん、こんにちは。宮部みゆきを何冊か読んだ知人が「彼女の小説には救いがない」と言っていました。できることならば、生きる元気が湧いてくる小説がいいです。『火車』、読んでみますね。
2012/10/7(日) 午後 4:57 [ dareyanen22 ]
内緒さん、こんばんは。いつもありがとうございます。何にも迷惑なことはないですよ。読んでいただけるだけでも光栄です。
これからもよろしくお願いします。
2012/10/7(日) 午後 6:10 [ dareyanen22 ]