|
宮部みゆきの『火車』(かしゃ)を読んだ。とても面白かった。
ミステリー作品であり、社会派、経済小説とも読める。
600ページ近くあるけれど、最後の最後まで飽きさせずに読ませてくれる。
私のように電車に乗っている時間の長い人間には、とてもありがたい
エンターテインメントだった。
バブル崩壊期、借金返済ができなくなった人たちの悲しくもスリリングな
ミステリーである。人物描写も素晴らしく、映像が浮かぶ。
映画やTVドラマになるなぁ、と思って読んでいたら、事実、ドラマ化されている。
『火車』を読みながら、東野圭吾を思いだした。ミステリー、面白さなど
非常に類似したところがあるけど、『幻夜』『白夜行』のようなぞっとする
どす黒い悪意のようなものは、『火車』には感じなかった。
宮部みゆきのほうが、まだ、登場人物に理性と誠意が感じられる。
1992年作品だから、もう20年前の作品。
私が生まれたのが1959年。
翌年の1960年から池田内閣の所得倍増10か年計画が始まる。
事実、日本は驚異的な経済成長を遂げた。
1970年には、各地で公害問題も発生し、大阪では万博が開かれた。
「人類の進歩と調和」がテーマだった。
それでも、1970年代は内省的な時代だった。音楽もロックと呼ばれるもの
で、良質なものがたくさん出た。
しかし、1980年代になったら、そういうことはどうでもよくなって、
『なんとなくクリスタル』のようなバカな小説が出てきて、ブランド品を
買い求めるような時代になった。
バブルの始まりだった。
株価と土地・不動産価格が急騰した。
深夜のタクシーもつかまらないことが多かった。
今と違って、深夜まで飲み、タクシーで帰る人が多かった。
私が20代のころ、新入社員のころだ。
そして、1990年頃、バブルは崩壊した。
それから、20年の歳月が流れた。
「失われた20年」と言われている。
この20年間、ずっと大学生たちの就職難も続いている。
宮部みゆきは時代の最新状況も小説背景に取り入れているので、
悪く行ってしまえば、今読めば、「古い小説」になっている。
随所に、「古いなぁ」と思う箇所がある。
それだけ世の中は激変している。
いい意味で言えば、時代小説というか、当時の世相をうまく描いて
いると思う。
今でも当時の残滓はもちろん残っているけど、やはり時代は変わった。
彼女の最近の小説を読んでいないけど、もし、今の世相を書くとしたら
ネット社会、つまり、ブログ、ツイッター、フェイスブックなどの仮想現実
で暮らす人々か。(私だ!笑)
それとて、10年、20年たてば「古い」時代の物語になってしまうだろう。
まあ、どう社会背景が変わろうとも、人々が幸せを求めてもがくのは
同じだろう。
食欲、性欲、睡眠欲といった本能的な欲望の後に来るのは、
プライドを満たす欲望だ。時代によって、そのプライドの満たし方も
変わってくるのだろう。
長期経済低迷期、私たちは、どういう方法でプライドを満たして行くのか。
マイペースに、無理をせず、そして、生き残る。
その辺かな、と思っています。
|
全体表示
[ リスト ]





宮部さんのもの初めて読んだ時、とてもしみじみとした気分にひたったような気がします(どの作品か覚えていない)
(_ _|||))。
女性は子どもが巣立って初めて、「自分はあとまわし」から解放されるので、プライドのとらえ方も男性とは全然違う気がします、男性はプライドのために最後の最後まで戦う(マイペースでも)動物かも。
今は、子を持たない選択も多いので、プライドのためにもがきつづける女性も多いでしょうね。
2012/10/14(日) 午前 9:18
りんさん、こんにちは。宮部さんの小説を読むと「しみじみ」ですか。私の友人いわく、「何冊も読んでいくと、宮部さんの小悦には救いがない、と分かって、嫌になっちゃうんです」と言っていました。エンターテインメントだけど、ハリウッド映画のようなハッピーエンドはやってこない。
2012/10/14(日) 午前 11:46 [ dareyanen22 ]
初めて投稿します。奇遇にも今日「火車」読みました。おっしゃる通り、パソコンじゃなくて、コンピューターって言葉が使用されているあたりで時代の流れを感じました。韓国で映画化されてとても好評みたいですね。
2012/10/18(木) 午前 0:15 [ SouthMilkyWay ]
Southさん、コメントありがとうございます。携帯電話についても、まだ、当時は珍しかったようですね。時代はどんどん変わっています。韓国で、日本の小説やその他文化は、随分輸入されているようです。我々は韓国文化をあまり知りませんが、彼らはよく知っています。
2012/10/18(木) 午後 10:40 [ dareyanen22 ]